- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121025661
作品紹介・あらすじ
海の覇権をめぐって各国は鎬を削ってきた。世界を股にかけた大英帝国、資源を制したアメリカ、国際ルールへの挑戦を試みる中国……。
本書は400年にも及ぶ歴史を地政学などの視点を駆使して描く試みだ。そこからは、日本がなすべき海洋秩序の模索や課題も見えてくる。
感想・レビュー・書評
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[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
この本は地政学というタイトルこそついているものの、一般的な地政学の本とは内容が異なっている。
この本では現在は一般的になっている海の権利がどのように確立してきたのかをはじめから説明している。
はじめはスペイン、ポルトガル、イギリス、オランダが海を制することで覇権国家となった歴史から始める覇権国家がアメリカへと移った歴史を解説している。
次に現在の海に関する国際ルールがどのような内容でどのように成立してきたのかを解説している。
最後に国際ルールに対し、自国のルールで挑戦している中国と日本の置かれた立場についてを解説している。
本書は単に海だけの内容ではなく、海をめぐり国家間がどのように動いてきたのかを解説する内容にんっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新書で読める海洋史。
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歴史からみても、海洋における権益は多くの国家が欲するものである。その具体例について、本書は英、米、中の目線から解説する。黒船は日本近海の鯨を捕まえる目的で来航したのは知らなかった。
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大航海時代のスペイン・ポルトガルから、オランダ・イギリス~イギリス~アメリカと移り変わる覇権争いを分かりやすく説明してくれる一冊。
途中の章で捕鯨が出てきて捕鯨?と思ったが、石炭から石油にエネルギーの主役が交替する間に鯨油の時代があったのだな。
扱っているテーマの幅が広く、公海や領海の定義の移り変わりや国連海洋法条約の位置付けなどが分かりやすく説明されている。 -
・思った以上に扱うテーマが幅広い。イギリス→アメリカ→中国→日本。
・それでいて、歴史の流れに沿って話が展開されていくから文脈が掴みやすくて読みやすい。
・領海や排他的経済水域の広さを国際的に定めるくだり、利害関係の調整っぷりがおもしろかった。意外と最近できたルールなのね。 -
読み易い。
戦時中の日本商船の被害は知らなかった。あと中国の南沙諸島進出が米国のフィリピン撤退が契機だったことも。 -
著者は本書の狙いを「大国がデザインした海洋秩序や海洋政策を時系列で整理し把握すること」としており、海洋覇権国家の変遷がよくわかる秀逸な新書だと思う。特に第2章、第3章の米国が海洋覇権を掌握していく過程が興味深かった。また英国が海洋覇権制覇のために築き上げたものが英連邦の原点であることもわかった。そして日露戦争の背後に英国の戦略があったことを知り、現在ウクライナの背後で米英がロシアの弱体化を狙って画策していることと同じ図式にも思える。そして中国による傍若無人な海洋進出が既成事実化していくことに強い懸念を感じ、日本としてはシーパワー国家として、米国、英国、豪州などと協力して、自由で開かれた太平洋、インド洋の維持に向けての貢献を果たすべきであり、貿易国家としての責務があると考える。
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大航海時代の状況から海洋における地政学をベースに歴史を学ぶことができる。
各要衝における各国の覇権争い、イギリス、アメリカと海洋覇権国家の変遷などが分かる。
また、国際ルール制定までの経緯、背景を学べる。
近年の中国の動向も一通り学ぶことができる。
新書故内容が圧縮されており、膨大な資料分析がなされていると思われもう少し詳細を知りたいと思った。 -
■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001154537 -
良書だと思います。
海の地政学ということで、海に関する歴史、条約、政治について書かれています。
本書を読むと、海を巡る諸問題が、国家が権益を求める姿勢と直結していることがよくわかります。
【第1章】
イギリスた海上の覇権を取っていく話です。スペイン・ポルトガルの支配を脱却し、オランダの勢いを削ぐために、航海法を制定し、東インド会社を設立して、保護主義に傾倒していく姿が描かれています。一方で、自らが覇権を握った後は、自由航行を標榜するという、イギリスらしい二面性も描かれています。
石炭補給のため、世界各地の港湾とその周辺地域を植民地にしていった話しや、電信網を整備して、情報を握っていた話しなどは、とても興味深かったです。
【第2章】
捕鯨とアメリカ、という話です。ペリー来航が捕鯨目的ということは、読む前から知っていましたが、深く理解することができました。
【第3章】
海洋覇権の掌握へ向かうアメリカということで、パナマ運河の開設、ウィルソン大統領の14箇条、ロンドン軍縮会議、そして太平洋戦争での犠牲と話が進んでいきます。ここで語られているのは、第一次世界大戦後、疲弊したヨーロッパの海軍力が相対的に落ちていく中で、アメリカが気にしていたのが日本の海軍力であったということです。
【第4章】
第二次世界大戦後、国連海洋法条約締結までの流れと、海洋法を構成する基本概念(領海、接続水域、EE Z、大陸棚)などを解説しています。また、海底油田を中心とした資源開発という観点が、交易や交戦という戦前までの長い歴史の中での主題に加えて登場してきていることを示しています。
【第5章】
中国を取り上げています。中国の領海法の問題点(周辺海域の島々の領有宣言、無害通航権を認めない姿勢、領海と接続水域の一体化)を指摘しつつ、ここ30年の中国の動きを概説した後、今後発生しうる問題点(海洋国土構想(領海・接続水域・EEZの一体化)、海外港湾管理というか租借地化、東シナ海における海洋進出)を指摘しています。
【第6章】
最後は日本の海上保安庁について記しています。一般的な概念(海上における警察権の行使組織)は分かっていましたが、具体的なことはあまり知らなかったので、色々と知れました。