戦争はいかに終結したか-二度の大戦からベトナム、イラクまで (中公新書 2652)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026521

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦の悲劇を繰り返さない――戦争の抑止を追求してきた戦後日本。しかし先の戦争での日本の過ちは終戦政策の失敗にもあった。戦争はいかに収拾できるのだろうか。第一次世界大戦、第二次世界大戦から戦後の朝鮮戦争とベトナム戦争、さらに近年の湾岸戦争やイラク戦争まで20世紀以降の主要な戦争の終結過程を分析。「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」を切り口に、あるべき出口戦略を考える。

感想・レビュー・書評

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  • SUNDAY LIBRARY:開沼博・評『戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで』千々和泰明・著 | 毎日新聞(有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20210831/org/00m/040/005000d

    安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010 「基盤的防衛力構想」の時代 千倉書房 6050円 / 戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで 千々和泰明著 中公新書 1012円 : 読売新聞オンライン
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20210904-OYT8T50115/

    『戦争はいかに終結したか』/千々和泰明インタビュー|web中公新書
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/118056.html

    戦争はいかに終結したか -千々和泰明 著|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2021/07/102652.html

    • 川野隆昭さん
      戦争と、恋愛は、始めるのはたやすいが、両方とも、終わらせるのが難しい。
      ものらしいです。
      昨今の状況も、あり、興味深いです。
      太平洋戦争終結...
      戦争と、恋愛は、始めるのはたやすいが、両方とも、終わらせるのが難しい。
      ものらしいです。
      昨今の状況も、あり、興味深いです。
      太平洋戦争終結を扱った、半藤一利の、『日本の一番長い日』を想起しました。
      2022/05/30
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      川野隆昭さん
      恋愛のコトは判りませんが、日本にとって太平洋戦争は終わったとは言えないですよね。
      沖縄の基地も北方領土も先が見えない。韓国...
      川野隆昭さん
      恋愛のコトは判りませんが、日本にとって太平洋戦争は終わったとは言えないですよね。
      沖縄の基地も北方領土も先が見えない。韓国とは慰安婦問題、中国とは南京大虐殺。。。戦争の愚かさを忘れないために、未来永劫引き摺る必要があるのかも、、、
      2022/05/31
  • 或る本を読んでいて、その中に別な本に関する言及が在ると、少し強い興味が湧く場合も在る。そしてその興味が湧いた本を紐解くと、それがまた非常に興味深いという場合が在る。こういうのを「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶのだと思う。本書はそういう「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をさせてくれた一冊だ。
    本書は「在りそうで、存外に無い?」という感じの、重要と思われる主題を論じている。「読書の発見、歓びが拡がる」ということと無関係に、単独でも非常に価値が高いと思う。
    本書を知ったのは『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』という本を読んでいた時だった。『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』の著者による対談が収録された本に、対談の相手の一人として本書『戦争はいかに終結したか―二度の大戦からベトナム、イラクまで』の著者が登場していた。
    2022年2月以降のウクライナでの戦争は1年半以上も続き、「終わらない…」という様相を呈してしまっている。そういう中で「終結?」、「停める?」というようなことが上述の本の対談で論じられていた。
    戦争の目的を追求して戦闘が繰り広げられる等の展開が在る。そういうことをすると「現在の犠牲」というようなモノが生じることから免れられない。「現在の犠牲」に「何処迄耐える?」ということになってしまう。どんなに犠牲を払っても「将来の危険」を排すべく戦争の目的を追求するという考え方と、「現在の犠牲」を回避すべく妥協的な和平の工作を試みるという考え方が事案の両極のように存在して、両者の間の色々な形での「終結」が図られたのが、これまでの戦争の歴史で、これからの戦争もそういうことになるのであろう。
    ウクライナ、ロシアの戦争に関して言えば、上述書に在るのだが、両陣営は各々に「将来の危険」を排しようと「現在の犠牲」を払い続けていて、「一体、何処迄?」というようになって行くのだと思われるが、互いに排しようとしている「将来の危険」は「非常に高いハードル」になってしまっていて、収束に向けた協議が巧く進められない状態に陥って時日を経てしまっている訳だ。
    本書に出くわした経過の事柄で少し文字数が嵩んでしまった。が、こういう他の本で呼んだ事柄を踏まえて本書を興味深く読んだのだ。
    題名に「二度の大戦からベトナム、イラクまで」と在る。文字どおりにこれらの戦争に題材を求め、戦闘を停めて行く、終結を図るという過程に注目し、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考えた」というような経過に光を当てようとしているのが本書の内容だ。
    本書では、第1次大戦、第2次大戦の欧州関係、第2次大戦の日本関係、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争からアフガニスタンやイラクに至る一連の戦争というような形で「各戦争の終結」が論じられている。
    総じて思わざるを得ないのは「“始める”こと以上に“終える”ことが難しい」のが戦争というモノであるということだ。そして“終える”ことへのイメージが貧しいままに“始める”に至った戦争は、殊に敗れた側にとっては「ロクなモノではない…」というように終始してしまう。
    甚大な犠牲が払われた種々の戦争に関して「その終結」という角度で観て、振り返るというのも有益だと思うのだが、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考える」というようなことは、応用範囲が広いというようにも思う。様々な好ましくない状況から抜け出して行こうとする場合の考え方として有用かもしれない。
    「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をで、なかなかに有益な一冊に出会えて善かった。

  •  "戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは極めて難しい" 古代ローマの歴史家サルスティウスの『ユグルタ戦争』である登場人物の言として記されているものだが、同じような言葉は最近良く用いられている。


     本書は、戦争の終結に焦点を当てた研究で、著者の依拠する分析枠組みに基づき、具体の戦争について論じたものである。
     その枠組みとは、『紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」というもので、優勢な側が「現在の犠牲の低減」と「将来の危険の除去」のいずれを重視するかによって、戦争終結の形態が変わってくるというものである。
     そして、20世紀の戦争を題材として、終結に至る当事国の動き、相互反応等の史実を具体的に描いた上で、まとめ的な考察が示される。

     選ばれた戦争は、次のとおり。
    1 第一次世界大戦 
    2 第二次世界大戦の対イタリア、ドイツ
    3 第二次世界大戦の対日本
    4 朝鮮戦争
    5 ベトナム戦争
    6 湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争

     これまでも、個々の史実としては知っていたことが多いのだが、各当事国の意思形成過程が具体的に記述され、また味方国同士の間での利害対立、相手国の意思表示を受けての誤解や楽観視など、生々しく記述がされている。

     本書の分析では、戦争を終結させ得る優勢な側から捉えている訳だが、相手あってのことなので当然敗者の側にも焦点が当てられる。日本に係る戦争終結の章は、後付けかもしれないが、読んでいてやるせない気持ちで一杯になった。情勢に対する誤解、誤読、"損切り"する勇気のなさ。戦争は極限的な状況かもしれないが、国家として、果たして大丈夫と言えるだろうか。

     

     

  • 戦争を始めるのは人類。終わらせるのも人類。どうしてもバイアスが人の判断を曇らせてしまうが、「現在の犠牲」と「将来の危険」の軸で評価するアプローチはとてもよかった。ドイツを巡る2度の世界大戦の終結の部分はサイエンスでもあり、アートでもあると感じた。

    テクノロジーの進化でドローンやAI兵器は普及し、戦術は変わる。この本でもあるようなテロリスト対アメリカのような戦いも起きており、国家の意味も相対化されてきている。しかし、戦争をめぐる不易流行はある。

    様々な思考実験をするためにもとてもよい内容だった。ビジネスの撤退戦の考え方にも通用するだろう。

  • 「戦争なんてしなければいいのに」と感情的に考えてしまうが、
    現場では何を考えているのか知ることができる良書。

    以下読書メモ。

    戦争がいかに終結するのかは
    「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という視点から考えられる。
    それは、優勢勢力側が「将来の危険」と「現在の犠牲」のどちらをより重視するかで決まる。

    「紛争原因の根本的解決」の極に近いのが、
    両世界大戦、アフガニスタン戦争、イラク戦争。
    「将来の危険」の方が大きいと考えられたから。

    「妥協的和平」の極に近いのが
    朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争。
    「現在の犠牲」が多大となることを恐れたから。

    劣勢勢力側は、自分達が守ろうとしている価値が犠牲に見合うものなのかの判断が必要。パワーバランスを変える可能性が乏しいなら、損切りを選択する勇気も必要。


    日本の安保のことにも言及がなされている。
    日米同盟側が優勢で「将来の危険」が極めて大きいなら相手政府の打倒が追求されるが、自衛隊の専守防衛の原則から外れないか。
    「将来の危険」にとらわれ「現在の犠牲」が大きくなる子はないか。
    日米で認識がズレたらどうなるのか。

    日米側が劣勢なら、パワーバランスを変化させるのか、損切りによって収拾させるかの決断が必要になる。

  • 「将来の危険」と「現在の犠牲」を検討しつつ、戦争終結形態へと落着する。それが「根本的解決」になるのか「妥協的解決」になるのかは検討過程がどちらに寄ったものであったかで決まる。
    2度の世界大戦、朝鮮・ベトナム・湾岸・アフガニスタン戦争から戦争の終結過程を分析する。鋭い分析に「なるほど」と思いつつ、国家間戦争はもう生じないであろう今後の紛争解決は、さらに難しくなっているよね。

  • 戦争をどのように終えるのかという問いは、戦争をいかにして避けるべきかという問いと比べて、あまり語られることがなかったと思われる。

    しかし、戦争の終わらせ方はその後の平和の構築の方向性に大きく影響し、再び戦争が起こることを避けるためにも非常に重要な要素であると筆者は考えている。また、これは単に軍事的な戦略上の決定ではなく、極めて政治的な要素を伴う判断である。

    本書では、戦争の終わらせ方を「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」として捉え、20世紀以降の主な戦争がそれらの間のどこに着地したかについて分析している。

    また、戦争終結の形態に違いが生まれるのは、戦争終結の際に重視される価値観が「将来の危険の除去」か「現在の犠牲の回避」かという点に関わっているという。

    分析の対象となっているのは、第一次世界大戦、第二次世界大戦(ヨーロッパ、アジア太平洋戦争)、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争・アフガニスタン戦争・イラク戦争である。

    これらの戦争のうち、第二次世界大戦(ヨーロッパ)、アフガニスタン戦争、イラク戦争は紛争原因の根本的解決の極に寄った解決がなされ、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争は妥協的和平の極に近い解決がなされたという。第一次世界大戦や第二次世界大戦(アジア太平洋戦争)は、これらの中間的な解決と分析されている。

    このような視点で戦争を分析すると、紛争当事国の国内的政治基盤や現在の犠牲に対する許容度、紛争相手国の状況や意図に対する正確な情報や理解が、どのように戦争終局の形態に影響を与えるのかということが分かりやすくなると思う。

    ベトナム戦争においては、ベトナム側はアメリカよりも現在の犠牲に対する許容度が高かった。そのため、軍事的には圧倒的な力を持つアメリカに対して妥協的解決を迫る結果となった。同時期のアメリカの国内情勢の動揺も、そのような結果につながった一つの要因と言えるだろう。

    アジア太平洋における第二次世界大戦の終局段階では、日本はソ連の仲介による講和を最後の方まで期待していた。そして、連合国側が出したポツダム宣言も、ソ連が署名をせず、また天皇制の存続に関する判断を曖昧にした宣言であった。このことが日本側に非現実的な期待を抱かせ、日本にとっての「将来の危険」を過小評価させるといった結果にもつながった。

    このような分析の枠組みを持っておくことは、紛争当事者の相互の動きを考えるうえで有益なのではないかと感じた。

    一方で、戦争後の平和の帰結については、なかなか予測をすることは難しいと感じた。

    紛争原因の根本的解決(タリバン政権の打倒)によって終結したはずのアフガニスタン戦争は、その後も20年にわたり続き、最終的にはタリバン政権の復活というかたちで現在を迎えている。

    一方、非常に妥協的な形で終結(休戦)された朝鮮戦争については、国家の分断という状態はあるものの、その後70年にわたり大規模な軍事衝突がないままである。

    紛争原因を除去することが次の戦争を防ぐための十分条件ではないということや、紛争当事者がどのようにその後の国際関係を構築していくかということも考えに入れておく必要があるのだろう。

    また、国家間の戦争という枠組みであれば比較的明確に分析ができるものの、現在各地で問題となっているテロに対する戦いなどの非対称な戦闘については、紛争原因の除去が具体的に何を指すのか、終戦とはどのような状態をいうのかが一義的には明確ではない。

    紛争の原因や相手当事者をいかに明確化し、紛争、テロ行為を終わらせていくかという非常に難しい問いに、現代の戦争は直面していると言えるのではないかと思う。

    今後の検討課題も多くあるとは思うが、戦争終結の形態に関する研究という非常に重要な分野を知ることができる、有意義な本であると思う。

  • 二十世紀の戦争の戦争終結を「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」を両極に置き分析する。

    根本的解決をしたからと言って戦後長く平和が保たれる訳ではない所が難しい。第一次世界大戦ではドイツへの過度とも言える懲罰がやがてナチスの台頭に繋がる。

    一方、妥協的和平であったとしてもベトナム戦争の様に戦場となった国家が安定と成長を成し遂げる場合もある。アメリカが一方的に蹂躙し退却した余りに不条理な戦争ではあるが。

    後は李承晩の頑迷さ。

    出版後の事ではあるが、今のアフガニスタン情勢の変化について著書の考えを聞いて見たい。根本的解決をしたはずだがアメリカが撤退すると瞬く間にタリバンが政権を奪回した。国際政治の主導グループにイスラムがいない事によるゆがみなのか。

    パルネット 本と珈琲 ベルマージュ堺店にて購入。

  • ・戦争終結の基本的理念は「出口戦略」。いかにして終わらせるか。  
    ・戦争当事者の抱える「将来の危険」と「現在の犠牲」のバランスをどうとるかとそのジレンマ。 
    これらのことにより、優勢勢力も劣勢勢力も、得られるものや失われるものが異なってくる。

  • 優勢勢力側の「将来の危険」と「現在の犠牲」をめぐるシーソーゲームを通じ、戦争終結形態は「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のジレンマのなかで決まるという切り口で、20世紀以降の第一次世界大戦からイラク戦争までの戦争終結過程を分析。
    いかに戦争を防ぐかではなく、始まってしまった戦争をいかに収拾するかという本書の観点は新鮮であり、「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という観点にも説得力があった。取り上げられている各戦争がどうやって終結したかということについても、よくわかっていないことが多かったので、勉強になった。

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著者プロフィール

千々和泰明

1978年生まれ。福岡県出身。2001年、広島大学法学部卒業。07年、大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程修了。博士(国際公共政策)。ジョージ・ワシントン大学アジア研究センター留学、京都大学大学院法学研究科COE研究員、日本学術振興会特別研究員(PD)、防衛省防衛研究所教官、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付主査などを経て、13年より防衛省防衛研究所主任研究官。この間、コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。国際安全保障学会理事。著書に『大使たちの戦後日米関係』(ミネルヴァ書房、2012年)、『変わりゆく内閣安全保障機構』(原書房、2015年)、『安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010』(千倉書房、2021年、第7回日本防衛学会猪木正道賞正賞)、『戦争はいかに終結したか』(中公新書、2021年)。

「2022年 『戦後日本の安全保障』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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