変異ウイルスとの闘い――コロナ治療薬とワクチン (中公新書 2698)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026989

作品紹介・あらすじ

長期化するコロナ危機。変異するウイルス、繰り返される蔓延防止措置、無くならない医療逼迫…。COVID-19はなぜこんなにも手強いのか。一方、人類の側も黙ってはいない。比類無きスピードで開発されたmRNAワクチン、重症から軽症までカバーする治療薬。「終幕」へ向けて、シナリオは着々と進められている。本書は膨大な資料から、「ウイルスとの闘い」の最前線を追う。ベストセラー『新型コロナの科学』の著者による、待望の続編。

感想・レビュー・書評

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  • うーん。頭のいい人が頭のいい人同士でやってる分にはいいのだが、かなりたくさん私みたいなわけのわからん感情的に動く人間がうろうろしているのだが。と思いつつ、為政者には賢くあれと求めるのもどうなんだろう。と読んだ。ワクチン競争の話とか基礎研究軽視の話とかつくづく納得ではあるのだが。

  • ワクチンの仕組みや開発、その有用性に対する科学的な説明を主軸に、コロナ禍に何が起きて何がなされていたのか、2022年始めのオミクロン株ぐらいまでの変遷が分かりやすく説明されています。また、コロナ禍で顕わになった日本の政治対応や医療体制の脆弱性についても落ち着いた議論、提言がなされていて納得はいきます。コロナ禍の渦中ではフェイク情報が溢れて社会に分断も生じたかもしれないが、社会的には落ち着いてきた現在、このコロナ禍の3年間を冷静に客観的に俯瞰して眺めるためには有用な一冊でした。
    ワクチンを自動車のシートベルトに喩えているのは分かりやすく、著者はシートベルトを義務化するならワクチンも義務化すべきと主張しています。事故のときシートベルトをしていることで車に閉じ込められることで命を落とすこともあるだろうけど、シートベルトをしていることで助かる確率が圧倒的に多いから義務化されていて、人々もそれを受け入れている。ワクチンにも副作用の損失があるかもしれないが、mRNAワクチンは高い効果を有していることが証明されているわけで同様であろう、ということです。ワクチンの場合はシートベルトと違って、社会全体のパンデミックを抑える効果もあるといことでしょうか。

  • 筆者による新型コロナウイルス感染症に関する前著は2020年12月に出版されたが、本書ではその後の動向、特にワクチンの開発による効果を詳しく解説してくれている。

    ワクチンの効果を理解するためには、免疫の仕組みとワクチン開発の歴史を知ることが有益であるが、筆者はガン研究者として人間の免疫の仕組みに向き合ってきただけに、分かりやすい解説であった。

    ワクチン接種に伴う副反応のさまざまな類型とそのリスクについても、執筆時点で明らかになっていることを簡潔に整理してくれており、参考になった。

    治療薬については、ワクチンと比較すると画期的な成果とまではいかないが、現時点で感染初期、中等症、重症のそれぞれの状況に応じた治療方法について、ある程度の知見が蓄積されており、効果が確認された薬もいくつか出てきている。

    このような科学的知見を実際の治療に活かすためには、感染初期における検査や薬の処方につながる医療へのアクセスが、現状において対策に力を入れなければならない領域なのではないかと感じた。

    最後に、コロナ禍が終息に向かうのかどうかについて、筆者の見解が書かれている。新たな変異株の登場は確率的に否定できず、また感染力が強いものも生まれる可能性がある。ただ、比較的確率の高いシナリオとしては、致死率の低い(が感染力は強い)変異株による波はあるものの、徐々に終息に向かうというシナリオであると述べられている。

    一方、インフルエンザとの致死率の違い(オミクロン株の方がインフルエンザより6~7倍致死率が高い)ということも冷静に認識しつつ、このウイルスの存在を前提にした社会のしくみ、医療の仕組みづくりを進めていく必要があると感じた。

    巻末に膨大な参考文献・論文が挙げられており、おそらくその何倍もの論文に目を通したうえで執筆されているのだと思う。変異株の登場、ワクチン、治療薬に関する研究の進展もあり、科学的な知見の全体像を見通すのが難しい状況にある中で、このような本でコンパクトに知識を整理して提供してもらえることは、非常にありがたいと思う。

  • 比類なきスピードで開発されたmRNAワクチン、変異株のゲノム解析、全症状に対応する治療薬。コロナ禍「終幕」へのシナリオは着々と描かれている。最新の研究成果を一望し、コロナ危機からの出口戦略を探る。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40288747

  • 【請求記号:493 ク】

  • 偏見が強い

  • 日本ではなぜワクチン接種が遅れたのか。なぜワクチン開発が進まないのか。なぜ医療逼迫が起こったのか。こうしたことに答える本である。まず、政府や省庁の非常に慎重な対応がある。それからワクチン開発に題する予算が少ないこと。日本はアメリカの100分の1の予算しかなかったとのこと。医療逼迫については、病床は多いものの医師が少ないという問題、常に80%以上の病床が稼働しなければ利益を挙げられないことがある。つまり、緊急の事態に対応できる余裕がないのだ。筆者は、これらのことからコロナが日本の医療体制の脆弱な面を明るみに出したと主張する。

  • コロナ危機のゆくえについて、すぐ終わることはないとしても、低い波か高い波か分からないが、繰り返しながら収斂していくことになるのではないか、「終わりの始まり」というシナリオが、いちばん可能性が高いと説く。
    そして、これから大事なこと10か条として、①ワクチンの義務化、②行動変容、③高齢者対策、④ハイリスク対策、⑤検査体制、⑥病院対策、⑦ワクチンと薬の開発、⑧コロナ医療のための資源を十分な量備蓄する、⑨ゲノム解析、⑩新たな変異ウィルスを出さない、等を通じて、社会が、そしてひとりひとりが感染を防ぐための対策をとることが大切と説く。
    以上が、本書の結論部分であるが、ワクチン開発、ワクチンをめぐる困った問題、日本のワクチンはなぜ遅れたか、など興味深い記述がある。
    日本の医療界、厚労省などに対する批判は鋭いものがあり、注目されなきなったが、未だ現在進行形の問題も多数取り上げられている。

  • COVID-19のウイルスだけの話かと思っていたら、様々な政策への批判もあり、今後の方針の話もあった。

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著者プロフィール

黒木登志夫

1936年、東京生まれ。東北大学医学部卒業。専門はがん細胞、発がんのメカニズム。1961から2001年にかけて、3カ国5つの研究所でがんの基礎研究をおこなう(東北大学加齢医学研究所、東京大学医科学研究所、ウイスコンシン大学、WHO国際がん研究機関、昭和大学)。英語で執筆した専門論文は300編以上。その後、日本癌学会会長(2000年)、岐阜大学学長(2001-08年)、日本学術振興会学術システム研究センター副所長(2008-12年)を経て、日本学術振興会学術システム研究センター顧問。2011年、生命科学全般に対する多大な貢献によって瑞宝重光章を受章。著書に、『がん遺伝子の発見』(1996年)、『健康・老化・寿命』(2007年)、『知的文章とプレゼンテーション』(2011年)、『iPS細胞』(2015年)、『研究不正』(2016年、いずれも中公新書)ほか多数。

「2022年 『変異ウイルスとの闘い――コロナ治療薬とワクチン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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