カーストとは何か-インド「不可触民」の実像 (中公新書 2787)
- 中央公論新社 (2024年1月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121027870
作品紹介・あらすじ
インドに根付く社会的な身分制=カースト。数千年の歴史のなかで形成され、結婚・食事・職業など生まれから規制し、今なお影響を与え続ける。カースト問題には、「不浄」とされ蔑視が続く最底辺の不可触民=ダリトへの差別がある。政府は2億人に及ぶダリトを支援する施策を打つが、その慣習は消えず、移民した世界各国でも問題化している。本書はインドに重くのしかかるカーストについて、歴史から現状まで、具体的な事例を通し描く。
感想・レビュー・書評
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【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/713643 -
362-S
新着図書コーナー -
差別のない世界はない。宗教・人種・民族あらゆることが差別のもとになる。「隣の芝生は青く見える」的発想は逆説的に差別を生む。
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数千年の歴史の中で形成された文化・慣習による階級的差別。今なお2億人に及ぶ最底辺の「不可触民」を通し歴史から現状まで描く。
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【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/571927 -
清掃カーストを中心としたダリト(指定カースト)を主に扱う。カーストの考え方や現代インドの政策、それに「可哀想な人々」程度の理解だったダリトについて、多様性に気づくと共に多少解像度が上がった気がする。留保制度=アファーマティブアクションとそれへの反発は、米国の人種問題や中国の民族問題との一定の共通性も感じる。
第3章にあるダリトの下位区分はさすがに複雑過ぎる。ヒンドゥー志向が強まる現代インド政府がアンベードカルを賞賛というのも不思議だ。カースト問題やダリト差別に変化は起きてはいるが、その変化が集団暴力や若者の自殺を起こしているとの著者の指摘は重い。
総じて、安易に善悪で割り切れないカーストの意味や「何を誰と食べるか」の重要視は、他文化それも門外漢の人間が完全に理解するのは難しいのだろう。それでも、本書に登場したダリトの人々により良い未来があればいいな、と思う。