カーストとは何か-インド「不可触民」の実像 (中公新書 2787)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027870

作品紹介・あらすじ

インドに根付く社会的な身分制=カースト。数千年の歴史のなかで形成され、結婚・食事・職業など生まれから規制し、今なお影響を与え続ける。カースト問題には、「不浄」とされ蔑視が続く最底辺の不可触民=ダリトへの差別がある。政府は2億人に及ぶダリトを支援する施策を打つが、その慣習は消えず、移民した世界各国でも問題化している。本書はインドに重くのしかかるカーストについて、歴史から現状まで、具体的な事例を通し描く。

感想・レビュー・書評

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  • インドの「不可触民」 今も続く差別の形 - BBCニュース(2018年5月14日)
    https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44029728

    素手で排せつ物を処理するインド「最下層カースト」の悲哀 | 悪臭立ち込める危険な労働環境のせいで死亡者も多数… | クーリエ・ジャポン(2020.1.24会員限定)
    https://courrier.jp/news/archives/187951/

    インドのカースト最下層、ヒンドゥー教捨てて仏教へ 日本から来た僧が後押し:朝日新聞GLOBE+(2020.09.11)
    https://globe.asahi.com/article/13714295

    教員情報  - 鈴木 真弥  | 大東文化大学
    https://dtbr1.acoffice.biz/dbuhp/KgApp?kyoinId=ymdigkosggy

    カーストとは何か -鈴木真弥 著|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2024/01/102787.html
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    (p-leidさん)carbuncleの本棚から

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/713643

  • インドの日記をまとめていたところに見かけてしまったのでついついジャケ買いしてしまった。
    中公新書、たまにタイトルが強気すぎて、中身がちょい詐欺な感じになってるものもある印象だが、これはしっかりとカーストとは何かについて書いていた。
    むしろ想定以上に書いてあり、読む前の「カーストって何だろう?」が、読んだあとに「カーストとは一体…」という強い疑問に進化してしまったほど。

    カースト、仕組みや成り立ちとしては士農工商穢多非人に近いイメージだが、そのカーストに生まれた者は能力関係なくずっとその職業にしかつけないというのが違う。とはいえ、日本のもそうそう入れ替わったりしなかったような。日本の差別は穢多非人があってしまうが、さすがに現代にはおおっぴらには残っていない。それが、インドではとても普通に残っている。
    実際、自分がインドに行ったときも、清掃カーストというのか掃除のおじさんおばさんが異常に多かった印象。彼ら彼女らが転職できないのかどうかは知らないし、現地の人においそれと聞けないのでわからなかったが。
    カーストのランクそのものより、仕事の範囲がものすごく厳密に決まっているため、自分の担当範囲外は意地でも仕事をしない、という印象が強かった。

    ただ、特に最近は差別やマイノリティなどの問題に対して世間が熱くなっていることや、ネットの力で個人の声を広めやすくなったこともあり、かなり変化に加速がついている感じがする。それでも大きな変化が出るまではあと数世代かかりそうというのが国内の人々の感覚らしい。

    死に関わる仕事である葬儀や死体処理、皮剥ぎ、そして掃除などの不衛生な仕事はカーストが低く、給料も低い。そして上位カーストの人たちはその下位カーストと一緒に食事をしなかったり、触れるのも避けるみたいなルールがある。これらはそもそもトイレや下水道などの不衛生なものが、技術進歩の恩恵を受けないままでマジで不衛生だったことが原因のよう。
    人間が汚れを避けるのはある意味本能ではあるし、下手にそこだけを差別しちゃだめだよ、と厳しいルールをつけたりすると、それこそ伝染病の蔓延につながったりしてしまうのでは、だからある意味差別、というのは言葉が強いが、接触を避けるのは仕方ないんじゃないかな、と思ってしまう。
    まあ、そこは政府もわかっているようで、水洗トイレの整備などを進めている様子。まあ、まだだいぶ時間がかかるだろうけど…

    ただ、別にカースト=不衛生な仕事とかではなく、政府が公式に決めた「指定カースト」という仕組みでは他にも仕事がある。更にカーストによっては優遇措置があるとのこと。でも、そのためには自分のカーストを公表しなきゃならないという問題もあるようで、なかなか大変そうだ… 自分のカーストを秘密にしたまま大学に行ったりしている人たちもいるみたいだし。
    でも… 政府が公式にカーストの存在をしっかり決めてしまったというのがなかなかややこしいように思えた。こういうのは下手に決まりを作ってしまうと、ルール外の問題が出たりして大変な印象がある…

    本を読む前に知っていたインドの偉人はガンディーだけだったが、同じくらい、いや、今ではそれ以上に信仰に近い尊敬をされているのがアンベードカルという政治家らしい。
    ガンディーは不可触民解放運動をしているから、とにかく同じ権利にしろ、という意見なのかと思ったら、差別意識を取り除くのは必要だが、政治的権利を与える必要はない、という主張だった。そこを、アンベードカルはちゃんとみんな政治的権利を持たなければならない、という意見。単純に見れば確かにアンベードカルの考えが妥当に思える。

    …が、p83にもあった、「マイノリティが自治および独自の政治的権利を強く要求した場合、分離主義に至る。」というのを知ると、ガンディーが慎重に行きたかったのも理解できてしまう。この仕組みでイスラム教徒によるパキスタン建国が起きたようなので、そういうのを避けたかったということか?

    IT業務はカーストが関係ないからどんな生まれでも仕事につけるという、自分がインドで仕入れた知識はこの本では語られていなかった。実際どうなんだろう。この本を読むと、やっぱり出自はずっとつきまとってくるように思えるが…

    今のところはカースト問題を解決するよりも、海外に行って活躍するのが楽(ただし海外に行っても結局インドコミュニティができてしまい、その中でカースト問題が再燃している模様)に見えるなぁ。と言っても、海外に行ける人なんてものすごく限られてるか… でも昔に比べればマシなのか?うーむ、やっぱり難しい。下手に口を出せないな… でも、下手に口を出せないな、とわかっただけでも大事!

  • 362-S
    新着図書コーナー

  • 差別のない世界はない。宗教・人種・民族あらゆることが差別のもとになる。「隣の芝生は青く見える」的発想は逆説的に差別を生む。

  • 数千年の歴史の中で形成された文化・慣習による階級的差別。今なお2億人に及ぶ最底辺の「不可触民」を通し歴史から現状まで描く。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/571927

  •  清掃カーストを中心としたダリト(指定カースト)を主に扱う。カーストの考え方や現代インドの政策、それに「可哀想な人々」程度の理解だったダリトについて、多様性に気づくと共に多少解像度が上がった気がする。留保制度=アファーマティブアクションとそれへの反発は、米国の人種問題や中国の民族問題との一定の共通性も感じる。
     第3章にあるダリトの下位区分はさすがに複雑過ぎる。ヒンドゥー志向が強まる現代インド政府がアンベードカルを賞賛というのも不思議だ。カースト問題やダリト差別に変化は起きてはいるが、その変化が集団暴力や若者の自殺を起こしているとの著者の指摘は重い。
     総じて、安易に善悪で割り切れないカーストの意味や「何を誰と食べるか」の重要視は、他文化それも門外漢の人間が完全に理解するのは難しいのだろう。それでも、本書に登場したダリトの人々により良い未来があればいいな、と思う。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部南西アジア課程ヒンディー語専攻卒業、Jawaharlal Nehru University, School of Social Sciences, Centre for the Studies of Social Systems, M.A. (Sociology)修了、 慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、現在、人間文化研究機構地域研究推進センター研究員(東京外国語大学特定研究員)。
専門は社会学、南アジア地域研究。
主な著作に「現代ダリト運動の射程」(共著、粟屋利江・井坂理穂・井上貴子編『現代インド5 周縁からの声』東京大学出版会、2015年)、「突破口としての司法」(石坂晋哉編『インドの社会運動と民主主義』昭和堂、2015年)、「被差別民の『解放』をめぐるインド社会とNGOの分析」(『解放社会学研究』21、2007年)など。

「2015年 『現代インドのカーストと不可触民』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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