在日米軍基地-米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史 (中公新書 2789)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027894

作品紹介・あらすじ

世界で最も多くの米兵が駐留し、米軍施設を抱える日本。米軍のみならず、終戦後一貫して外国軍の「国連軍」も駐留する。なぜ、いつから基地大国になったのか。米軍の裏の顔である国連軍とは。本書は日米の史料をふまえ、占領期から朝鮮戦争、安保改定、沖縄返還、冷戦後、現代の普天間移設問題まで、基地と日米関係の軌跡を追う。「日本は基地を提供し、米国は防衛する」という通説を覆し、特異な実態を解明。戦後史を描き直す。

感想・レビュー・書評

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  •  書名から想像される基地問題ではなく、朝鮮戦争以来の国連軍としての機能と関連する制度の歴史を辿る。その大元として吉田・アチソン交換公文と国連軍地位協定に特に着目。「瀬取り」監視活動のため現在も有益な協定だ。
     座間に加えて普天間等3基地も国連軍基地指定。国連軍の形をとるため、米軍以外の要員派遣を保つ苦労。鳩山政権下、少なくとも普天間基地の国外移設が頓挫した原因は同基地が国連軍基地であったためだとする。平和安全法制やACSA、円滑化協定も国連軍又は各国軍という「二つの顔」の視点から見るのが新鮮。
     国連軍関連以外で印象的な点は、朝鮮戦争中に同戦争に支障をきたさないことを大前提に結ばれた旧日米安保条約、日米関係の構造が、その後長期にわたり日本の安保政策を規定したと指摘。また、現行の日米地位協定の対等性欠如を認識しつつ、闇雲に改定を求めるのではなく、米国が同意し得る事例を参照するなどの交渉戦略を求める視点は冷静。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/713645

  • 外交、防衛、安全保障の中心地。なぜ動かないのか、動かせないのか? 新事実をもとに、特異な実態を解明する。

  • 日本人がほとんど知らない、知らされていない事実。国内にあるいわゆる米軍基地は国連軍基地でもある。米軍以外に英、豪など多国籍の関係者が自由に出入りしており、日本政府はそれを把握できない。

    基地問題を解決しようとする際、国連安保理決議を無視できない状態で、米国にゴリ押ししても絶対に叶わない。

    メディアも報道してない。

    主権国家としていかがなものか。
    吉田茂、岸信介の時代の置き土産?

    読了120分

  • 日米安保、日米地位協定、その一方的な内容について、様々な本を読んできたが、在日米軍基地が国連軍基地と重なっていると言う事実についてはほとんど知識がなかった。
    現在も安保理の決定により、日本に国連軍基地が設置され続けている、イギリスオーストラリア、カナダ等の軍人が日本に駐留していると言うことも知らずにいた。
    日米安保が片務的な内容であり、地位協定が様々な問題を抱えており、日本は基地を提供し、アメリカは日本を守る、と言う考え方がおかしい、アメリカは日本のために軍隊を中流させているのではなく、アメリカの世界戦略のために日本各地に米軍基地を置いている、その事は理解しているつもりであったが、日本がジブチに軍隊を派遣している。その内容についてまで思いが至らなかった。
    ジュプチが日本を守るわけではない事は当然であり、日本がジプチと結んでいる地位協定はその後をよく示している。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2789/K

  • 在日米軍基地の問題というよりも、在日米軍基地が持つ二面性について着目されている。我々が同問題にあたるときに大抵は日本政府と在日米軍というものに焦点が行きがちであるが、今回はそれが持つもう一つの側面と言うべき、在日国連軍との関係についてフォーカスされている。
    いわゆる占領軍としての米軍、英連邦軍という敗戦直後から、その後の朝鮮戦争における「国連軍」との関係、朝鮮戦争後の「国連軍」と日本の関係というものに焦点が当てられる。サンフランシスコ平和条約、吉田・アチソン交換公文、国連軍地位協定などの各種条約の相互関係といった法的根拠のあり方の転換などを見受けることができる。
    また、「国連軍」のもつ多国間枠組みという特徴から日米の2国間枠組みという側面のみならず、かつてより日本は多国間安全保障枠組みの中にあるということも時折強調される。例えば、台湾有事等の朝鮮有事ではない有事にそれぞれがアメリカ軍以外の国連軍参加国が参戦するのかもしくは何らかの協力を法的に行いうるのかなどについての検討も行われる。さらに多国間枠組み、外国軍と日本との関係の深化の過程とそれが持つ意義についての説明(ACSA、円滑化協定など)も行われており、今日の問題についても触れられる。
    さらには鳩山由紀夫政権時の「最低でも県外」とした普天間飛行場の辺野古沖移設の歴史的経緯と普天間が持つ性格からの難しさというものを解く。ここでは同盟とは何かというものを考えさせられた。(民主党政権とアメリカという性格)普天間飛行場の国連軍基地という側面は我々としても抜けがちな側面である。
    また、在日米軍基地は「直接的」に日本の防衛に関与するものではないというものが確認されている。というとなぜ日本に米軍基地が置かれているのかという疑問を持つものとなるがあくまでも「直接」ではなく間接的にである。さらには日本の防衛を主として誰がやるかということを考えさせられることとなるだろう。
    在日国連軍基地という側面には強くフォーカスされている。日本の安全保障、とりわけ在日米軍基地を考えるにあたってのもう一つの側面を考える上で良書だと考える。多国間枠組みの中の在日米軍基地。こうした側面をもつものとして、中公新書には千々和泰明(2022年)『戦後日本の安全保障』もあるため、こちらも同時に読むと理解は深まるため、おすすめしたい。この二つを読むことで「多国間安全保障枠組みの中の日本」という理解は深まるように思う。

  • 在日米軍の知られざる二面性から日本の安全保障を紐解く手掛かりを得る。
    沖縄県主催「地位協定シンポ」での作者コメント通り、大切なのは事実を偏りなく知ること。政治は人の営みであり、感情に左右される。それを確かな事実の積み上げと冷静な判断でいかに制御するか。

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著者プロフィール

川名 晋史(かわな・しんじ):東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。1979年生まれ。専門は米国の海外基地政策。著書に『基地の政治学:戦後米国の海外基地拡大政策の起源』(白桃書房、2012年〔佐伯喜一賞〕)、『共振する国際政治学と地域研究: 基地、紛争、秩序』(勁草書房、2019年)、『基地の消長1968-1973:日本本土の米軍基地「撤退」政策』(勁草書房、2020年〔猪木正道賞特別賞〕)、『基地問題の国際比較:「沖縄」の相対化』(編著、明石書店、2021年)、『世界の基地問題と沖縄』(編著、明石書店、2022年)、Exploring Base Politics(Shinji Kawana and Minori Takahashi eds., Routledge, 2021)などがある。

「2022年 『基地はなぜ沖縄でなければいけないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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