ストーカー - 「普通の人」がなぜ豹変するのか (中公新書ラクレ 606)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121506061

作品紹介・あらすじ

1999年桶川ストーカー事件、2013年三鷹の女子高生殺害とリベンジポルノ事件、2016年小金井ライブハウスでの女子大生刺傷事件。ストーカーによる凶悪な犯罪がたびたび起きる一方、報道されない規模のストーカー被害も急増中で、2016年の警察への相談件数は2万件を超えている。
別れ話のもつれから、という古典的なストーカーだけでなく、最近はSNSを通じた、「連絡先を知っているだけ」「一度も会ったことがない」といった相手にストーキングされるという例も増えている。

ストーカーになる人とならない人の境界はどこにあるのか? 「この人、ストーカーかも」と思ったときには、どうすればいいのか? 重症のストーカーは一生治らないものなのか? ストーカー問題の第一人者であり、トラブルに積極的に介入し、500人以上の加害者と対峙してきたカウンセラーの答えとは――。

豊富な事例を紹介、「ストーカーの被害を受けない」「ストーカーにならない」ための手引きとなる、貴重な一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 桶川・逗子・市川・三鷹・小金井
    ストーカー事件の舞台として、
    何度も名前をきいた地名。

    その事件がなければ、今頃幸せに暮らしていただろう彼女たち。
    その例をだし、対策を考えます。

    またそういう事件を起こしてしまった犯人について。
    たとえば三鷹で殺人を犯したトーマスは
    幼い頃母やその恋人たちから虐待を受けて育ったそうです。
    ストーカーたちは私たちが考えもしない心理状態でいるのです。

    まず親はそういう子育てをしてはいけないということ。
    またストーカーになってしまった人は、その自分に早く気付き、カウンセリングや治療を受けるのがいいです。
    下総精神医療センターの平井慎二医師の話がとてもよかったので、そこで治したら良いです。

    私たち、被害にあうかもしれない女性が、
    今どうすべきか考えました。
    SNSの扱いに注意することはもちろん、
    リアルの世界でも、ちょっとおかしいと思ったら、早めに自分で気を付ける。
    相手を加害者にしないためにも。

    でも最近思うのは細心の注意を払いながら既成事実(未遂)をつくるのも手かなと。
    なぜなら、そうしないと周囲が真剣にとらえてくれないからです。
    もっとも、それを行うには熟練が必要なのは言うまでもありません。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/691656

  • 「普通の人が」とあるが、「普通の状態の人が」ということかも。加害者には色々な問題を抱えている人が多い様に感じる。加害者には必ず治療につなげて欲しい。それが加害者も被害者も救う事に繋がるはず。

  • 自分も過去ストーカーでした。
    この本で心に残ったことはストーカーに伝える3つの鉄則です。
    ①相手は自分を嫌う自由がある
    ②自分の感情は自分で100%処理する
    ③違法行為は行わない
    荒れ狂う精神状態ではとても必要なことだと考えました。
    もっと早くにこの本に出会いたかったです。

  • ■ストーカーの五類型
    ①拒絶型(Rejected)
    ・親密な関係の崩壊を背景に発生する。通常,被害者は,かつて性的に親密な関係にあったものであるが,家族,親友及びストーカーと非常に近い関係にあった者もまた拒絶型のストーキングの標的になりうる。
    ・当初動機は関係を再構築しようとするか被害者が拒絶したことに対して復習をしようとするかのいずれか。
    ・被害者に対する明確な怒りを示し復習を望んだかと思えば,関係を取り戻そうとし被害者に対する相反する感情を示す
    ・殺人に至り世間を騒がせるストーカーの圧倒的多数がこの類型。
    ②憎悪型(Resentful)
    ・自分が酷い扱いを受けている,或いは何らかの不正の被害者であったり屈辱を受けていると感じることで発生する。
    ・被害者は酷い扱いをしたとみなされた見知らぬ人か知人である。犯人が被害者に対して誇大妄想的に考えを広げ「復讐の」方法としてストーキングを行う場合,重度の精神疾患が原因となっていることがある。
    ・初期動機は復讐又は「仕返し」への欲求であり被害者の恐怖心から誘発される支配感と征服感とによって持続される。
    ③親しくなりたい型(Intimacy Seeker)
    ・孤独感及び相談できる親しい相手の不在により発生する。通常被害者は見知らぬ人か知人である。
    ・しばしば被害者に対する妄想観念を含む重篤な精神疾患によって助長される。
    ・当初動機は恋愛感情と親密な関係を構築することである。親密人繋がっているという確信からもたらされる満足感によりストーキングは持続される。
    ④相手にされない求愛型(Incompetent Suitor)
    ・孤独感又は性欲を背景として発生し,見知らぬ人か知人を対象とする。しかしながら「親しくなりたい型」とは異なり,その初期動機は恋愛関係の構築ではなく相手と会うか一時的な性的関係を得ることにある。
    ・通常短期間であるがその行為に固執する場合は通常ストーカーが無分別であるか,被害者の苦痛に無関心であることで自閉スペクトラム症や知的障害に起因する認知限界や社会的スキルの欠如に関係することが多い。
    ⑤略奪型(Predatory)
    ・常軌を逸した性癖と興味を背景として発生する。
    ・通常犯人は男性であり,被害者はストーカーが性的興味を抱いた見知らぬ女性である。
    ・ストーキング行為の多くは性的な満足を獲得する手段として始まる。
    ・ストーキングは普段用心していない被害者を対象として得られる支配感と征服感とを楽しむ手段であり,満足感でもある。
    ■ストーカーの定義
    ・正当な理由なく故意に悪意を持って繰り返し相手を付け回し,待ち伏せや監視などによって意思を伝達しようとすることで相手に不安や恐怖を与える行為。
    ■拒絶型の加害者の代表的な特徴
    ①確固たる心理的動機があり自分の正当性を妄想的に信じ込む。
    ②相手を一方的に追いつめ苦しめていることを自覚しながらも相手に好意を持たれるという望みを抱く。
    ③②の望みが絶たれたとき心のバランスは憎しみに反転し自殺又は相手を殺害することもある。
    ■定位反射の消滅理論
    ・「なんだろう反射」とも呼ばれ新規の刺激に自動的に反射することをいう。
    ■ストーカーに伝える3つの鉄則
    ①相手は自分(ストーカー)を嫌う自由がある
    ②自分の感情は自分で100%処理する
    ③違法行為は行わない
    ■ストーカーの心理レベルでの危険度と対応
    ①ポイズン
    ・脅迫,暴力,住居侵入,名誉棄損など
    ・存在そのものが毒
    ・直ちに避難
    ・隔離が必要
    ②デインジャー
    ・批判,攻撃的な文句,待ち伏せなど
    ・危険度が高く第三者の介入など手を打つ必要がある
    ③リスク
    ・やり直したいなど
    ・危険になる可能性がある
    ・リスク管理が必要
    ■ヒトの脳には二つの中枢があり,
    ・一つは「防御」「摂食」「生殖」という生命を保ち次世代を作るための本能行動と適応行動をつかさどる中枢で,パブロフは「第一信号系」と呼んだ。動作,自律神経,気分などの生きることをつかさどる中枢。
    ・もう一つは「第二信号系」と呼ばれる中枢で「思考」の場。
    ・本能を満たす行動をとった結果,生理的報酬(安らぎ,満腹感,快感とは異なるがそれらと同時に生じることが多い)を得,これを獲得すると,その前の神経活動を定着させるために「繰り返し行動」が成立する。
    ・過度な「防御」反応は,放火,PTSD,パニック,反応性抑鬱,自傷行為として現れる
    ・過度な「摂食」反応は,病的賭博,病的窃盗,過食として現れる
    ・過度な「生殖」反応は,露出,痴漢,強姦として現れる
    ■男女間のストーキングは生殖という本能行動を促進する反射連鎖が基盤にあると言われる。つまり交際を開始したい対象や交際を続けたい対象に連絡や追跡を反復するのは対象に接近し生殖するという先天的な反射連鎖の一部が現れたもの,あるいはそれに加えて過去交際していた時に成立した「接近する」という後天的な反射連鎖であると説明される(平井医師)
    ■連絡や追跡を反復するだけでなく攻撃的になる人がいるのはなぜか。第一信号系は対象に接近して生殖行動を行う方向に進んでいるのに,それに対する相手の不同意を第二信号系の反射網が把握し,第一信号系と第二信号系の間に作動の方向において摩擦が生じる。この摩擦はとても苦しいために怒りに結び付き,初めは好意を持っていた対象を標的とする攻撃的な作動に転じる。
    ■元来「モラール」(la morale)はフランス語で「道徳,倫理」をいい,「モラル」(le moral)は「士気,意欲」をいうが,両者はアメリカに伝わったときに逆になってしまい「モラール」(morale)が「士気,意欲」,「モラル」(moral)が「道徳,倫理」という意味になった。

  • SNSを使うストーカーの危険度はこれまでとは比べ物にならない――500人以上の加害者と接してきたカウンセラーによる分析と警告

  • ストーカーにも種類がある。崩壊した関係を修復したいのにできずに復讐する拒絶型、自分が被害者だと思い込み派生する憎悪型、関係のない相手と特別な関係があると思い込む親しくなりたい型、つきまとう行為自体に執着する相手にされない型、被害者はストーカーが性的興味を抱いた相手となる略奪型。そんなストーカー達が治療を受けることで落ち着くのであれば、この情報をもっと知らしめるべきではないかと思った。

  • アドバイザー的な第三者の立場からどう関与すればよいのかわかりやすく書いてあってありがたかった。法的な対策のみではなく、ストーカーに対するコミュニケーションのやり方が重点的に書かれていて、実務に活かせる感じ。ストーカーの分類も適切だと思う、類型を整理し適切な対策を選択するのに役立つという意味で。
    他の本はDVとか女性の救済と抱き合わせになった内容のものが多く、自分のニーズとは少しずれる。この本はDVと話を絡ませず男女関係なくとにかくストーカーの問題という限度で対策をしねいて、ニーズに合っていた。
    もっともっとノウハウを公開してほしい。

  • ストーカー専門のカウンセリングというのがあるのを初めて知りました。被害者にとっての解決とその他一般にとっての解決の地点は違うということは大いにその通りだと思いました。

  • 別れさせ屋みたいだった。。けっこうストーカーに感情移入してしまう。著者の冷静さに圧倒されていたら、映画「刺青」の紹介のときだけやけにストーカーに入れ込んでしまってる著者にビックリ。読むうち自分もともすればストーカーになってしまうんじゃないかと思ってしまう。三鷹のストーカー殺人事件の池永チャールズトーマスが、殺人の直前まで、元彼女の家に忍び込んだことを後悔し、無事に帰宅したがっていたことに驚いた。
    巻末のストーカー治療法は冗談抜きで勉強になった。自分の気持ちを沈める方法、相手にあったときのイメージトレーニングで、始めは殴ってしまう自分を想像していた加害者が、200回イメージを繰り返したのちには、相手が立ち去るのを黙って見送れるようになる(イメージ)という。私も人を忘れるのに2年以上かかった。自分は会わなくて大丈夫、もう会わないと繰り返すことの威力。何気なく、口癖のように「あー会いたい」と言うことは負の力を持っているのだろうなと考える半面、そこまで強く気持ちを断ち切ることにさみしさを感じてしまった。ストーカーはおそろしいのに自分のこととなるとこうなのだ。ストーカーを憎む全ての人に、かなしい別れを経験した全ての人に読んでいただきたい本。

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