ジェンダーレスの日本史-古典で知る驚きの性 (中公新書ラクレ 779)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121507792

作品紹介・あらすじ

肉体の性別とは違う性認識を持つことが尊重されるようになってきた。先進的に見えるが、じつは日本の古典文学には、男女の境があいまいな話が数多く存在する。
男同士が恋愛仕立ての歌を詠み合ったり、経済力のある姫が一族を養う。武士は泣き、女将軍が敵に向かい、トランスジェンダーきょうだいは男女入れ替わってすくすく成長――。太古の神話から平安文学、軍記もの、江戸川柳まで古典作品を通して伝統的な男らしさ・女らしさのウソを驚きをもって解き明かす。昔の日本の「性意識」がいかにあいまいだったか、それゆえに文芸が発展したかも見えてくる。年表作りを愛する著者による「ジェンダーレス年表」は弥生時代から現代までを網羅。

感想・レビュー・書評

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  • 女性のふりをして『土佐日記』を書いた紀貫之。「同性愛」とも「異性愛オンリー」とも断言できない、古代日本にあった独特の世界 ジェンダーレスの日本史|教養|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/7251

    ジェンダーレスの日本史 -大塚ひかり 著|中公新書ラクレ|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/laclef/2022/11/150779.html

  • 古典から、少数派の性、今の基準では「ほお」というような記述を紹介。
    有名な古典も隅々までしっかり読むと、いろいろなことが書いてあるものだ。しっかり読み込んでいる著者に脱帽。

    キリスト教プロテスタントでは性は生殖のため、ということになっているが、日本ではそういう宗教ではなく、男色も「あるもの」として認識されていた、また「をんな男」など今でいう性同一性障害なども、こういう人っている、と認識されていた、そしてそれらが古典作品に描写されている。しかし、そうはいっても、明治以前の社会が性的に自由な進んだ世界だったかというと、身分社会であり、全体的には過酷な世界だったとしている。また、「伝統的」「日本古来」と思われていたことが、実はそうではなく、おおよそは明治以降に積み重なったとしている。

    巻末に「ジェンダーレス年表」があり、古典のなかでの記述をまとめてある。
    712「古事記」性別不明な神や子を産む男神の存在
    713「播磨国風土記」ミチヌシヒメノミコトは父のわからない子を産み、諸神を集め子に父を選ばせる
    8c後半「万葉集」男同士が恋愛仕立ての歌を贈答
    10c後半「うつほ物語」大貴族が妊娠中の妻や娘のために調理をする
    14c「落窪物語」貴公子、ヒロインの縫物を”めめしく”手伝う
    1008頃「源氏物語」”女にて見む”という言い回し
    平安末期「とりかえばや物語」トランスジェンダーと思しき兄妹が主役
    1321「稚児草子」性的に献身する稚児たち
    室町末期「聖フランシスコザビエル全書簡」日本では男色を罪と考えていない(でも両刀が基本)
    1563-97「日本史」「ヨーロッパ文化と日本文化」ルイス・フロイス 日本では処女性は重んじられず、女性は離婚・再婚しても名誉を失われない
    16,17世紀ころ 家族を持てるのは恵まれた階級だけ


    2022.11.10発行 図書館

  • 日本はジェンダーギャップ指数116/146位という極めて低い順位にある。
    特に経済、政治での指数がそれぞれ121、139位(出典:男女共同参画局 2022年)であり、先進国の中では最低ランクである(この順位で先進国と言えるのか)。
    多少変わってきたとは言え、まだまだ伝統的家族、だとか男は男らしく、性別分業など、前時代の遺物が多くの人を苦しめる。

    じゃあ、日本ってそもそもどんな国だったの?
    それを古典を用いて社会を見るという手法を取ったのが本書。
    なるほどと思ったのは日本語には男性名詞女性名詞がないという指摘。
    著者はそこに性の曖昧さを見る。
    直結するかは別議論としても、男女が曖昧というのはいかにも日本らしい。

    古代は女性首長が多かったようだ。
    3割から5割というのは驚きの数だ。確かにアマテラスは女神だし、神功皇后も有名だ。
    夫婦同姓も、伝統とエセ(あえて言おう)保守派が言うのは明治以降のことで、それまでは別姓、別墓が当たり前(これは既知)。
    本書は、しかしトランスジェンダーや同性愛、また、小児愛や子が親の所有物とみなされていた過去のことにも言及しているところを評価したい。
    単純に自身の主張の補強のために推論を言うでもなく、また、過去を殊更に美化することのない姿勢は、当たり前ではあるが非常に好ましい。

  • <目次>
    はじめに 日本の文芸はジェンダーレスであふれている
    第1章  男女の境があいまいな国~男も出産、女も立ちション
    第2章  むしろ女が優位だったかもしれない太古・古代~政治も経済も男女同格
    第3章  男女別姓、核家族、シングルマザーだらけの古代・中世~「伝統的な家族」とは
    第4章  性を重視すると、結婚観はゆるくなる~二度三度の離婚や再婚は当たり前
    第5章  LGBTもすべて認識されていた前近代~盛んな男色に宣教師もびっくり
    第6章  女々しい男、雄々しい女~男も泣くべき時に泣くのが日本の伝統
    第7章  軽んじられた弱者の「性」と「生」~ネグレクトや子殺し、性虐待の多さも

    <内容>
    大塚さんの古典の中から現代的なテーマを掘り下げていくもの。そこには保守派の人が言う「伝統」が嘘であることがあからさま。こうした本を連発する大塚さんの、さりげない主張が見えていて好ましい。

  • 首長を輩出し、馬に跨ぎ乗る女性の活躍が目覚ましいジェンダーレスだった太古の日本。
    男尊女卑に加えて家を重んじる日本の文化が数多の悲劇を生み出していたのか。簡単に殺される嬰児、売買される子供。仏教や儒教、キリスト教も日本に入ると性的にゆるくなるというのは一体どういう民族よ、日本人。
    稚児となったが最後の地獄があまりに酷い。あぁ稚児行列…。

  • 昔は、女性と男性が同等の地位にあったんだ。
    卑弥呼とか、推古天皇とか。
    昔の物語にも、男装した女が主人公とかもあったんだって!驚

  • 日本の良さや伝統、古来みたいに表現されるものがどのくらい以前からのものなのか
    現代の人が知ることのできる形で残っている情報が正確にその当時を記録できていないとしても、どうやら常に変化を続けてているもののよう
    今が絶対ではないと思うと少し楽しい

  • 大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
    https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/688980

  •  ジェンダーギャップ指数後進国の日本。そして、家父長制、男尊女卑、セクハラなど枚挙にいとまがない男性優位社会が続く日本。2023年統一地方選挙で女性議員は多少増加したが、古代や中世では多くの女性が執政を司り、男女はほぼ同権であり、夫婦別姓は当たり前で、女性が優位であった事も伺える。著者は、日本の古典を丹念に読み解き、日本はかつてジェンダーレスであった事を検証する。また、古来より「性に対する寛容さ」は一貫して変わらなかったとし、「性に対する寛容さ」とは無責任な性関係ではなく、「性を大切なものととして重視」していたからではないだろうか。本書は、古典の調査という事もあり、当時の上級社会の手記、書物からの考証であり、当時の庶民がどのようであったかは計り知れないのが残念だが、メイク男子に将軍女子など、明治になって西洋文化とキリスト教の教義による文明開化まで、少なくとも日本はジェンダーレスであった事がわかる。本書のテーマであるジェンダーレスをさらに深めたい方は、三橋順子さんの「歴史の中の多様な性(岩波書店)」を是非お読み頂き、現代に蔓延る「伝統的」のウソと、未来へのメッセージを込めた二人の著者の思いを共有して欲しい。

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著者プロフィール

1961年生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。『源氏物語』全訳六巻(ちくま文庫)、『女系図でみる驚きの日本史』(新潮新書)、『ジェンダーレスの日本史』(中公新書ラクレ)、『ヤバいBL日本史』(祥伝社新書)、『くそじじいとくそばばあの日本史』『やばい源氏物語』(ポプラ新書)、『嫉妬と階級の『源氏物語』』(新潮選書)、『傷だらけの光源氏』(辰巳出版)など著書多数。趣味は年表作りと系図作り。

「2024年 『ひとりみの日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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