- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121701817
感想・レビュー・書評
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初版は1969年。愛嬌ある風貌から「ダルマ」とよばれ庶民に人気のあった政治家だけに、人物評は数多あるが、なるべくセンチメンタリズムやノスタルジアを拝したものが読みたかったのでシンプルな本書を選択。やや文語調で少々読みづらいが、期待通り余分な記述のないストイックな書き振りで、気持ちよく読み進められた。
緊縮財政=増税=悪、積極財政=減税=善、の短絡思考(ポピュリズム)がはびこる現在、高橋の積極財政を称賛する声も多かろう。しかし、今一度高橋財政の行われた時代背景を顧みるに、高橋の「積極財政」は経済成長のため、国家として育成すべき資本の増強のため低金利環境を整えようとするものであった。戦時には軍需産業こそが成長産業であり、ここに資本を集中するというのは無論理に適っている。しかし一旦平時に戻れば、低金利で甘やかされた斜陽産業は一気に国家のお荷物となり低成長の温床となる。原内閣での大蔵大臣時代、第一次大戦後に競争力を喪失した軍需産業を温存しつづけた高橋の積極財政を「放漫」と切って捨てる本書の明快さに喝采を送りたい。
近年の日本をはじめとする先進国で見られる財政・金融政策は、対象となる育成産業が特定されないバラマキ的なものであり、非効率の温存を含んでいる。それはそのまま国家の低成長につながるという意味で高橋財政とは対極に位置づけられるものだ。この視座がないままの積極財政の礼賛は乞食根性と違いがないだろう。そして一旦積極財政や金融緩和がデファクトスタンダードと化すや、ぬるま湯でスポイルされたセクターは正常化への抵抗を先鋭化させる。二・二六事件の教訓は現在も十分活かされねばならないものだと改めて考えさせられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
政治家ではなく財政家。
波乱万丈な自伝になかった後半生(日本の歴史としてはこちらのほうが重要とされている)も記すことで高橋是清の人生を簡単に通しで理解するには適した書物。 -
大島清『高橋是清』(中公新書181)
本書でも言われていますが、近代日本で松方と肩を並べる財政家がこの高橋是清だと思います。
昭和恐慌と戦った人として認識はしていましたが、それにしても大分数奇な人生を送った人だとつくづく(笑)
しかし、第1次大戦後の経済政策をとったのが高橋という事はすっぽ抜けて、それが生み出した恐慌をなんとかしたというイメージしかなかったので、読んで自分で蒔いた種を自分で刈り取ったというのに「ああ、確かに…」と(笑)
財政家というのは高橋に限らず大分現実主義的だとは思いますが、しかしその現実主義がその時勢に合っているかというのは井上準之輔の金解禁を見ても難しいものがあるんですね…財政も難しいです。
個人的には岡崎邦輔が一騎当千の宿将と表現されているのに笑ってしまいました。
だって…政界の寝業師じゃん…(笑) -
何故か突然「高橋是清」が読みたくなった。ちょうど今世界はバラマキの真っ最中。でも、読んでみるとチョット違う。そして最後は軍に殺される。こういう骨太の政治家、金融マン、才能を世の中はほっとかない。今では普通の事だけど一般歳入の補填を目的とした国債発行、最初にやるとこがカッコイイ。高橋是清についてもう少し勉強してみよう!!