シェルパ: ヒマラヤの栄光と死 (中公文庫 ね 2-6)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122040373

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  • 古き良き時代、では決してないのだろうが、ヒマラヤの民シェルパがダージリンに出稼ぎにいき、ヒマラヤ登山の重要な役割を担いシェルパというブランドが作られていく、イギリスはじめ欧米人の優雅な避暑地登山基地であったダージリンの、彼らにとってはネパールにいるよりは、なんとか食べていける、比較的安全で暮らしやすい良い土地良い時代のか、もちろん植民地という好ましからぬ状況下であり、超低賃金低補償での登山隊の仕事は悲惨なものだったが。
    古いダージリンシェルパたちとの交流、インタビューをもとに綴られていて興味深い。イエティの捕獲作戦や、テンジンの出自など気になる話題もあり、とにかく面白い。ダージリンに行きたくなる。とはいえ、沢山のシェルパの命が、失われた時代でもあった、シェルパは神々の住むヒマラヤには登らない、登りたいとも思わない、しかし経済活動、生きていく食べていくための営みだったこと、殆どのシェルパにはなんの名誉もなく危険で辛い仕事だったこと、趣味や名誉やときに政治や軍事のために登山する登山隊の人たちとは全く違う背景動機で、頼られはしたが、大事にされたわけではなかったこともよく理解できる。ナムチェ、クムジュンあたりの出身が多い。ダージリンシェルパたちの記憶の記録として貴重。最後のソルクンブと、カトマンズで、ダージリンシェルパの古老晩年のインタビューも圧巻。アジアンドキュメンタリーでみたネパール大地震の際のランタン村の震災、チーズ工場の再建再開と同じチーズファクトリーなのか、50年代にトニハーゲンの友人のスイス人とランタンでチーズを作りに従事話などもありほんとうに面白い。

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著者プロフィール

根深誠

1947年、青森県弘前市に生まれる。明治大学山岳部OB。日本山岳会会員。日本勤労者山岳連盟顧問。73年以来、ヒマラヤの旅と登山を続ける。84年にはアラスカ・マッキンリー山(現・デナリ)で行方不明になった植村直己さんの捜索に参加。これまでにヒマラヤの未登峰6座に初登頂。故郷津軽の自然を愛し、白神山地を歩き尽くす。ブナ原生林を東西に分断する青秋林道の建設計画が持ち上がった際には、反対運動を立ち上げる。主な著書に『遥かなるチベット』、『山の人生』、『いつか見たヒマラヤ』、『ネパール縦断紀行』、『風雪の山ノート』、『世界遺産 白神山地』、『ブナの息吹、森の記憶』『白神山地マタギ伝 鈴木忠勝の生涯』など多数。

「2019年 『渓流釣り礼讃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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