- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122043183
作品紹介・あらすじ
わたしたちがなにげなく仰ぎ見る星空に、天文学者たちは「自分の星」をもっている。ある時はそれと静かな対話を楽しみ、またある時はそれと戦う。観測の合間にかわされる会話や、天文台を訪ねる人々とのふれあい-興味深いエピソードをちりばめて、岡山天体物理観測所で副所長を勤め、星と対話を続けた著者が記す。天文台職員たちの生活をうかがい知ることができる好著。
感想・レビュー・書評
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天文学者のそれぞれが「私の星」をもっていて、その星のイメージをいつも胸のなかに温めている。
観測──この「私の星」との対話の時、つねに天文学者は孤独なのだという。己を空しくして、「私の星」の問いかけを最大限に聞く。このために彼らは工夫と努力を重ね続けるのだ。
昭和47年6月に刊行された『天文台日記』。
岡山天体物理観測所で副所長を務めた著者が記す数々のエピソードは、興味深い天文台職員たちの生活をうかがい知ることができる。
時代は流れ、その頃とは観測所の役割や研究方法、人間関係など様々な事柄は変化しているに違いないけれど、夜空を廻る星たちは何ら変わることもなく、わたしたちの頭上で今夜も輝いている。古の時代からどれほどたくさんの人々が、この星空を見上げることで、孤独を癒し、己と対話し、明日への希望を夢見てきたのだろう。
職員たちのエピソードではないけれど、〈11月11日晴〉の日記がわたしには印象に残った。
16世紀のデンマークにチホ・ブラエ(ティコ・ブラーエ)という天文学者がいた。
1572年11月11日の夜、彼はカシオペア座に出現した金星よりも明るく異様に輝く天体を認める。
その「チホの星」、そしてコペンハーゲンとエルシノアの中間、細長い海峡の上に浮かぶ「ヴィーン島」に彼がつくった「ウラニボルク天文台」。それらのロマンチックな挿絵に、わたしはうっとりした。
この時代にタイムトラベルできるのなら、絶対にその天文台で今は無き「チホの星」を眺めたい。著者の望みのひとつも、時代を遡ることができたら「ウラニボルクの主人」になることだったらしい。それほど〈天の城〉とよばれた「ウラニボルク」は魅力的なのだ。
まあ実のところ、チホ自身はちょっと問題アリの性格だったらしいのだけどね。 -
とても気さくな印象を受ける日記。天文小話も所どころ登場するので、小物語集としても楽しめる。底本からは多少時間が経過しているだけに、今よりももっと星が見えたのだろう。羨ましい。
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いつか鴨方の天文台に行ってみたい。静かに熱苦しく美しい星々と格闘する研究者の仕事場を見てみたい。
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星と来訪者のやり取りが優しくて、なんだか気持ちいい
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現在の天文台は、電子制御の塊となり、精密測定が容易く行われているが、人の手により何事もなされた時代の記録。様々な注意事項が書かれたイロハガルタが秀逸。
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◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA6552167X -
2018年5月12日紹介されました!
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天文台に詰める研究者兼管理人のエッセイ。
話自体はけっこう前の、乾板を使って写真を撮っている頃のお話。天文学ファンならにやにやしてしまうようなエピソードの連続で、今も昔も変わらないものを感じて嬉しくなる。 -
ずうっと持っている数すくない本。
開くと、静かでしんとした空気を感じます。
どこに書いてあったかいつも忘れますが、深夜、ゆびをゆっくりとおって数をかぞえ、鼻がかゆくなったらその指で鼻をかき、眠くならないように歌をうたう。というところが好きです。 -
新聞で渡辺潤一さんの紹介記事をよんで、表紙に惹かれて取り寄せた本。表紙のために買ったくらいの気持ちだったけれど。
天文台での生活や観測の知識が興味深くおもしろいということはもちろんですが、所々でひと息ついて、しみじみとこの生活に思いを馳せる、そのときの文学的情緒のこもった文章がなにより心に残る。すばらしいです。
星をみて、ひとと関わり、また自分を見つめる生活に、憧れずにはいられない。
ようやく昨夜アップできました。遅くなってごめんなさいね。
もうひとつ、こんなロマンチックなレビューに変なコメントしてるこ...
ようやく昨夜アップできました。遅くなってごめんなさいね。
もうひとつ、こんなロマンチックなレビューに変なコメントしてることも、謝ります。
いえいえどんなコメントでも嬉しいですよ。お知らせくださりありがとうございまーす!
いえいえどんなコメントでも嬉しいですよ。お知らせくださりありがとうございまーす!