アキハバラ (中公文庫 こ 40-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122043268

感想・レビュー・書評

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  • 警視庁捜査一課巡査部長、碓氷弘一。46歳。腹の出た体型に薄くなった頭髪。くたびれた背広姿というサエない中年男だ。
     世辞も苦手で上司のウケも良くない。けれど上意下達主義の警察にあって、組織の常識に囚われない独自の視点から事件を見ることができる。
     そんなベテラン刑事の碓氷が泥臭く事件解決に奔走する警察サスペンス。シリーズ2作目。
             ◇
     秋葉原。国内と言わず世界中のITファンが集う街である。事件は、そこで起きた。 

     セキュリティの甘い日本はまさにスパイ天国だ。世界中のスパイにとって息抜きの場になるほどである。中でも秋葉原は、スパイやテロのツール調達のメッカである。

     イラン対イスラエルというスパイ同士の小競り合いから物語は始まる。舞台はもちろん秋葉原。さらにロシアンマフィアやらヤクザやらが同じビルで暗躍を始めた。

     そこにやってきたのが秋田から上京して間もない大学生の六郷四郎。
     憧れの東京。憧れの秋葉原。キャンペーンガールの美脚に見惚れ舞い上がっていた四郎が、裏社会の人間たちが繰り広げる騒動に巻き込まれてしまった。

     爆弾騒ぎ、銃撃戦、人質を取っての立て籠もり。パニック状態に陥りながらも必死になって身を隠す四郎。
     一方、警視庁から先乗りで派遣された碓氷は情報収集に全力を上げるが……。

         * * * * *

     シリーズ1作目に続き、本作もパニックサスペンス。そして前作同様、碓氷の活躍は黒子的で控えめ。

     けれど、北朝鮮のスパイから情報を引き出したり、街の顔役の協力を取り付けたりと、相変わらずの人使いの上手さが際立つ碓氷。
     極めつけは対立していたはずのイランの腕ききスパイとイスラエルのスパイの2人までもが揃って助力を申し出るという、碓氷の人徳というか人誑しぶりには笑うしかありません。

     都合よすぎる展開ですが、エンタメとしては、前作以上のおもしろさでした。
     再読なので筋書きはわかっているのにも関わらず、この終盤に差し掛かるとワクワクしてしまうのだから、いい出来の作品だと思います。

  • ワチャワチャいろんなストーリーが絡み合って…ほんと秋葉原ぽい。

    上京して初めて秋葉原行った時のワクワクした感じ、史郎の気持ちが分かる。
    コロナ前の秋葉原はこんな事が起きても不思議じゃないくらいワチャワチャしてて、そんな所が何となく好きだった。久しぶりに行ってみようかと思った。

  • タイトル通り、秋葉原を舞台に繰り広げられる、縁もゆかりもなかった人たちのドラマです。

    上京したばかりの大学生や外国人スパイなど、これほどバラバラな登場人物を一つの事件を軸にして、結び付ける著者の力量は見事だと思います。

    始めはなかなか先が見通せない展開でしたが、読み進めるうちに、最初は点であったもの同士の距離がだんだん近づいてきて、最終的には大きな輪になるようなイメージでしょうか。ストーリーと秋葉原という街の組み合わせも絶妙。

    後半登場する刑事・碓氷は実は今野作品としては碓氷シリーズとしてすでに6作目まで刊行されているんですね、知りませんでした。1作目、3作目以降にも期待が持てる内容でした。

  • めちゃくちゃおもしろかった!ちょっと恩田陸さんの「ドミノ」に似てる。あっちは東京駅が舞台で、こっちはアキハバラが舞台、という違い。まったく関係ない人たちの行動があちこちに飛び火し、ドミノ倒し的にパニックが起きるという展開で非常におもしろい。そしてこのシリーズ碓氷刑事が主役のはずなのに、話が半分以上過ぎないと登場しない、というのが笑えました。

  • 田舎から上京した大学生の青年がかねてから憧れていた秋葉原で次々と巻き込まれるトラブルでストーリーは進んでいきます。ただ、少年の視点だけではなく、外国のスパイ、日本のヤクザ、女子大生、電気機器の店員、ハッカー、秋葉原にすむ老人、いろんな人の視点から1つの出来事が書かれています。その1つの出来事は、スリルな感じで最初はともかく途中から読むのに夢中になってしまう小説です。

  • アキハバラで万引きに間違われ、どんどん巻き込まれていく大学生の話。

  • 最初は登場人物が多すぎて、訳分からなくなったが、そのゴチャゴチャと喧騒が非現実的なのに、アキハバラならありそうで面白かった。

  • 最近今野敏ばかり読んでいる。
    本作は、触発に続く碓氷弘一シリーズ第二弾。碓氷の登場はかなり遅く、群像劇的な作日。
    たった数時間の秋葉原でのゴタゴタ。それぞれが魅力的な登場人物で少ししか出てきていないにもかかわらず、李さんすら、印象的。

    碓氷が、触発の経験で人が変わり、よりカッコよくなっているのが、シリーズを読んでいる読者としては嬉しいポイント。

    映像化してほしいなーと一瞬思うものの、この群像劇、おそらく映像化すると一人一人が陳腐になる。
    これぞ、小説だからこそ、それぞれの登場人物の魅力が出てくるんだな、と思わせられた小説でした。

    エンターテイメントととして、いろんな人がかっこいい主役級の男気的な、スペシャリスト的な活躍をする、すっきり面白い小説。

    2015.09.13

  • 著者には珍しい、スラップスティックコメディ。
    様々なエピソードがやがて一つに収斂していくノンストップアクション活劇。
    田舎から出てきたばかり都会に慣れてないの学生、ショップの店員、ロシアンマフィア、外国人スパイに暴力団、これでもかとばかりに出てくる雑多な人種。
    これって、碓氷弘一シリーズ?と思っていたら、終盤になってやっと登場。
    期待を裏切らない面白さと大団円は、やはり今野敏。

  • 秋葉原を舞台に様々なバックグラウンドを持つ登場人物達が偶然ある一つの出来事をつむぎだしてゆく。割と面白い。純粋に、休日の暇つぶしとして最適です。ただ、こんなに不運(?)が重なるものかよ・・・ と思うが、それは小説だからってことでしょう。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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