比島から巣鴨へ: 日本軍部の歩んだ道と一軍人の運命 (中公文庫 む 22-1)
- 中央公論新社 (2008年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122051003
感想・レビュー・書評
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極東国際軍事裁判(俗にいう東京裁判)で絞首刑になった、武藤章・帝国陸軍中将による、先の大戦の回顧録と獄中記。本書に掲載されている内容は、著者が第14方面軍参謀長として終戦を迎えたのち、巣鴨プリズンに収監中に書かれたものである。獄中において、満足な調査ができず、資料も皆無な中、これだけの文章を書きあげるとは、並外れた教養と思考力の持ち主だと言わざるを得ない。著者による当時の国際情勢分析や、太平洋戦争に対する考え方は、当時の日本国民よりも、よほど現代人の感覚に近いのではないかと思う(彼は対米開戦には一貫して反対だったし、サイパンが陥落した時点で「戦争は負けた」と語っている)。決して精神論に走ったり、空気に流されるような軍人ではなく、冷静沈着な戦略家という印象を受けた。なぜこの人が死罪になったのか、本書を読む限りではよく分からない(近現代史の研究者の間でも見解が分かれる)。東条英機は、武藤に死罪判決が出るとは思っていなかったみたいだし、武藤の獄中記からも、東京裁判の途中までは終身刑程度だろうと考えていたフシが伺える。結局、著者の類まれなる才能が絞首刑を招いてしまったのだろうと思うしかない。(私は、「参謀」という役職の魅力は、作戦の結果責任を問われないことだと思っているので、武藤中将の極刑は「話が違うではないか!」と感じてしまう。もっとも、大本営の「参謀」はおそらくみんな生き残っているので、少数の例外にこだわる必要はないのかも。)
※本書は、本人以外の誰も読まない「日記」としての性質をもつと同時に、米軍に「検閲」されることを分かった上で書かれた側面もあり、記述内容を100%鵜呑みにすることはできない。それでも、先の大戦における帝国陸軍の内部事情を詳細に記した第一級の史料とされている。 -
武藤章の回顧録。読みやすくて面白い。
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芙蓉書房の『軍務局長武藤章回顧録』の元になった本です。日記の部分が面白い。ちょっと誤植があるかな。手に入るなら前述の芙蓉書房版がオススメ。