高度成長 (中公文庫 よ 46-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122056336

感想・レビュー・書評

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  • 生まれてから18歳までの期間に重なる。
    6000日の出来事なのに、薄い本で読みやすい。
    年のせいとおもうが、読む力が落ち、すらーっと頭にはいってこず、読み通すのに苦労した。
    巻末の年表が良い。

  • 我が国の社会構造を、かつてない短期間で変えてしまった高度成長についての、マクロな経済構造からの分析を述べた本。
    たかだか15年の間に、江戸や明治の延長にあった農業国家をサラリーマン中心の国家に変えてしまったのは、まぎれもない経済成長。そのキックオフは大戦後のマイナス状況に与えられた朝鮮戦争特需であり、成長をドライブしたのは地方農村から都市への人口移動と世帯の分割増殖であったとの分析。
    印象的なのは、「もはや戦後ではない」の名言で記憶される後藤誉之介の経済白書結語。じっくり読んでみると、ロジックと格調と真摯なまなざしを感じる名文だ。

  • 本書中に「高度成長期の6000日に日本社会に生じた変化によって現在の日本が40年以上もたった今でも規定されている」という趣旨の箇所がある。
    正直、高度経済成長との接点を全く持たなかった私からすると、
    高度成長というものは、日本史の教科書に載っているような「歴史」である。
    しかし、「歴史」とはいいながら、今の自分、周囲の環境に少ないながらも影響を与えているのが高度成長という言い方もできる。

    今までは前者の考えしか持ちあわせておらず、高度成長を過去の点としてでしか認識できていなかったが、
    本書には裏付けとなるデータと併せてそのデータが示す実際の社会状況が記載されており、私のように「歴史」として高度成長を捉えていた人にも的確に”What is 高度成長”を示した良書であると思う。

    点と点をつなぐことが歴史という学問の存在意義であるならば、
    高度成長と現代の日本とをつなぐ最大の貢献をしたのが本書であると思う。

  • 【一変】日本史上、いや、世界史上にも例を見ない高度成長を成し遂げ、わずか20年程の間に国のかたちから国民の生活までをも一変させた高度経済成長。ある人にとっては郷愁の対象であり、ある人にとっては自然や環境の破壊と映るこの現象が与えた影響を、マクロレベルのみならず、国民一人ひとり単位のミクロレベルに至るまで丁寧に記述した作品です。著者は日本のケインズ経済学の泰斗である吉川洋。


    生まれた頃からバブル崩壊→低成長時代に突入している自分からしてみれば、高度成長の「空気」までをも感じられる本著は非常に勉強になりました。高度成長の与えた影響の隅から隅までを把握しきった著者だからできる業なのだと思うのですが、わかりやすさと理解のための記述の深さが併さった見事な作品だと思います。平易な言葉で当時の人々の生活が立ち上ってくるかのような記述もgood。


    著者自身、高度成長に対して複雑な感情を抱いていることは下記のとおりですが、やはりそのもたらしたメリット、そして時代の輝きに対する好印象が拭えないという心情は、当時を実体験した人たちにもある程度共有されるものなのではないでしょうか。「高度成長」という単語に人々がどのような夢や物語を託したのか、そして、そんな夢や物語を託すことのできるキーワードが現代で見つけることができるのだろうかと自問しながらの読書になりました。

    〜私自身、経済成長に対してアンビヴァラントであることは、この本の「おわりに――経済成長とは何だろうか」に書いたとおりだ。しかし、少年時代にこの時代を経験した私は、いま「高度成長」に大きな花束を贈りたい気持ちである。〜

    表紙の東京タワーがまた堂々としてるじゃないですか☆5つ

  • 掲載されている図表が非常に充実しています。その中でも、中学から集団就職した人たちのその後のライフコースを追った雑誌記事等、本文と同じくらい興味深いものも多いです。また、恥ずかしながら、「もはや戦後ではない」が使われた文脈をこの本で初めて知りました。

  • 高度成長期をミクロとマクロの両面から捉えて書かれたもの。参考文献にある下村治関連の本も読みたくなった。

  • 高度成長がどのように起こったか?ということよりも,高度成長によって日本はどのように変わったか?ということにフォーカスされた本.高度成長の後に生まれた私のような人間にとっては当然である今の日本の姿が,ほんのこの50年ほどのものだということを気付せてくれた.もっと日本中(特に日本海側)を旅してみたいという気持ちになった.

  • 1950年代の半ばから1970年代の初頭まで、日本は年率で平均10%程度という経済成長を経験した。
    単純な計算をしてみる。初年度のGDPを100とし、その後15年間10%の経済成長が続いたらどうなるのか、という計算(初年度100,翌年110,翌々年121….)をしてみると、15年後にはGDPは約420となる。経済規模が4倍になる訳だ。1990年代初めのバブルの崩壊以降、約20年間、日本は経済規模でほとんど成長していない、ということを考えると、15年間で4倍ということのインパクトが計れると思う。
    良いことばかりではなかった。経済成長の影で失ったものがある。例えば公害問題など、と筆者は書いている。
    筆者が書きたかったのは、この未曾有の経済成長の期間中の「記録」であり、それを「評価」することではないようだ。

    2022.10.25再読
    最初に読んだ時には、あまり印象に残らなかったのであろう、高度成長の構造・要因に関する、筆者のマクロ経済学的分析が、今回は印象に残った。

  • 日本の高度成長時代(1955~70年頃)を描いた本で、直感的におもしろそうと思ったが正解だった。統計データが充実していていて、数字で押さえられるので勉強になる。さすが経済学者の本。 
    さらに、文章と写真による当時の生活の描写がすばらしかった。高度成長前の渋谷駅前がこんなとは。ミシンが家にきてお母さんのうれしそうなこと。 

    高度成長後生まれなのに、なぜか懐かしくなる。子供の頃を思い出す。「高度成長は進歩だったのか」という筆者の問いには一瞬考え込んでしまう。が、やはりここまで豊かになりすぎないと、次のステップ(持続可能な社会)に進めないだろうから進歩だと思う。 

    ただ、高度成長への道が開けたのは、占領軍が日本を軽工業国にしようとしていたところ冷戦で政策変更されたから、というのは忘れないようにしたい。日本はラッキーだった。

  •  単行本の時に気がついて、もっと早く読んでおけばよかった、というのが最初の読後感。

     タイトルが意味深だというのが、次に心に生まれた感想。

     はっきりいうと、本書は1955年から1973年の日本の高度成長期「だけ」を論じたものではない。もちろんその時期が中心ではあるのだけれど、その前後についても丁寧に論じている。それだけでなはい。中国・アメリカといった外国まで含めて検証している。また「おわりに」では、GNPという指標の妥当性まで論じているのである。

     つまり本書は、高度成長期をもとに「経済成長」そのものを考察しているのだ。そのことは、高度成長が「進歩と言い切れるだろうか」(P.222)という言葉で本書が締めくくられていることからも、わかるだろう。

     もちろん本書にはそんな大きな問題の他にも、当時の社会を知る上で参考になる、という面もある。自分のような高度成長期を知らない読者にとっては、具体例が豊富で、読んでいて楽しかった。私は社会科の教員をしているが、授業で使える話が多くて非常に有用なのでは、と感じた。

     というわけで、成長を考えるために、また高度成長期を知るための教養として、読んで損はない1冊だと言いたい。ただ、私が教える中高生には読んでほしくない。授業で話すネタの出所がバレてしまうからだ。
     

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