- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122056916
感想・レビュー・書評
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大正、昭和の時代色豊かな絵巻物風ものがたり、出生の謎を解くミステリー風、女の一生、結婚とは?
おおまかな内容はこのよう。作家水村美苗さんの母節子さんが小説を書いてしまった。しかも娘が書こうとした母の母、祖母の尋常一通りでない「女の一生」ものがたり。
むかしは案外こういう立場の人(婚外で子供を産まねばならない)がたくさん居たのだろう。現代は未婚の母はむしろ翔んでいるといわれるが。
「高台にある家」は上昇志向の象徴。これも今では死語かもしれない。富と貧。現代格差が戻ってきたとはいえ、むかしはそれに加えて身分人格まで貶められ、もやもやした羨みは這い上がりたい力を生むと同時に、強烈な個性を加える。
年老いた母と若い父。たくさんの異父兄姉が登場して、アンバランスな崖下の家のような暮らし。そんななかで育った少女(語り手「私」)は上つ方を志向してもがき、目覚めていく。
文学性には欠けるが、大正昭和の絵巻物としてもおもしろく、また、横浜、神戸、大阪の風情がうまく描かれていてどこか懐かしい読み物であった。
田辺聖子さんも誉め(神戸大阪の暮らしが生き生きしているからか?)娘水村美苗さんの手直しも入っているという文章。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あとがき? 水村美苗による「祖母と母と私」を読んで驚いた。文章教室に通って習って書いた作品だとは。
水村美苗「母の遺産 新聞小説」での人間関係が何とも分かりにくく、行きつ戻りつしながら読んだお陰なのか、或いは母・節子の描写が的確だったからなのか、この複雑に入り組んだ人間関係に余り苦労することなく読み進むことができた。 -
小説家水村美苗氏の実母である水村節子氏によるデビュー小説。小説と言っても、自伝に限りなく近いと思われる。1921年生まれの著者の半生を綴る書であるが、中心となるのは著者の母親の話である。
著者は、自分の母親の下品な行動や身なりに子どもながら辟易し、恥じている。そして自分はとても若い父と年老いた母に生まれた私生児であることに気づき、コンプレックスに思う。母の複雑な人間関係から、自分は一人っ子ではないらしいと気づく。女学生時代、そしてお嫁に行き、ある決心をするまでの赤裸々な私小説である。
最初の2章は冗長で投げ出しかかったものの、強烈な母が登場してからは釘付けになった。文体が娘の美苗氏に似ている。この類いの女性の一生を描いた書は様々読んだが、時代背景もあり、なかなか面白かった。昔の人が家族に対して抱いた思い、若くて結婚すること、兄弟の数が多かった時代に思いを馳せる。70代になって小説を書き始めた著者のバイタリティも凄い。オススメの一冊。 -
読了
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自伝はすきじゃないのに、読めた。しかも結構引き込まれた。
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本の帯に目が止まった。
「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」
実はこの本でなく著者のベストセラー「母の遺産ー新聞小説」のことらしい。しかし、この本が見当たらなかったため、続編の著者の母が主人公の「高台にある家」を先に読み始めた。少女が自分の出生の秘密が明らかになり、同時に成長していく様は生々しく最後まで一気に読み切った。明治から昭和まで女性の人生ほど私の印象にのこるものはない。それは私の身近なところにも密やかにあるからだろうか。他人の家を覗きこんでいるような何とも言えない気持ちがある。ここまでかける事が凄い。 -
大正に生まれ、庶子として育ち、
冷めた目と強烈な自意識と強いあこがれを持ち
昭和を生きた女性の私小説。
小説として面白いか、を問われれば間違いなく否なのだけど、
時代の空気感はやたら生々しく、
構成は下手でも文章は美しい。
自意識の高さを正直に描き出す姿勢は真摯で、
その上主人公に共感するところが多々あったわたしは
つまらない、つまらないと思いながら時間をかけて
じっくり読んでしまいました。
娘・美苗さんの著作を読めばまた印象は変わるのかもしれません。