星の文人 野尻抱影伝 (中公文庫 い 107-2)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066892

作品紹介・あらすじ

飽くことなく星への憧憬を語って大正・昭和の天文少年少女を魅了し尽した“星の文人”野尻抱影。ハマッ子の洒脱、江戸趣味人の博識、心霊学への肩入れ、末弟・大仏次郎に見せる長兄の厳しさ……日本最大の「横丁のご隠居」の素顔。『野尻抱影―聞書“星の文人”伝』を改題

感想・レビュー・書評

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  • ひゞきなきサジテリアスの弓の緒の門の枯木にかゝるこのごろ
     会津八一

     歌人会津八一や相馬御風らとともに、早稲田大学文学部英文科初の学生となったのが、野尻抱影。天文民俗学者で、「星と伝説」「星の方言集」はじめ多くの著書・翻訳書がある。ライフワークは星の和名収集だが、「冥王星」という和名の提案者としても、広く知られているだろう。

    掲出歌は、抱影の初めての著書「星座巡礼」に寄せられた歌。「サジテリアス」はいて座のことで、銀河の中心から放たれた弓矢が、この日本にひっそりと届いたような、風情ある祝歌だ。
       
    抱影は、1885年(明治18年)、横浜市生まれ。本名は正英【まさふさ】。1977年、享年91で他界したが、石田五郎による評伝ではユニークなエピソードが次々に登場し、連続ドラマになりそうな生涯だ。

    たとえば、雑誌編集者でもあった抱影と、全国の読者との密接な交流ぶり。星の和名の収集源も、愛読者からの手紙や葉書であり、新情報提供者には、ラブレターを超えるほどのほめ言葉で返信したという。

     「初恋」の星座は、中学時代に見たオリオン。愛妻がスペイン風邪で急死し、それを回想した悲痛な小説でも、妻に、一番美しい星座はオリオンと語らせている。

     さて、驚きの文学史的エピソードを。抱影の一まわり下の末弟は、作家の大佛次郎。「鞍馬天狗」「天皇の世紀」等で著名だが、実は戦後の一時期、抱影が大佛次郎名で翻訳書を出していたとか。抱影による代作も若干あったようで、何とも気になる。
    (2019年6月9日掲載)

  • 野尻抱影って桜新町にいたのか。昔のご近所じゃないか。今度散歩してみようかな。

  • ハマッ子の洒脱、江戸趣味人の博識、心霊学への肩入れ、末弟・大佛次郎に見せる長兄の厳しさ……。「二世天文屋」による決定版評伝。〈解説〉渡部潤一

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著者プロフィール

一九二四年、東京生まれ。東京帝国大学理学部天文学科卒。一九四九年東京大学助手、一九六四年助教授、一九八四年教授を歴任し、同年四月退官。この間、三鷹天文台に一年、麻布狸穴の天文学教室に九年、岡山天体物理観測所に二四年を過す。一九八六年東洋大学教授に就任。一九九二年没。著書に『星の歳時記』『天文屋渡世』など。

「2019年 『星の文人 野尻抱影伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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