青と白と (中公文庫 ほ 22-1)

著者 :
  • 中央公論新社
4.00
  • (3)
  • (5)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 71
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122067028

作品紹介・あらすじ

30代後半の悠は、アルバイトをしながら空き時間に原稿を書く駆け出しの作家。仙台を出て東京で一人暮らしを続けるが、ぎりぎりの生活を送る。そんな悠の日常は、震災を境に激変した。非常時だとはしゃぐ同僚、思わぬ人からの気遣い、そして、故郷の家族の変化。「私は、なぜこんなにもちっぽけなんだろう」過去と未来を見つめた、悠の変化と決断は。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  実はこの作品の文庫本は、私の大好きなイラストレーターのげみさんが手がけていることを知り、ヒボさんのレビューを読んで、いつか読んでみようと思っていた作品になります。でも、図書館には文庫本じゃなくて単行本しか所蔵がなかったのですが、ブクログの登録は文庫本で敢えてしたいと思います。

     この作品は、東日本大震災の被災者とその家族の物語です。被災地出身の悠子は都内で生活していたために被災は免れましたが、地元で暮らす両親、妹家族、親戚、友人は被災し、その犠牲になった人もいて…。悠子とその妹の夏子、そして2人の母である都の視点で描かれるストーリーには、苛立ち、葛藤、悲しみの感情もありながら、優しさや心遣い、あたたかみ、希望といった感情も感じることができます。これが、浅葱幕の「青と白」を思わせ、故郷の海と空と波と雪と白鳥の青と白を感じさせるんでしょうね…。

     あたりの前の日常が一瞬にして崩れても、被災地にも被災を免れた地域にも同じように時は流れる…。東日本大震災の発災から13年、そして能登の震災からは2カ月…この時期に、この作品を読めてよかったと思います。ヒボさん、ありがとうございました。

    • ヒボさん
      かなさん、3.11今日読むべき1冊でしたね。
      13年たった今も避難を余儀なくされている人々がいる。
      何も出来ませんが、忘れずにいたいと思いま...
      かなさん、3.11今日読むべき1冊でしたね。
      13年たった今も避難を余儀なくされている人々がいる。
      何も出来ませんが、忘れずにいたいと思います。
      2024/03/11
    • かなさん
      ヒボさん、こんにちは!
      単行本の表紙は「浅葱幕」が絵が描かれています。
      ヒボさんのおかげで、よい読書時間を持てました。
      ありがとうござ...
      ヒボさん、こんにちは!
      単行本の表紙は「浅葱幕」が絵が描かれています。
      ヒボさんのおかげで、よい読書時間を持てました。
      ありがとうございます。
      2024/03/12
  • 当たり前だった生活が突然崩れたとき、あなたは何を思い、優先し、どう行動するでしょうか?
    その戸惑い、怒り、悲しみ、そして変化を描く、これは、あなたのすぐ隣にある物語。
    (帯より)

    東京在住の悠子:兼業作家としてぎりぎりの生活を送る。実家にはあまり帰らないアラフォーの未婚、非正規の女性。
    悠子の母親・都:地元仙台で、女が家庭を守るという古風な考えで生きる。悠子の生き方が常に心配な母親。
    悠子の妹・夏子:東京へ行った姉に代わり家を継いだ。ふらふらしている姉には微妙な感情を持つ。

    そんな3人が東日本大震災を経て変わっていく変化とは。

    青と白とは、悠子の心の色を表しています。
    青は、故郷や夢、希望を意味し、白は、現実や孤独、苦悩を意味します。
    仙台から上京して作家を目指す女性の悠子の物語。
    悠子は、青と白の間で揺れ動きながら、自分の色を見つけようとします。
    この小説は、東日本大震災を背景にして、悠子の過去と現在、家族との関係、作家としての挑戦を描いていて、穂高さんの筆力は素晴らしく、悠子の感情や成長がリアルに伝わってきます。
    悠子の物語は、私たちに生きることの意味や価値を問いかけてくれます。
    心に残る感動的な物語。

    <あらすじ>
    青と白という色をモチーフにして、悠子の心情や成長を描いています。青は、悠子の故郷や夢、希望を表しています。白は、悠子の現実や孤独、苦悩を表しています。青と白は、対照的な色ですが、同時に調和する色でもあります。悠子は、青と白の間で揺れ動きながら、自分の色を見つけようとします。

    30代後半の悠は、アルバイトをしながら空き時間に原稿を書く駆け出しの作家。仙台を出て東京で一人暮らしを続けるが、ぎりぎりの生活を送る。そんな悠の日常は、震災を境に激変した。非常時だとはしゃぐ同僚、思わぬ人からの気遣い、そして、故郷の家族の変化。「私は、なぜこんなにもちっぽけなんだろう」過去と未来を見つめた、悠の変化と決断は。

    内容(「BOOK」データベースより)

    三十代後半の悠子はアルバイトをしながら原稿を書く駆け出しの作家。仙台を出て東京でひとり暮らしを続けるが、ぎりぎりの生活を送る。そんな彼女の日常は、震災を境に激変した。非常時だとはしゃぐ同僚、思わぬ人からの気遣い、そして故郷の家族の変化。「私は、なぜこんなにもちっぽけなんだろう」過去と未来を見つめた、悠子の変化と決断は。

    著者について

    穂高明
    一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    穂高/明
    1975年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。2007年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

    • かなさん
      ヒボさん、おはようございます(^^)
      こちらの作品の表紙、
      あの、げみさんが手がけてるみたいですね♪
      なんかそれっぽいなかぁ…って、調...
      ヒボさん、おはようございます(^^)
      こちらの作品の表紙、
      あの、げみさんが手がけてるみたいですね♪
      なんかそれっぽいなかぁ…って、調べてみたらそうでした!!
      内容も興味深い…読んでみたくなりました!!
      2023/11/18
    • ヒボさん
      かなさん、おはようございます♪
      なんですとーっ‼(•'Д'• ۶)۶
      全く気づいてませんでした...

      げみさん大活躍ですね(*^^*)

      ...
      かなさん、おはようございます♪
      なんですとーっ‼(•'Д'• ۶)۶
      全く気づいてませんでした...

      げみさん大活躍ですね(*^^*)

      辛い記憶を思い出しますが、読んでよかった作品ですよ。
      機会があれば是非‪(っ ॑꒳ ॑c)
      2023/11/18
  • 穂高明『青と白と』中公文庫。

    これまでの穂高明のほっこりした作品とは作風が大きく異なることに驚いたのだが、仙台市出身の穂高明だからこそ、このようなリアリティあふれる震災小説を描くことが出来たのだろう。登場人物のそれぞれが胸に抱く生き残ったことへの自責の念と、再生への想い、深い悲しみ、怒りを強く感じた作品であった。

    仙台市出身で東京在住の悠子は作家の傍らアルバイトをこなしていたが、あの東日本大震災で津波により破壊された故郷を目にし、同時に大切な故郷の親戚や知人を喪う……

    タイトルの『青と白と』は浅葱幕のことだったのか……

    作中のリアルな描写に、あの時の哀しい記憶が呼び起こされた。余震の続く真っ暗な部屋でラジオが伝えた信じられないニュース……「仙台市若林区荒浜で二百から三百体の遺体」、「陸前高田市は壊滅した模様」……一体、誰がこんな悲惨な現実が起きると想像しただろう。

    また、これも作中に描かれているのだが、東北地方が大地震と大津波、原発事故で苦しんでいる最中に、一部の心無い輩が信じられない発言をしたり、笑ったり……悲しかった。岩手県産の米を『怪しいお米 セシウムさん』と放送したのは確か東海テレビ。所詮、震災なんぞは格好の報道ネタに過ぎず、他人の不幸は蜜の味ということなのだろう。

  • 2019.05.08~05.09

    きっと、被災地の方々の本音なんだろうと思う。
    遠くから「絆」だ「復興支援」だと言っても、何の役にも立たない。本当に必要なものって、なんだろう。2020オリンピックでないことは確かだな。

  • すごくリアリティのある小説だった。
    作家さん自身の想いが伝わる作品だった。

  • 東日本大震災をテーマにした話。
    何を見てどこに惹かれてこの本を“ほしい本”のリストに入れたのか全く思い出せないのだが、こういう感じの話だと思っていなかったことは確か。

    あの日あの時間、私は大阪の会社の居室にいて、吊ってある蛍光灯が揺れるほどの揺れだったがそれ以上のことはなく、家に帰ってからテレビで事の大きさを認識しはしたものの、唯一の気がかりは福島に住んでいる弟の安否だけで、その無事が分かってしまえば最早テレビの前の傍観者でしかなかったと思う。

    そうした私にとっては、仙台出身の、主人公には自分自身をかなり投影しているという作者が、葛藤しながら揺れている感情をむき出しにしながらも小説に作り上げた作品に対し、まともに向き合うのはかなりきつかったというのが正直な感想。
    心動かされる場面も多々あったが、そうしたことも含めて簡単に何か語って良いのかという思いが引っ掛かるばかり。

    この作者、アンソロジーの中の短編を除けば初めて読んだのだが、こういう特殊な作品でなく、先に別の作品で知っておきたかったと思った。

    2020.10.18追記 「おすすめ文庫王国2020」のエンターテインメント部門の第1位だったのでした。

  • 故郷仙台を出てひとり暮らしを続けながら駆け出し作家として頑張る悠子。生活は苦しくも夢を追う中、彼女の日常は突然崩れ去る。その時、彼女の決断は?

  • 震災が絡む小説は読まないようにしてきた。被災地の外からの、自己満足とか押し付け感満載の「絆」とか音楽の力で元気にするみたいな胡散臭さが嫌いだし、逆に、被災した側からの「どうせわかりっこない」「所詮他人事でしょう」的な言われようにも抵抗があるから。

    だからこの作品を読みながら終始モヤモヤしていた。何かをしようとしても、逆に何もしなくても彼らは被災してない外側にいるの私たちを冷めた目で断罪するのだと思うと、もう何もできないし、何をすることも思うことも許されないのだなと思う。

    そうやって他人を切り捨てて、内にこもって、自分を責めて、そんな姿ばかり描かれても、経験していない人間の想像力は現実に遥かに及ばず、両者の距離は広がるばかり。

    ということで、この作品は私には響かなかったけど、作者の柔らかく心に触れてくるような文章が好きだし心地いいので、次は震災以外の作品を読んでみたいと思います。

  • 東北大震災をめぐり、東京に住む小説家の姉、仙台で不動産会社に勤める妹、津波で死んっだ叔母、など震災で傷ついた心や絆を取り戻していく内容だが、とても心に響く文体で、今年最後に良い本に出会えてよかった。

  • 震災、震災後について、もちろん見聞きはしてきたけれど、こんなに嗅覚、触覚、心の襞に働きかけられたのは初めてだった。

    涙が出そうになるところもたくさんあるのだが、それ以上に心を抉られるような感覚で読んだ。

    『戸田悠』の書くものは心に染みるものだろう…

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

穂高明の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×