黒死病-ペストの中世史 (中公文庫 (ケ8-1))

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069145

作品紹介・あらすじ

【今こそ過去からの警鐘を聞け!】

ある日、人びとは「この世の終わり」が来たことを知った――

14世紀の欧州を覆い尽くした史上最悪の疫病に、

あらゆる角度から迫った克明な叙事詩。


目 次

はじめに

第一章 オイメダム――さまよう病

第二章 「やつらは怪物だ、人間ではない」

第三章 恐怖の跫音

第四章 シチリアの秋

第五章 ヴィラーニかく記せり

第六章 テンプル騎士団総長の呪い

第七章 新しいガレノス医学

第八章 死という日常風景

第九章 頭を西に、足を東に向けて

第十章 ユダヤ人大虐殺

第十一章 「ああ、信仰薄き者たちよ」

第十二章 始まりの終わり

後 記 黒死病はペストではなかった?

感想・レビュー・書評

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  • そんな学術的ではなく年代記の趣きが強め
    授業で使えるレベルの史料収集にはなる

  • ある日、人びとは「この世の終わり」が来たことを知った――十四世紀の欧州を覆い尽くした史上最悪の疫病に、あらゆる角度から迫った克明なる叙事詩。

  • 黒死病で人口の数割が死亡した結果、人手不足で賃金が高騰し、それが機械技術の発展を促す、また無力を露呈した教会の権威が失墜し、事象への科学的なアプローチが重視される等々、疫病の大流行を契機に、社会構造の変化や文明の進展が進んだ経緯は、人類に大きな示唆を与えている。ペスト来襲前夜のヨーロッパ都市の不潔の楽園ぶりは、読んでいて身の毛がよだつほどで、猖獗の土台が整っていた状況が見て取れる。翻って2020年現在叫ばれている所謂「ニューノーマル」は、果たして2019年までの常態を不潔化するのだろうか。それとも20年は一時的な狂態として記憶されるのだろうか。異常な心理状態化における、差別や愚行だけは古今東西しっかり共通しており、感染症はいつか駆逐出来ても、人が潜在的に持つ悪に付ける特効薬の無さを感じた。

  •  1347年からヨーロッパを襲った黒死病に関する一代絵巻的な書。中世ヨーロッパの終焉を齎らしたとも言われるペスト流行時の状況を、主にイタリア、フランス、イギリスについて、同時代人による年代記や書簡、回想録といった文献資料に拠って、ビビッドに描いていく。

     特に、第十章「ユダヤ人大虐殺」の章は、読んでいて苦しくなってきた。人は見えないもの、理解できないものに対して耐えきれず、何かに原因を求めようとする。反ユダヤ感情の下地があったところに、原因が分からない恐怖が火を付けて、ユダヤ人が悪者にされてしまった。コロナ禍の今、幸いなことにそこまでの事態にはなっていないが、心すべきことであろう。

     ただ、そのような悲惨な中にあっても、患者の看護を始め、社会秩序を保つために義務を果たした沢山の人々がいたことに勇気付けられた。

     

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著者プロフィール

ジョン・ケリー

ボストン大学を卒業後、ニューヨーク大学で修士号を取得。科学・医学ジャーナリストとなり、各種雑誌に寄稿する傍ら、大学時代から興味のあったヨーロッパ史の研究を続ける。The Graves Are Walking: The Great Famine and the Saga of the Irish People などの書があり、物語のように読めるノンフィクション作品として高く評価されている。



野中邦子

東京生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。出版社勤務の後、フリーの編集者を経て、現在は英米ノンフィクションの翻訳に従事。翻訳グループ「牧人舎」所属。訳書にジョナサン・フィリップス『第四の十字軍』(中央公論新社)、アントニア・フレイザー『マリー・アントワネット』(早川書房)、エリック・ラーソン『悪魔と博覧会』(文藝春秋)他多数。

「2020年 『黒死病 ペストの中世史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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