- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122072312
作品紹介・あらすじ
「日本最凶」の古典怪談、ここに甦る……。
ある地方の古着屋が入手した、青海波模様の縮緬布団。以来、その周囲では血塗れの美女が出現する怪現象が続発し、ついに死人まで――読む者を虚実のあわいに引きずり込む、独特の恐怖世界。日本怪談史上屈指の名作として読み継がれる表題作ほか、現代ホラー界の先駆的存在である著者初の怪談ベスト・セレクション全七篇。
【目次】
Ⅰ
蒲団(1937)
棚田裁判長の怪死(1953)
棺前結婚(1952)
Ⅱ
生不動(1937)
逗子物語(1937)
雨傘の女(1956)
帰らぬ子(1958)
〈解説〉朝宮運河
感想・レビュー・書評
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好きなホラー作家が新しくできた!
岡本綺堂作品が好きであればこちらも好きなのでは。私は情景描写から怪異のあらわれ方がとても頭の中に映像として現れる。
昔の話になるが、読んでいるうちに、自分が見たかのような映像が浮かんでくるほどの怪談はなかなかない。
あと、ホラー というより怪談、の方がしっくりくる。
蒲団 定番の怪談という感じだが、湿気の感じるような雰囲気がよい。
逗子物語 映画を見ているようで、坊ちゃん一行の映像が浮かぶ。
帰らぬ子 胸に迫る前半、後半の信彦に対する感情の起伏があたたかくも時にコミカルにも感じた。 -
『逗子物語』は以前『怪異十三』で読んだことがあったけど、それ以外は今回初めて読んだ。
表題作の『蒲団』が一番良かった。
怖さはそんなにはないけど話として面白かった。
他の話は盛り上がるポイントがぼんやりしていたりして冗長に感じてしまった。 -
橘外男の日本を舞台とした怪奇小説を集めたもの。執筆は1937(昭和12)年から1957(昭和32)年。
初めて聞く名前の作家で、全然知らなかったのだが、江戸川乱歩と生年が同じらしい。
巻頭の『蒲団』を読んで衝撃を受けた。昭和12年の作品などとは信じられない、実に素晴らしく、傑出したホラー短編なのだ。これこそが名作というものだろう。
感動しつつ、2つめの「棚田裁判長の怪死」を読んでみるとこちらは私には面白くなく、良くなかった。しかし他はなかなか良く、長めの「棺前結婚」「逗子物語」は面白かった。これらに出てくる幽霊は人を取り殺すような悪意の存在ではなく、「善い霊」なので、恐怖メインではないが、なにがしかの感情を喚起する優れた幻想小説だった。
文章は完璧というには遠く、ときどきひっかかる部分もあるものの、「語り」は実に上手く、読者を巧みに物語ストリームに乗せてゆく。人物像や台詞、情景等にはそれなりにリアリティがあり、何から何まで人工臭があってあからさまに作り物めいた江戸川乱歩の世界とは一線を画し、勝れている。
橘外男はこのような怪異小説をを中心にたくさん書いた小説家らしく、これからちょっとこの作家の本を(古書で)集めようと思う。 -
読みづらい……表題作はまあまあ怖かったですが、そのあとの短編は「それで?」という印象しか残らなかったです。
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50294894 -
古典
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橘外男の怪談を集めた文庫オリジナルの短編集。
表題作の「蒲団」は格安で手に入れた蒲団に纏わる話。よく出来た怪談ではあるが、今読むとまとまり過ぎな印象。
印象的だったのは「棚田裁判長の怪死」と「棺前結婚」の2作。
「棚田裁判長の怪死」ははっきりした説明も解決もない実話怪談の先駆けともいえるような話。「棺前結婚」は純愛ホラー。ホラーというより変格物? -
「”日本最凶”の古典怪談、ここに甦る」とオビに書かれた短編集。確かにどの短編も怪談ではありますが、訥々とした語りや、静謐な風景描写、死者と生者の気持ちの通い合いなどがなんとも心地よく、怖いとか最凶という感じは全くしませんでした。最後に収められた晩年の短編『帰らぬ子』は、なぜ著者が自作のなかに死者たちを登場させ続けてきたのか、その理由が吐露されたような作品。
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虚実のあわいに読者を引きずり込む、独特の恐怖世界――日本怪談史上屈指の名作である表題作他全七篇を収録した、著者初の怪談傑作選。〈解説〉朝宮運河