滅びの前のシャングリラ (中公文庫 な 81-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122074712

作品紹介・あらすじ

「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」。学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして――荒廃していく世界の中で、人生をうまく生きられなかった人びとは、最期の時までをどう過ごすのか。滅びゆく運命の中で、幸せについて問う傑作。〈巻末対談〉新井素子×凪良ゆう

感想・レビュー・書評

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  • 凪良ゆうさん著『滅びの前のシャングリラ』の概要と感想になります。

    『ぼく』から始まり、『あたし』で終わる物語

    地球に小惑星が衝突すると世界中で話題となり、世界は日に日に混沌へ包まれていった。『ぼく』こと江那友樹は幼き日に出会った藤森さんに恋をして、高校生になっても美人な藤森さんを追いかけて東京へと旅をする。終末が近づく旅の中で江那や藤森、そして多くの人たちは最期の時まで幸せを探し求めていく。

    感想です。
    終末というと伊坂幸太郎さんの『終末のフール』が浮かびますが、本作は宮野優さんの『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』に近い印象を私は受けました。ディストピアだけれども小さな希望を抱いて最期まで生きようとする人々の姿、凪良ゆうさんらしい青春の描き方は世界観に浸りつつも最期の続きを求めてしまいますね。『汝、星の如く』は読みかけですが本作は様々な感情に共感できて好みでした!!

  • 一ヶ月後に地球が滅びてしまう世界での
    最期の一ヶ月を4人の視点から描いた作品。(巻末の掌編小説を含むと5人)
    精緻な心理描写に心動かされました。

  •  一か月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる。人生に不器用な5人は、最期の時までをどう過ごすのか。

     エピソードごとにそれぞれの視点で物語が進み、それぞれの人生の苦しみを味わいながら、最後の結末を迎える展開でした。

     人生の終わりがはっきり見えることで、改めて生き方を見つめ直していく人たちと、自暴自棄に走る人たち、自分だったら、どちらになるのか、深く考えさせられました。

     おそらく、どちらかの側に居続けることは難しく、そのジレンマに苦しむのではないでしょうか。

     今の私は、命いっぱいに人生を歩んでいるのか、問い続けていきたいです。

     また、ありきたりかもしれませんが、苦しいことがたくさんある中で、今あるちょっとした幸せを見逃さずに大切にしていきたいと思いました。

  • 伊坂幸太郎さんの終末のフールを思い出しました!

    終末のフールは8年後に小惑星が衝突すると発表された5年後の物語。
    本作は1か月後に小惑星が衝突すると発表された物語。

    現実の世界では人類滅亡の危機は発表されないのではないか?と考えてしまう。何故なら働く人々の生活意欲が落ちて社会が機能しなくなる事。多くの人が自暴自棄になり犯罪が横行する事。そして、未来に絶望して多くの人が自殺してしまう事は、仮に一週間後に世界滅亡の事実を政府が知っていても、国民にその事実を伝えるメリットは無いと思われる・・・

    本作の主人公はリレーのように繋がっていきます。

    最初の主人公は小太りの高校生で同じクラスのスクールカーストが高い生徒に虐められています。
    しかし、同じクラスのハイカーストの女の子に恋をしています。そして、その子と小学生の時にある約束をしており、そんな折に世界の終わりが告げられるニュースが発表されます・・・
    そして、2章の主人公はヤクザです。
    なんでも、暴力で解決しようとする暴力マンです・・・

    凪良ゆうさんを読んだのは初めてですが、
    他の作品も読んでみたいと思いました!!!

  • 一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる。
    そんな宣告の元、学校でいじめを受ける友樹目線から始まり、人を殺したヤクザの信士、そして恋人から逃げ出した静香、最後は歌姫の路子の視点で最期の時をどう過ごすのかを描いていく。
    少ない登場人物をうまくまとめ上げており読みやすく、しかも、世界の終わりを受け入れる結末であって、さらに、世界がちゃんと滅びるのに衝撃を受けた作品だった。
    価値観的には静香が、私たち幸せそうに見えるの?っと逆に問いかけるところが、最後になって幸せであったと感じられる一生を過ごせて羨ましいと思えた。

  • ☆4

    世界が滅亡するなら、自分ならどのように最期の時を過ごすのか…深く考えさせられました。
    今まで読んだ凪良ゆうさんの作品とはまた違った雰囲気(殺伐とした場面が多く)だったので、慣れるまで少し時間がかかってしまったのですが、いつの間にかどんどん作品の世界に惹き込まれており、読んで良かったと思える作品でした。

  • ん~。
    いまひとつ、のめり込めなかったかな。
    確かに、小惑星接近につれて世界は荒れてゆくのだけど、なんというか、真実味に欠けて。
    そもそも本作は世界の荒廃の様子より、人の心の移り変わりに焦点を当てているのだから、私の方こそ読み方を誤ったのかもしれない。

    いや私は、人足るもの、迫り来る事態を目の当たりにして、もう少し愚かに取り乱すのではないかしら?と思ったのだ。
    でも読み終えた今になって少し思うのは、登場人物たちは皆、どこか人生に諦めていた人。
    そんな彼らであるからこそ、取り乱すなんてしなかったのかもしれないね。
    元から人生への期待値が薄かったんだもの。

    友樹、雪絵、信士、静香、路子たち登場人物は人生を上手く生きられずにいたけれど、荒廃してゆく社会を前に、自分の大切なものを守ろうと一筋の光を見つけ出してゆく。
    これが普通の世界なら、うっすらと射し始めた光に希望を感じてハッピーエンドなのだけど、
    この作品は違う。
    同日に滅びる運命にある人々の話なのだから。

    人は不思議な生き物だ。
    1ヶ月後、1週間後、いや明日滅びると分かっていても、瞬間瞬間に幸せを感じることができるのかもしれない。
    (現実ではないから本当のところは分からないが、多分、そうなのだろうと思いたい)

    中でも、静香さんは好きだったな。
    強くて優しくて、口ぶりが粗っぽくても温かい。
    だから「エルドラド」の章が一番好きだった。
    「間違わないやつなんていない。それを許しすぎても、許さなすぎても駄目になる。」
    ト書きにあった静香さんの心の声が印象的だった。
    この言葉は、生きている私達全てに当てはまると思えたからだ。

    本書には、単行本『滅びの前のシャングリラ』の初版限定特典付録だった「イスパパン」が収録されている。
    ラスト1行の雪絵の言葉が、計り知れない恐怖や全ての感情を越えた望みなのだと思うと、深い余韻がもたらされた。

  • 終わりを目前にすると、人は急に、今まで要らなかったものですら、何もかも惜しくなるのだから、わがままだけれど愛しい。
    私だったらどうしたいだろうか。

  • ひと月後に地球が滅亡する世界で
    最期のときまでを過ごす人たちの話。
    普通に生活しようとする人、取り乱す人。
    襲う人に奪われる人。
    最期に、やりたかったことを果たそうとする人。などなど。

    印象的だったのはどんな風に生きてきた人たちも
    それぞれの「納得の仕方」を見つけること。
    怖くても、信じられなくても、共感されなくても
    それぞれの胸のうちで折り合いをつけていく姿。

    この「ひと月」というのが絶望するには長く
    前向きになるには短い期間に感じる。

    私が購入した文庫本には
    ねえ神さま、どうか、薔薇色の未来がどこかにあるのだと信じさせて。
    という作中の言葉が書かれたしおりが挟まっていた。
    裏には元気のない一輪の薔薇の絵。
    滅びゆく世界で、何となくの希望を祈る気持ちのようで何度も眺めてしまう。

  • 凪良ゆう作品はほんとに読みやすい。
    言葉もわかりやすく、情景がしっかりと頭に入る。

    どうせ終わるからではなく、せっかく終わるからと思っていればこその登場人物たちの行動だったと思う。
    友樹と路子の変化に私の心も踊らされた。
    終わるとわかっているからこそ生きたいと願い、だからこそ目的を持って行動している。
    遅かれ早かれ人はこういう日がくるわけで、そんな時自分がどうしたいなんて考える事は出来ないけど、それを考える必要がないというなら私は幸せかも。

    「イスパハン」より抜粋
    離れていると愛が勝ち、同じ家で暮らしていると嫌いが勝つ。藤沢さんの一言だけど、これって十分素敵な家族だと思うけど。

    終末だけど全然悲観的になる事はなく、人間らしさが1ヶ月という期間を設けたことで明瞭になっている。

    初めて読む感じの1冊でした。

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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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