- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130131520
作品紹介・あらすじ
「未知との遭遇」の多様な思考実験の蓄積があるSF(サイエンス・フィクション)作品を渉猟し,著者自身によるフィールドワーク,文化人類学,霊長類学,相互行為論,分析哲学などの知見を縦横無尽に参照して,コミュニケーションの成立条件を考察する.
「宇宙」とはすなわち,いまだわれわれの手の届かない場所のことを指している.しかしそこに,「人」すなわち何らかの意味でわれわれの理解可能な存在がいるというのである.「宇宙・人」を考えるということ自体がまさに,想像できないことを想像しようとする営為なのだ.さらに言えば,よりわれわれに身近なはずの「他者」さえも,同様な構造を持っている.「他・者」とは,私の手の届かない「他」であると同時に,石ころなどの「物(もの)」とは異なる,私と同質の「者(もの)」でもあるのだ.(「プロローグ」より)
感想・レビュー・書評
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本筋とは少しずれるがエピローグで、仮に宇宙人との接触が出来たとしても、宇宙人がこちらに興味を持ってくれるとは限らない、こちらとのコミュニケーションを志向してくれるとは限らない、という可能性も示唆されておりなるほどなと思った。
せっかく見つけた宇宙人にシカトされる地球人、というのは何とも面白い絵だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宇宙人との出会いの投射から人間同士のコミュニケーションにおける相互行為論7日と思っていたが宇宙人との出会いという点に最後まで重きをおいていたことが予想を外れた.けどまあ面白かった.
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BRUTUS202215 評者:磯野真穂(人類学者)
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見知らぬものと出会ったときに心すること、対処法的なものも期待してしまったのだが、それは的はずれでした。
SF論としておもしろかった。
確かに、SFもSETIも地球観点からしか地球外生命を想像できない、という指摘は、もっともだなぁと思った。もってるものからしか想像できない、とは常々思う。だってもってないんだもん。 -
SF小説を読むときの心構えを知ることができるかと思ったのがきっかけ。本書は哲学の論文なのだろう、言葉の意味を確認しながら読み進めたので、読了まで時間がかかった。難しい本かと言われれば、少し難しいと答える感じの内容である。
宇宙人とファースト・コンタクトするときに、どのような対話(話ではないかもしれないが)がなされるのか、きっちりと論理を構築しながら、その場を経験したときの学術的な現象が分かる。宇宙人が出てくるようなSF作品(映画も含めて)が好きなら、読んで損はない。また、宇宙人だけではなく、個人的には世代が異なる人々や外国人との接触において、自分がどのように振る舞えば対話ができるかの参考にもなった。
将来的には、シンギュラリティ後のAIと対話する時代が来ても本書は役に立つだろう。ただし、あくまでも論理的であり、実践的ではないので、実際に宇宙人に出会ったら、どのような行動が正解なのかは不明のままだ。 -
著者:木村大治
【版元】
価格:2,800円+税
出版年月日:2018/09/26
ISBN:9784130131520
4-6 304ページ
「未知との遭遇」の多様な思考実験の蓄積があるSF作品を渉猟し,著者自身によるフィールドワーク,文化人類学,霊長類学,相互行為論,分析哲学などの知見を縦横無尽に参照して,コミュニケーションの成立条件を考察する.
―――「宇宙」とはすなわち,いまだわれわれの手の届かない場所のことを指している.しかしそこに,「人」すなわち何らかの意味でわれわれの理解可能な存在がいるというのである.「宇宙・人」を考えるということ自体がまさに,想像できないことを想像しようとする営為なのだ.さらに言えば,よりわれわれに身近なはずの「他者」さえも,同様な構造を持っている.「他・者」とは,私の手の届かない「他」であると同時に,石ころなどの「物(もの)」とは異なる,私と同質の「者(もの)」でもあるのだ.―――(プロローグより)
〈http://www.utp.or.jp/book/b372462.html〉
【目次】
プロローグ 宇宙・人
I 想像できないことを想像する
第1章 宇宙人という表象
1 寓意としての宇宙人
「あいつは宇宙人だ」/哲学と火星人
2 宇宙人表象の歴史的変遷
「人間もどき」たち/歴史上の宇宙人譚/サイエンス・フィクションの誕生/SFと人類学/UFO表象
3 SETIにおける宇宙人
SETIの歴史/ドレイク方程式/SETIと人類学
第2章 投射――想像できないことを想像するやり方
1 人間というピボット
2 さまざまな引き延ばし
3 窓の向こう側
4 となりの宇宙人
出会い/「宇宙人」という支持点
第一の幕間 双対図式――投射と「枠」
II 見知らぬものと出会う
第3章 コンタクトの二つの顔
1 自然コード
2 関係に規則性をつくる
コンとポン/挨拶と規則性
第4章 「規則性」の性質――不可知性・意外性・面白さ
1 シャノン‐ベイトソンのバラドックス
2 アルゴリズム的複雑性
規則性を測る方法/計算不可能性/規則性をめぐる二つの困難
3 内向きの探索の困難――「別種の説明」がありうる
人類学における「説明」と「実践」/技術やゲームにおける「別種のやり方」/生命現象における「別種のやり方」
4 外向きの探索の困難――「意外な構造」がありうる
行為に対するタグづけ/言語ゲーム/ゲームの面白さ
5 粒度と階層の問題
構成要素の粒度/プログラムとパターンの階層
第5章 規則性のためのリソース――コードなきコミュニケーションへ
1 「リソース」の概念
道具性/「探索」の構え
2 コードというリソース
コードをリソースに還元する/「使い方」としての言語/言語は認識を決定するか?
3 身体というリソース
ベジタリアンの傾斜/宇宙人の類似性/動物と出会う/身体による理解の方法
4 「自分」というリソース
第二の幕間 それでもなお相互行為は可能か
III 枠と投射
第6章 ファースト・コンタクトSFを読む
1 友好系
『最初の接触』/『宇宙(あま)翔けるもの』
2 敵対系
『バーサーカー』/『エンダーのゲーム』
3 わからん系
『ソラリス』/『最悪の接触』/『戦闘妖精・雪風』/半可知な他者
第7章 仲良く喧嘩すること
1 トムとジェリーのパラドックス
2 翻訳の不確定性と寛容の原理
3 会話の格率と関連性の原則
4 「このようにやれ」と「とにかくがんばれ」
第8章 枠・投射・信頼
1 長い投射と短い投射
2 投射を定める枠・枠を探り当てる投射
3 生命と投射
エピローグ 接触に備えたまえ