歴史学のアクチュアリティ

制作 : 歴史学研究会 
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130230650

感想・レビュー・書評

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  • 2012年12月に開かれたシンポジウムの原稿化、プラス新稿、座談会で構成。本書でもっともスリリングなのは、「まえがき」や松沢論文でも取り上げられているように、栗田禎子と岸本美緒の「違い」だろう。

    栗田は現実へのコミットメントにアクチュアリティの拠点を見いだすのに対し、岸本は日常生活にアクチュアリティの足場を見いだそうとする。松沢のことばを借りれば「栗田は、日本社会に置かれる客観的情勢から客観的課題を導出するのに対し、岸本がアクチュアリティなるものは歴史家の実践行為の結果としてしか自覚されない、という構えをとる」(p.138)という。

    ちなみに松沢は岸本の立場に親近感を示すし、そのことは僕も理解できる。のだけど、栗田のような「たたかいの記憶の伝承」という構えにも、一定のシンパシーをもってしまう。栗田のような立場の人は、「それを貫き通してほしい」という気持ちかもしれない。というよりも、岸本的立場を承認するがゆえに、栗田的立場も否定できない、というべきだろうか。栗田のいう現代史的実践、現実への積極的なコミットメントが、岸本のいう日常生活における実践的行為=アクチュアリティである可能性だって、あるだろうし。

    本書は、「現代社会への影響力を減じた歴史学」を考える研究者にとって、今どんな議論がなされているのかを知るに重要な問題をいくつか提起している書であることは間違いない。ひとつ不満をいえば、史料保全運動の問題が無いのは、果してそれが「歴史学」として認められていないからか…という思いはあるのだが。

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