トランプ財政とアメリカ第一主義

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130403139

作品紹介・あらすじ

トランプ共和党政権の「アメリカ第一主義」政策と、その原点となったアメリカ経済社会の惨状という視角から、トランプ時代の財政と経済政策を考察する。トランプ財政の本質を、世界とアメリカ経済社会の構造変化という視野の中で見極めることを目的とする。    

感想・レビュー・書評

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  • トランプ政権期の「アメリカ第一主義」政策と新型コロナウイルス対策を取り上げた本。議会資料や統計等により,トランプ政権の政策の特徴を明らかにしようとしている。

    「アメリカ第一主義」政策は減税,「小さな政府」,貿易政策を軸とする。それらの中心的意図は,Jobの創出。「Jobは,単なる『雇用』ではなく,それぞれの国民が自立的かつ自律的に勤労する機会・場所である」という(31ページ)。

    減税については,トランプ政権発足前から連邦議会で議論されており,その既定路線をトランプ政権が引き継いだことが示されている。目的は投資と経済成長によるJobの創出。共和党は法人税減税や国際課税の改革による投資の促進を強調するが,民主党は個人所得税減税によるミドルクラスへの対応を強調。減税によって財政収入が減少し(対GDP比)財政赤字が拡大した。

    「小さな政府」政策についてはアメリカ型福祉国家の諸制度を分析していた。年金,医療,公的扶助のいずれの制度も制度設計にJobの考え方が関わっていることが説明されている。福祉国家財政の多くを占める年金と医療については社会保障税の納付という形で就労の記録が関わっているため,減税等の財源を捻出するための抑制・削減は容易にできない。そのことを「小さな政府」の「硬い骨格」と指摘する。そして,EITCやSNAPをとりあげて,Jobを基盤とした社会保障から漏れた貧困層や低所得層に対する公的扶助でさえも就労要件という形でJobとのつながりがある場合があることも説明される。

    新型コロナウイルス対策はPPP融資(雇用維持のための融資プログラム;返済免除付きで補助金となる)や失業保険給付の拡充などが取り上げられている。同政策はJob創出による成長軌道への復帰という文脈の中に位置づけであった。コロナ禍は緊急事態であり連邦政府の権限が大きくなったが,平時の分権システムへの復帰が模索される様子が公聴会の分析からうかがえた。

    全体を通して,保守派である共和党とリベラル派である民主党のそれぞれの政策論がその時々でぶつかりつつも,両党が調和点・均衡点を模索して。Jobを基盤とした小さな政府のアメリカの経済社会システムが成り立っていることが示されていた。

  • 東2法経図・6F開架:342.5A/Sh23t//K

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2023年 『トランプ財政とアメリカ第一主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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