〈知的〉スポーツのすすめ: スキルアップのサイエンス

著者 :
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130537001

作品紹介・あらすじ

頭を使って練習すれば、運動音痴でも上手くなる。コツと技を身につけて、もっとスポーツを楽しもう。東大教授が教える上達法。

感想・レビュー・書評

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  • 深代教授の著作の中では、最もオーソドックスにバイオメカニクスネタを解説している本。

    巧みさ・スキルについて、うまくなるための7つのルール
    1 反復:とにかく繰り返す
    ・疲労しすぎない程度に繰り返し同じ動作を行う
    2 目的意識:練習の目的を考える
    ・この動作を習得するのだという明確な目的意識をもって行う
    3 レミニッセンス:時には休みも必要
    ・集中的に練習した後の休息後に再開する
    4 オーバーラーニング:うまくいったら続ける
    ・うまくできたところですぐにやめてしまわない(脳の中の神経パターンの確実な構築)
    5 イメージ練習:練習していないときもイメージづくり
    ・実際に身体を動かさず、習得しようとしている動作を、自分があたかもおこなっているつもりになって、頭の中でイメージを描く
    6 転移:よい動作は応用してみる:正の転移(硬式テニスからゴルフと負の転移(バドミントンか9ら硬式テニス)
    ・運動学習において先の練習が後の練習に役立つように、プログラムを組み立てる
    7 フィードバック:結果をよくみて直す
    ・自分の動作自体や動作の結果に対する情報をもとに、自分が正しい動作をおこなっているかどうかを確認すること(モニターに映っている動作を動作者本人の筋感覚という主観におきかえる)

    走る、跳ぶ、投げる、打つ
    走る
    ・走動作丑の下肢三関節の回転力(発揮トルク)という力学的変数がスプリント走の本質
    ・常に大きく働くのが股関節。「高く」より「速く」上げる意識が重要(股関節を中心としたスイング動作)競歩ドリル
    ・接地中に股関節の伸展のみで身体を前方に移動させる(大殿筋とハムストリングス)
    ・振り上げ脚は股関節の屈曲だけで速く上げ。膝と足関節はリラックスさせる(腸腰筋)スキップドリル
    ・フライングスプリット:内転筋の強化と脚を前後にスイングさせる動作

    跳ぶ
    ・反動動作:主動作の前に一度逆方向に予備運動をおこなって、次に行う主運動をよりダイナミックにさせる主に働く筋腱複合体が一度引き伸ばされてから短縮する
    ①伸張反射の利用
    ②腱のバネ機構の利用
    ③筋自体の増強効果
    ④運動開始時の高い張力

    投げる:人間だけに与えられた動作
    ・オーバーハンド動作:
    ①ワインドアップ
    ②コッキング初期
    ③コッキング後期
    ④加速期
    ・ムチ動作と同様の「運動エネルギーの転移」(運動連鎖、竿の動き)=手が静止した後でもムチがもつ運動エネルギーは保存され、ムチの動きが手元から先端へ連続的に静止していく
    ・スナップ動作(手首の掌屈)の最後に手首を回内すること
    ・スナップ習得
    ・実際のムチを使う
    ・バットを用いたムチ動作
    ・シャドーピッチング
    ・真下投げ

    打つ
    ・反発係数の最も高い「スイートスポット」
    ・反発係数:二つの物体が衝突するときの衝突前と衝突後の相対速度の比
    ・スイートスポットにあたっていれば、インパクトで、グリップを握る必要はない
    ・スイートスポットをわざとはずすことで。ボールの回転をコントロールして、マグヌス効果によってボールの軌跡を変える

    骨格筋・動きの本質
    1)運動をコントロールする脳
    ・回路が変化した状態を維持することが「情報を記憶する」こと
    ・ニューロンの中を伝わる電気信号の伝導
    ・シナプスを伝わる科学信号の伝達
    ・動作の自動化

    2)骨格筋の構造
    ・筋は遅く縮んだ方が大きな力を発揮しやすくなる
    ・アキレス腱はほぼ膝の近くまで伸びている。腱が伸縮しても筋のように化学的エネルギーを消費しない
    ・関節可動範囲は3つの要素で決まる
    ①骨自体の可動範囲
    ②関節を保護する靭帯
    ③筋腱複合体の柔軟性


    3)動きにおける主観と客観
    ・ファインモータースキルとグロスモータースキル
    ・地球上にいる人間に加わる外力は、重力、抵抗、地面反力
    ・地面反力ベクトルと左右の足でいかにコントロールするかが力学的にみた
    運動の土台
    ・運動強度の低い動きほど末端の関節がパフォーマンスの決め手となり、ダイナミックな運動になるほど体幹主導になる
    ・ダイナミックな運動を構成する「動作の核」
    ①捻り:地面反力を受けて、骨盤と両肩を捻転させた後引き戻すことによって体幹で発揮しうるエネルギーを大きくする
    ②反動:主動作に先行して逆方向に動く「反動動作」によってパフォーマンスを高める
    ③ムチ動作:四肢の末端スピードを大きくすることでパフォーマンスを高める
    ・ダイナミックな運動動作は、「捻りと反動」を「体幹」で行ってより大きなエネルギーをつくり、それを「ムチ動作」で末端に流すことが基本である。

    ・関節トルク(回転運動に対応)と関節反力(並進運動に対応)(関節で骨と骨とが押し合う力)

    直立二足歩行は振り子。位置エネルギーと運動エネルギーの変換を繰り返しながら動き続けることができる
    ・歩行:転がる卵。至適歩行速度は毎分70-80メートル
    ・走行:弾むボール。

  • 面白いが実用性に乏しい。

    運動能力を解剖学や力学的に解説した本。

    良い本なのだが、これを読んでも能力向上しそうもないかな。
    理屈はわかるけど実践するのが難しいという意味で…

    リラックスするのは拮抗筋を働かせないため。
    これは凄くシックリきた。

    運動や身体の仕組みを理解して、運動能力を向上するための入門書としては素晴らしいと思いますよ。

    実践は難しいけどね。。。

  • 人間は生まれつき投げることができる動物なのでなく、投げる可能性を与えられた動物。
    人間が生存し続けてきたことに大きな役割果たすと推定。

  • 「じつはスゴい股関節」が面白かったのでこの本も読んでみました。わかりやすくて中々面白かったです。個人的には前著の方が好みでしたけどね。

  • 2012/07/26

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授/日本体育学会会長

「2019年 『スポーツでのばす健康寿命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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