漢字テキストとしての古事記 (Liberal Arts)

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130830447

作品紹介・あらすじ

本当の『古事記』と出会う。神話や伝承を書きとどめたのではない-漢字で書かれたことの意味を根本的に問う。

感想・レビュー・書評

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  • 外来の文字である漢字を使うことで、ようやく『古事記』という作品が成立したことの意義を、さまざまな実例を通じて解説している本です。

    著者はまず、7世紀から8世紀の日本において、漢字を用いて文を記すということが、どのようなしかたでおこなわれてきたのかということを説明します。そこでは漢文とともに、著者が「非漢文」と呼ぶ漢字テクストが存在しており、そうした文字環境のもとで『古事記』という作品が誕生したことが指摘されます。つづいて著者は、『古事記』の漢字テクストの実例を紹介し、その検証を通して、漢字を用いて表記することが『古事記』というテクストそのものの本質的な性格を規定していることを明らかにします。こうした議論を通じて著者は、漢字テクストである『古事記』の向こう側に、古くから伝承されてきた物語を見ようとすることが困難であると主張します。

    さらに著者は、散文と歌の表記のちがいに注目します。両者が異なる叙述をもつということが意味しているのは、これら二種類の叙述を並行したままに含んでいる『古事記』というテクストそのものが、伏線的な構造をもっていることだと著者は論じています。こうした議論を通じて、『古事記』というテクストそのものが「多声的」な読みかたをなされなければならないという考えが示されます。

    著者が東京大学で、入学したばかりの学生に向けた講義をもとにしているということで、読みやすい文章でつづられています。また、著者の『古事記』解釈の基礎になっている多くの具体例が示されており、著者の本のなかでは比較的わかりやすい内容だったように思います。

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著者プロフィール

<神野志>1946年和歌山県生まれ。東京大学大学院国語国文博士課程修了。現在、同大大学院教授。著書に「古事記注解」「古事記と日本書紀」などがある。

「1999年 『古事記の現在』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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