決定力を鍛える チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140812624

作品紹介・あらすじ

史上最年少の22歳で世界王座を奪取。IBMスーパーコンピュータと"世紀の対決"。15年間、世界チャンピオンのタイトルを保持。つねに世界中の話題をさらってきた王者カスパロフが、数々のトッププレーヤーとの対局を通して、意思決定者としていかに成長してきたかを語り、最高の判断を下すための考え方を披露する。勝負に磨き抜かれた思考プロセスに学び、意思決定力を鍛えよう。チェス史に残る名プレーヤーについて、カスパロフの解説つき。

感想・レビュー・書評

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  • ガルリ・カスパロフは、ユダヤ系のソ連人であり、15年もの間チェスの世界チャンピオンのタイトルを保持し続けた人物。その後、ソ連共産党員としてロシアでの政治活動にも従事。反プーチン派として活動していたが、スイスに亡命。

    1997年IBMのコンピューターディープブルーが当時の世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフを破った事で、チェスにあまり興味がない日本でも知られた存在に。確かに、日本ではチェスは然程ポピュラーなゲームでは無い。

    本著はこうした政治思想にページが割かれるのではなく、盤を挟んで対峙する真剣勝負への心構えについて、自己啓発本のような仕立てが構成される。事前準備が重要だとか、世界で活躍する一流選手、著名人について、トーマスエジソンはとてつもない努力のできる人物だったし、マイケルジョーダンは誰よりも朝早くから来て練習し夜遅くまで残っていたなど。

    反プーチンという事でも注目されても良い気がするし、AIの更なる進化において、人間が到達したゼロサムゲーム、パターン学習の限界については今でこそ興味深い気もする。アルファ碁もそうだが、コンピューターが極めたボードゲームを人間同士が楽しむ姿はシュールである。その弱小同士の勝者を競い、努力する道のりを力強く歩めるように自己啓発するというのも滑稽な話だ。沽券に関わる。これを、自動車とランナーを例示して人間の限界の追求がエンタメ要素だからとする向きもあるが、やや異なる気がする。果たして、どこに向かうのか。

  • ・戦術とはすることがあるときに何をすべきか知ることであり、戦略とはすることがないときに何をすべきかを知ることである。
    ―サヴィエリ・グリゴリェーヴィチ・タルタコワ

    ・ライト兄弟は彼らの創作物が秘める可能性を想像できず、飛行力を商業や軍事上の目的に利用するのは別の人間に託されたのだった。

    ・きわめて優れた構想も、一度の戦術的過ちで台無しになりかねない。長期的に見てもっと危険なのは、悪い戦略がよい戦術やまったくの幸運のために成功するケースだ。一度はうまくいくとしても二度起きる事はめったにない。だからこそ、成功にも失敗と同様に厳しく問いを投げかける事が重要である。
    パブロ・ピカソはそれを看破し、「コンピュータは役に立たない。答えを教えてくれるだけだから。」と語った。肝心なのは問いなのである。

    ・心構えというのは些細なことだが、大きな違いをもたらす。
    ―ウィンストン・チャーチル

  • 再読しました。
    以前はチェス中心の読み方だったのでよく理解できないことが多かったですが、
    今回リーダーシップ、ディシジョンメイキングの観点から読み返したところ、
    すごく痺れる文章がたくさん現れていました。

  • WBS スミスの本棚

    松竹社長 迫本 淳一氏推奨

  • ハッとさせられた個所:
    私たちはどれくらいの頻度で一日の終わりに自分の仕事ぶりを振り返っているだろう?何を見て、何を学んだか?新たに留意すべきことに気づいたり、それを経験したりしたのか?その状況、機会、パターンがもう一度生じたら認識できるか?

    また最近ちょくちょく目にする「ポジティブ満載のお花畑格言」とは異なる現実主義・勝負師的な視点も勉強になる。

    ・長所を活用したほうがいいのは確かだが、偏りすぎれば伸びしろは限られる。全体を改善するもっとも手っ取り早い方法は、自分の弱点に取り組むことだ。
    ・結果を犠牲にしてはならない。一般的に挫折への反応として、まだ最後までやり切っていないと自分に言い聞かせる強い傾向が見られる。同じ方向にさらに進めば状況は好転したはずだと考えるわけだ。だが私たちは内なる観察者を頼りに、感情を排して結果をみつめ、自分のアプローチを疑問視しなければならない。

  • 2F
    本棚右2段目

  • ビジネスマン向き。著者はチェスの元世界チャンピオンだが、チェスの知識が無くても読める。戦略的な思考方法について学ぶことができる。

  • 原著のタイトルはHow life imitates chess。
    和書のタイトルが出版当時の流行をとりいれた「~力」という少し安っぽいものになっていて、内容もある意味ありきたりなものかもしれないが、読み物として面白い。
    しかし、カスパロフの思考や生き方、チェスをimitateするのは難しいかもしれない。
    ところどころに挿入されているチェス棋士に関する話もチェス好きにはうれしい。

  • 15年間チェスで世界チャンピオンを誇った著者の作品。原題は"How life imitates chess"とカッコイイ。まず大きな計画・戦略をもつ、評価軸をもつ、イノベーションを意識的に生み出すなど、汎化できる内容でなかなか興味深い。
    ・行動を伴わない計画は無益であり、計画のない行動は破滅を招く
    ・"なぜ?"こそは、職務を果たすだけの者と先見性のある者を、単なる策士と偉大な戦略家を分かつ問いである。
    ・マーガレット・サッチャーも言っている。「政治の世界でひとつ学んだことがある。必要なときが来るまで決断するな」
    ・直観とは、経験、知識、意志のすべてが集まるところである。
    ・どんな探検者もそうだが、私たちもまずは航海のプランを、すなわち戦略のプランを立てなければならない。つぎに資源を集め、慎重に配分し、必要なものを手に入れ、余計なものは捨てる。いったん船出したら、戦術眼を鋭く保つことが必要であり、衝突から逃げてはならない。ただし、その回避が自分のニーズにとって最も適切だと確信できる場合は別である。(中略)とりわけ、すべての決断は意識的に下さなければならない。これは将来の行動方針を評価するときだけでなく、過去の選択や選択する際のプロセスの効果を分析するときについてもいえることだ。
    ・評価の基本要素は、物質(マテリアル)、時間、質

  • コンピューターは役に立たない。答えを教えてくれるだけだから。 肝心なのは問。
    信頼せよ、しかし検証せよ。ロナルド・レーガン
    同じ誕生日の組が出来上がる可能性は、55人で99%
    →直感に反している
    準備する、勤勉という才能
    成功は未来の成功の敵

  • 政治家に転身した元チェス世界チャンピオンが語る人生の戦略・戦術の本。
    チェス以外のエピソードも多岐に渡っているので、チェスを知らない人が読んでもさほど問題はないかと。
    明確な事前準備を持って事に臨み、成功・失敗に関わらず必要な分析を怠らない。そして変化することを恐れない。

    長期に渡ってタイトルを保持した方ならではの重みがあります。


    「なぜ?」戦略の理解・発展・実行。

    「戦術とはすることがあるときに何をすべきか知ることであり、戦略とはすることがないときに何をすべきか知ることである」

    「…だとしたら?」展開を夢想する。

  • いろいろと示唆に富む内容。
    考えさせられる。

  • GUEST 003/松竹 社長・迫本淳一:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2010/04/post115081.html

  • 著者は元チェスの世界王者。チェスは思った以上に人間臭いところがあるようで、興味深かったです。例えば、試合は1対1で戦うものの、それまでチームで相当相手の研究をして試合に臨むらしいです。やはりそうした準備が大切なのだと。他にも盤上に流れる時間、それぞれの駒のその瞬間の質を把握する、プレッシャーにさらされる経験を積む、チャレンジする気持ちを持つ、全ての手を読むというよりは、中盤、終盤にこのような展開にしたいとイメージしながら戦う、などなど、チェスから得られる、人生・ビジネスに活かせるヒントをまとめています。
    (コンピューターに比べて)「私たちの最大の強みは、パターン、方法、情報を吸収して合成する能力である。」というのも納得。

  • 彼は22歳でチェス世界王者となり、15年間チャンピオン。
    年と重ねるにつれて、自分の力を試す機会はまれになるが、力試しをしなければ素質は見つからない。様々な分野で実験し、能力の限界を広げる方法を探すことができるという。
    実験が不可欠なのは、一種類の技能があれば事足りる活動分野などほとんどないから、という言葉からスティーブジョブスの点と点の話が重なった。
    自分はいろんなことに興味を持ち活動するタイプだと思っているが、広く浅い経験ばかりで身についてないことを自覚している。だから、いろいろ実験好きだから良いのか・・・と安心していられないと思った。読んだときは、やってみようと思ったのに結局やらずにいる1日の振り返り。何を見て何を学んだか。新たに留意すべきことの気づきは?経験は?この状況パターンがもう一度生じたら認識できるか?などなど。
    明日のためにどんな教訓をもち帰ったのかと自問すれば、もっと有能になれるだろうとの言葉が強く響いたはずなのに・・・。
    さあ、今日からやってみる。やる。

  • チェスの世界王者でロシア人である著者(むかしのニュースでIBMのコンピュータとチェスの対決が報じられていたのをちょっと覚えています)が書いた
    戦略と戦術の本。
    やっと読み終わりました。
    チェスの用語や文化が分からない部分があるのと、ロシア人の言い回し(和訳であったとしても)が不慣れであったために読むの時間がかかったみたいです。それに、内容的にはまだちょっとわかりにくい部分もあり、完全に理解できたわけではないようです。
    でも、大量の我々に指し示す有効な示唆が含まれていることだけはわかりました。
    マテリアル・時・質
    一日の終わりに、明日のためにどんな教訓を持ち帰ったのかを自問する
    独創性とは努力である。確実性を手放す勇気
    全体感を見るバランス。経験と本能
    等々

    もういちど読み返す機会があれば読み返すべき本だと思いました。

  • 人生=準備し続けること

  • ――――――――――――――――――――――――――――――○
    人間は暇つぶしの方法を見つけるのに素晴らしい創造性を発揮する。真の戦略家が輝くのはこんなときだ。戦略家は前進するため、立場を強めるため、避けられない争いに備えるための手段を見つける。忘れてはならない。争いは避けられないのである。67
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    もっとも適任の候補者がかならず当選し、もっとも洗練されたソフトウェアがいちばん売れる。客観性を前提とするこの夢の世界は、競争の激しい環境の複雑さを見落としている。あることをする権利を自分はもっていると思った瞬間、それを失う機は熟し、より懸命に奮闘する者に奪われることになる。298
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    負の均衡と悪い習慣が育まれるのは、ひとつの分野に依存しすぎるときであり、それはその分野の順調さが理由になることが多い。私たちはよりよい方法を探すのではなく、最善と思っているものに固執する。自分が何かを学んでいると確認できるのは、不安を感じながら新しいことを試すときだけだ。322
    ――――――――――――――――――――――――――――――○

  • ロシアのチェス世界チャンピオンの本。チェスを例にしながら、物事の考え方やプロセスを詳細に伝える内容。チェスの奥深さからか、著者の思想は一般的なビジネスの世界でも通ずるものであり、世界中の企業からの講演依頼が絶えなかったらしい。現在は政治家の候補者にも選出され、活躍の場をチェスの外にも広げている。
    メモの意味で、目次の中のいくつかを記載しておきたい。

    ・決定のプロセスを自覚する
    ・どんなに早い決断にも戦略を
    ・ゴールと中間目標を決める
    ・一貫性と適用性は共存できるか
    ・変化のための変化か、必要な変化か
    ・人の不首尾をあてにしない
    ・「なぜ?」が戦術家を戦略家にする
    ・答えよりも肝心なのは、問い
    ・想像力で慣例を打ち破る
    ・無意識のプロセスを意識化する
    ・発想は社会を反映する
    ・変化に尻込みしていないか
    ・確実性を手放す勇気を
    ・段階に対する偏見をなくす
    ・情報をうのみにしない
    ・主導権はゼロサムではない
    ・成功は未来の成功の敵
    ・手を抜くのは事実上の失敗
    ・勝つために負ける
    ・危機から学ぶ

    日頃の仕事に没頭している頭に刺激になる。

  • 目次の内容が本書の内容をよくあらわしています。

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著者プロフィール

1963年4月、旧ソ連邦の構成国、アゼルバイジャン・ソヴィエト社会主義共和国バクー生まれ。元チェス選手。現在は政治家。2011年より人権財団の会長。
22歳でチェスの世界チャンピンとなり、通算15年もの間チェスの世界チャンピオンのタイトルを保持。
1996年、1997年の2度、IBM製のスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」と「人類の代表」としてチェス六番勝負をした。
2014年11月には、将棋の羽生善治四冠(当時)とチェスの対局を行なった。
2005年にチェストーナメントから引退。引退後は、政治家としてロシアの民主化運動に尽力している。
著書に『決定力を鍛える』(NHK出版)、『ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む』(日経BP)などがある。

「2023年 『悪寒の冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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