NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140812822

作品紹介・あらすじ

ついに「ポアンカレ予想」が解決した!ところが…。世紀の難問に挑み、敗れ去った幾多の数学者と見事に解決したにもかかわらず姿を消した天才グリゴリ・ペレリマン。数学という魔物がもたらす数奇な運命とは-。

感想・レビュー・書評

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  • ポアンカレ予想を証明した数学者ペレリマンを追ったNHKのドキュメンタリー番組を元に書かれた本。

    ポアンカレ予想はフランス人数学者アンリ・ポアンカレが1904年に発表した論文の最後に残した問いかけから生まれた。その問いかけとは「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面と同相と言えるか」である。(端的に解説できない為詳細は省略)そして数学の7つの未解決問題、ミレニアム懸賞問題の一つだった。ミレニアム懸賞問題を証明した暁には100万ドルの懸賞金が約束されていた。
    2006年、ロシア人数学者グレゴリ・ペレリマンによってポアンカレ予想は証明された。彼には数学界のノーベル賞と名高いフィールズ賞が授与されることとなった。しかしながら、彼は受賞を拒否した。さらに懸賞金の受取も拒んだ。一躍マスコミの注目の的となる中、彼はひたすらに沈黙を続けた。
    そしてついに、ペレリマンは数学界ひいては人間社会から消息を眩ました。

    【感想】
    ポアンカレ予想について易しく知りたくて読みました。一般人向けに噛み砕かれた説明で、おおよそのイメージは掴めたので満足です。しかし言葉での説明には限界があり、数式に触れなければ真の理解はできないのだろうと思います。数学者が見ている世界はどんな面白さに満ち溢れているのか、凡人ながら気になります。
    そしてマスメディアなのでしょうがないとは思うけれど、ペレリマンのことはそっとして置いて欲しいと思いました。執拗にコンタクトを取ろうとはしていたけれど、彼の身に立てば迷惑極まりない行為でしょう。彼は信念を持って社会との関わりを絶っているのですから。彼が次に表舞台に姿を現した時、歴史は再び大きく動くのかもしれません。

  • 正直、ミレニアム問題もポアンカレ予想も知らなかった。理工学部の大学生になったということで、スタートラインとしてとっつきやすそうな本書を手に取ってみた。
    数学を極めすぎたことによって人生があらぬ方向に行ってしまう。こんなにも難しいことに挑戦する博士たち、人類がまだ見ぬところに到達するために全てを目の前の難問に捧げる博士たち。好きなことにならここまで熱中できるのか。天才だからここまで極めてしまうのか。
    そして数学は奥が深い。どんなに世界は変わっても数学は普遍的な態度を取り続ける。そこに数学という学問の魅力があるのかもしれない。

  • 本書は、「100年の難問」といわれたポアンカレ予想を証明した、グリゴリ・ペリルマン博士を追ったNHKスペシャルを元にした作品です。
    そもそもポアンカレ予想とは、「基本群が同相に置き換えられても、単連結体にならない可能性はあるか?」つまり「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面と同相といえるか」というものである。
    だが、正直この予想とその証明自体は難しくてよくわからないが、数学者の「難問に挑み続ける病」、未知への憧れを追求し続ける、その純粋さには感動せずにいられない。

    【参考図書等】
    ・科学と仮説(アンリ・ポアンカレ)
    ・科学の価値(アンリ・ポアンカレ)
    ・科学と方法(アンリ・ポアンカレ)
    ・晩年の思想(アンリ・ポアンカレ)
    ・ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」(アポストロス・ドキアディス)

    【引用】

    (数学者の自分の決めた行動原理を守るという点について)多くの数学者に共通した特徴と言えます。彼らの多くは自分が決めた原則に忠実で、他人との人間関係のためにその原則を曲げることは稀です。

    数学は長年培われた人類の知恵の集合体で、いわばそれ自体に生命が宿っていると考えていたのです

    数学者とは結局、「難問に挑み続ける」という病から逃れられない生きものなのだろうか。

    自分の人生を他人に勧めようとは思わないが、自分はこれで良かったんだと。その気持ちはわかります。数学者が難問に惹かれる気持ちは、皆同じですから。
    数学者は常に、楽しみと苦痛とが織りなす日常、そして『特別な数学の世界』とのあいだを往き来しています。数学の世界への扉を開けられる者は限られていますが、そこには永遠の真理があり、すべてを理解できる者だけが、その世界で完璧な美を目撃することができるのです。まるで迷宮に迷い込んでしまったかのように、クリスタルの壁に乱反射する美しい光に数学者は思わず取り憑かれてしまうのです。

    数学者は、例えば英語や中国語と同じように「数学語」という特殊な言語を身につけていると考えるべきだという。その言語をマスターしなければ、数学者の言うことの真意はわからない。つまり、数学的基礎をひととおり学んでいない人間が数学者と同じ視点に立つことは容易ではない、という意味だ。

    (学生時代、教師の期待している考えと自分の考え方が合わなくて苦痛だったが、)ところが数学者になってみて、自分は正しいことをしていると感じられるようになりました。『こうすべきだと他人から言われた方法をやるのではなく、自分の直感に従うべきなのだ』と思い、最終的には『理屈を積み重ねなくても論理の本質を掴み、それを一目で見ることができる物事の考え方』を見つけるのが好きになりました。

    数学の本質とは、世界をどういう視点で見るかということに尽きます。数学的な考え方を学べば、日常はまったく違って見えてきます。文字どおりの『見る』、つまり網膜に映るという意味ではありません。学ぶことによって見えてくるという意味です。

    ある一面で数学者とは、世の中に存在する無数の事柄のあいだに共通点を見出し、それに名称を与えて巧みに分類する仕事だ、と言えなくもない。

    「物理学や化学における『真理』は時代によって移り変わる。しかし数学的真実は、一〇〇〇年前も、そして一〇〇〇年後も真実であり続ける」

    (賞金が、難問に取り組む一番の動機となるかという問いに対し)「それはあり得ません。この質問には、ひとりの数学者として答えさせてください。数学者が問題に挑む動機、それは未知なるものへの憧れです。数学者に意欲を起こさせるものは、子どもたちに意欲を起こさせるものとまったく同じです。ただ、知らないことを知りたいのです。  子どもは自分の周りの世界を理解したい生きものです。生まれついての科学者なのです。私たち数学者はいわば、大人になってもその好奇心を持ち続けているだけなのです。数学者の好奇心は、南極や北極やアマゾンを発見した探検家たちとも変わりません。いまやこの地球上では、まったく未開拓だと思われる場所はだいぶ少なくなってきました。でも頭の中の知的世界には、何の制限もありません。未知なるものは無限にあるのです」

    「例えば登山家は、普通の人とは違い、山で命を落とすことを恐れません。数学も同じなのです。たとえ命と引き替えでも構わない、世の中の他のことなど、愛する数学に比べれば、取るに足らないものだ。数学の真の喜びを一度でも味わうと、それを忘れることはできなくなるのです」

    数学者は数学に人生を賭けている。いわゆる浮世離れした「天才」というのではなく、好きなことを続けるために世間に惑わされない自分なりの行動規範を作り、それを守るために地道に努力を続ける人たちだと感じた。

    【内容:アマゾンから転記】
    ついに「ポアンカレ予想」が解決した!ところが…。世紀の難問に挑み、敗れ去った幾多の数学者と見事に解決したにもかかわらず姿を消した天才グリゴリ・ペレリマン。数学という魔物がもたらす数奇な運命とは―。

  • 遠くの世界に連れていってくれる素晴らしい本

  • 数学的な記述はほとんどないので、誰でも気楽に読むことができるが、理系の人が読むと少し(だいぶ?)物足りない。

    Poincare予想は位相幾何学的な言葉で記載されているので、その主張を理解するだけでもすこし解説が必要であるが、穴が開いていない(単連結な)3次元空間は球体と同位相ということを二次元の例、つまり、平面上で穴が開いていない平面は球体の表面と同位相でしょ、というよくある言葉で置き換えている。
    Perelmanの証明は全くといってよいほど記載されていない。

    PerelmanがPoincare予想を証明したときに、位相幾何学ではなく微分幾何学のツールを使って証明したようであるが、その時に、位相幾何学者は3回ガッカリしたそうだ。

    まずはじめに、自分ではなくPerelmanによってPoincare予想が解かれたことにガッカリし、次にその証明が位相幾何学ではなく微分幾何学を使用して解かれたことにガッカリし、そして最後にその証明が全く理解できなかったことにガッカリした、そうである。

  • 2020.11.5

  • Nスペは観たけれどずいぶん前なので忘れている。でもたぶん番組の流れ通りだった気がする。四色問題の解決に、ブラックボックスである計算機の結果を信じてよいのか?という問いかけが、昨今の「AIを信じていいのか」に通ずるものがあると思った。天才サーストン博士が自分の育てられ方を窮屈だと感じていたように、大人の思惑と違う行動をする子に対して大人はどう対処してよいか分からず、自分の考えを規範とするしかなくどうしても押さえつけてしまうことはよくありそう。ポッキリ折れてしまわなければ良いけれど。本書に登場する数学者たちが純粋すぎてなぜか悲しくなる。今もこのような静かで孤独な闘いがどこかで行われているのだろう。でもたぶん本人たちはそれを望んでおり、それで良いのだと思う。

  • おや?
    っと本屋で立ち読み。

    「ポアンカレ予想」って何?
    宇宙の形を予想するの?

    そんなスゴイ人が賞を断ったんだって?

    今は、世界中の研究者が実際の宇宙の形を調べているんだって。久しぶりに宇宙の話も面白いですね。

  • 100万ドルの懸賞金がかかっていたポアンカレ予想にまつわる本です。物語として非常に面白いです。

    理図書 415.7||Ka79 11941663

  • 1228円購入2011-02-28

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