- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140817704
感想・レビュー・書評
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著者は数学者。専門は確率論だというが、著者を有名にしたのは、青少年や一般向けに数学の魅力を紹介する動画シリーズである。You Tubeの「Micmaths」という10分前後のシリーズで、図形を駆使しながら軽妙に語る。動画配信は150本を超え、チャンネル登録者数は32万人。数学の普及に努めた功績が認められ、著名な賞を受賞もしている。
本書では、数学1万年の歴史を語る。
特徴は、厳密にきっちり、数式たっぷりではなく、楽しい読み物としてまとめられている点だろう。数学が新しい扉を開いていくわくわく感が満載だ。
語り始めは古代。メソポタミアの土器に注目する。そのどこに数学があるかといえば、ほどこされる装飾性の幾何学模様である。「回転」や「対称」、「すべり鏡映」といった、いくつものパターンで模様が作り上げられている。
物を抽象的に「数」で表すようになったのもメソポタミアである。例えばヒツジを羊飼いに預けるとき、帰ってきたヒツジは減ってはいないのか? そうした場合にヒツジを「数える」必要が生まれる。やがて、「数」を表す「記号」が共有されるようになっていき、「数字」の誕生につながっていく。
幾何学は領地を分割するなどの必要性から大きく発展していく。多角形の基本である三角形は盛んに研究される。
幾何学が発展していくにつれ、定理や公理、証明に関心が寄せられる。
数に関しては、ゼロやマイナスの発見がポイントになる。さらには、円周率πに代表されるような、無限に小数点以下の数が続く無理数、同じもの同士を掛け合わせてマイナスになる虚数といった、直観では呑み込みにくい概念が導入され、そのたび大きな議論になった。
大きな発見の1つはデカルト座標である。平面に縦横2本の直線を引き、目盛りをつける。
これにより、幾何学と代数学の融合が可能になった。幾何の問題を方程式で解くことが可能になったわけである。直線は一次方程式、円は二次方程式、それぞれが交わる点も、計算によって迅速に求められる。
新しい形の数学が生まれるには、その都度、その概念を表すのに役立つ「言葉」や「記号」が必要になった。そうして新しい形の数学は、その都度、世界を違う切り口で示してみせた。
ロネーは言う。数学を楽しむには偉大な数学者になる必要はないと。それぞれの人が、それぞれの切り口で、それぞれに数や図形のおもしろさ・楽しさに気付けばよいと。
フィボナッチの数列。マンデルブロ集合の図形。
世界は数学的美しさに満ちている。あまりに広大無辺すぎて、どちらへ行ってよいか少々とまどうのだが、その道標としてはなかなか楽しい1冊である。
*余談としてちょっとおもしろいなと思ったのは、πを表す詩というやつでしてw フランス語でもあるようですが、最も有名なのはエドガー・アラン・ポーの『大鴉』をもじった"Near a Raven"(大鴉もどき)という英語のもの。
Poe, E.
Near a Raven
Midnights so dreary, tired and weary.
Silently pondering volumes extolling all by-now obsolete lore.
During my rather long nap - the weirdest tap!
・・・つまり何かっていうと、文字数で数字を表しているわけですね。Poe→3、E→1、Near→4、a→1、Raven→5となり、引用部分で3.141592653589793238462643383までです(^^;)。この調子で小数点以下740桁まであるそうです。すごい熱意ですねぇ・・・。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
数学の面白さを様々な手法で伝えている著者が、数学の歴史を語ります。
口語で綴られ取っ付き易く、なるべく数式に頼らない努力を感じました。
数学の黎明から今に至るまでを浅く広く扱っていますが、数学への興味がないと少々難しいであろう印象を受けました。
ゆっくり読み進めていただきたい一冊。 -
開始12月13日
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410-L
閲覧 -
感想は自分のブログに書きました。
https://rebirebi.net/travel-math -
数学が苦手な人は「数学の本」というだけで苦痛に感じるかもしれません。けれど,数学は向いていないと思っていた訳者をして面白いと言わせ,数学の知識がない人こそ読んで楽しめるという本書ならばどうでしょう。1万年の昔から続く人と数学の物語,チャレンジしてみませんか。
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請求記号 410.2/L 36
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著者は数学者でありながら、数学の楽しさをYutubeなどで配信している方とのこと。本書も数学の歴史を追いながら数字の不思議さ、数学の素晴らしさを教えてくれる。
本書一冊でとたんに数学好きとはいかないが、数字、数学が美しいという感じはわかる気がする。
それにしても紀元前の時代から、人の知りたい、わかりたい、改善したいという思いと知性に改めて感銘する。 -
科学道100冊 2019 「美しき数学」
【所在】3F開架
【請求記号】410.2||LA
【OPACへのリンク】
https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/book/189847 -
数学の魅力が伝わるだけでなく、面白くない学問など無いということにも気付かされる本。