NHK「100分de名著」ブックス 法華経: 誰でもブッダになれる

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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140818572

作品紹介・あらすじ

「あなたは尊い存在である」――その、貫かれた「人間観」に迫る。

古くは『源氏物語』から宮沢賢治まで、日本人を魅了し続けてきた法華経。「諸経の王」と呼ばれる経典には、いったい何が書かれているのか。法華経が説く「一仏乗の教え」とは何なのか。仏教の原点に還ることを説く経典に内蔵された、ブッダがほんとうに伝えたかったこととは何か。仏教に立ちはだかった「対立」という壁を乗り越えて「平等思想」を説いた法華経は、「分断」がはびこる世界に「融和」という処方箋を提示する。サンスクリット原典から日本語訳を果たした第一人者が、宗教書にとどまらない「人間に寄り添う書物」として、その思想の本質を探る。

はじめに:思想として『法華経』を読む                                                      第1章:全てのいのちは平等である                                                         第2章:真の自己に目覚めよ                                                      
第3章:「永遠のブッダ」が示すもの                                                     
第4章:「人間の尊厳」への讃歌                                                   
特別章:対立と分断から融和へ                                                               読書案内                                                                        あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 初期仏教の小乗と大乗の対立の中、それを乗り越えるために編まれたという法華経を誰がどのようにして広めていくのかというのが法華経の内容のあらましで、二重構造のようになってブッダへの道を説いているという。それは常不軽菩薩のように何物にも軽んじず軽んぜらず、真の自己の尊さに目覚め、それによって他者も同等であると認めることができるということが、人間がもつ差別への拘泥と他者への攻撃性の無意味さを教えてくれていると思えた。

  • 宗教についてなので内容は難しかった。
    でも、100分de名著で扱ったものなので
    概要を学ぶ上でわかりやすかった。

    経典とは、なにか説法集や
    生きるための指南書みたいなものだと
    浅く思っていたけれど、
    仏教の変遷とその在り方への批判、
    よりよい在り方を目指した戒めも含めた
    もりもりの内容なのだと理解できた。
    これは、著者の地道な深い翻訳や研究と
    丁寧な解説のおかげだと思う。

    「般若心経」を勉強したことがあり
    仏教的な視点については
    理解できていると思っていたけれど、
    それどころではない多くの学びがあった。

    仏教に貫かれている平等思想には
    深い感銘を受けた。
    地涌の菩薩や常不軽菩薩の話が
    興味深かった。

    特別章として追加されているところは
    今を生きる私たちにとって学びが大きい。

    仏教は、二元論に陥らない凄さを持っている。
    現代、様々な分野で対立と争いを見るが、
    たとえ強者と弱者が入れ替わっても
    その問題は解決はしない。
    それらを分断してみる視点から退き
    高次元からまるごと受け入れる姿勢が
    仏教なのだと感じた。
    多様性を個性の対立にせず
    同じ土地と水に育つ
    草木の様相の違いとみることができれば
    互いの共感も生まれ
    融和も可能なのかもしれない。

    仏教の生まれたインドでは、
    差別・階級の意識が根強く
    仏教が根づいていないことは残念だ。
    中国や日本へ渡り、時代や支配者により
    解釈や理解が変わりつつも
    現代にこの思想が残ってくれたことに
    感謝したい。
    ブッダの教えには普遍性があり
    あらゆる人間に向けられた包容力がある。
    唯一無二の思想のように感じる。

  • 昔からいまいち捉えどころがない印象の法華経。昔から「法華経はほめる言葉ばかりで中身が何もない」とも言われていたようである。そもそも法華経は何のために書かれたものかを理解することが必要だろう。下記記載がわかりやすかった。”小乗には小乗の、大乗には大乗の差別思想がありました。そこで、両者の差別思想と対立を克服し、普遍的平等思想を打ち出すという課題を受けて成立したのが法華経なのです。”

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著者プロフィール

植木 雅俊(うえき・まさとし):1951年、長崎県島原市生まれ。仏教思想研究家。九州大学卒。理学修士(九州大学)、文学修士(東洋大学)、人文科学博士(お茶の水女子大学)。東方学院で中村元氏からインド思想・仏教思想論、水野善文氏からサンスクリット語を学ぶ。著書『仏教、本当の教え』『法華経とは何か』(以上、中公新書)、『ほんとうの法華経』(橋爪大三郎氏との共著、ちくま新書)ほか。訳書『梵漢和対照・現代語訳 法華経』上・下巻(岩波書店、2008年、毎日出版文化賞受賞)、『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』(岩波書店、2011年、パピルス賞受賞)ほか。

「2024年 『日蓮の思想 『御義口伝』を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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