働きすぎる若者たち: 「自分探し」の果てに (生活人新書 221)
- NHK出版 (2007年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140882214
作品紹介・あらすじ
ニート、フリーター、下流社会…「学ばない、働かない若者」が問題だって言うけれど、でも本当は、多くの若者が報われない労働にのめり込んで燃え尽きてしまうことこそが問題ではないのか?「あり地獄」とも称されるケアワーカーの実態調査を通して、若き社会学者がロストジェネレーション(25〜35歳)の労働問題の構造と本質を鮮やかにえぐり出す。
感想・レビュー・書評
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自身によるフィールドワークがないせいか、全体として散漫な印象。著者も気づいているようで、最後にまとめ的な内容を置いてはいるが本文がまとまっていれば必要なかったか。また、様々な提案も行政による規制を所与の条件として受け入れることが前提としてあるようで、むしろ行政の不備に切り込んで行くことが求められているのではないかと感じた。
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大学で社会学の授業を受けていた関連で購入したと記憶しています。レポートの課題図書だったかな?ただ、その時はまともに全部読んでいなかったので改めて今通読で読み直しました(まぁ、レポートじゃないので率直な読後感の表明しかしませんが)。
まぁ、個人的に応援したい人になりました阿部さん。彼のフィールドからもっといろんなことを、これからも教えてもらいつつ、私も何か考えたりすることにしました。
特に、ワープア問題と相続関係については、非常に為になりました。「やりがいを感じるから低所得不安定でも辞めがたい」「仕事の構造故に、長時間労働してしまう」という話、また「遺産を食い潰すモンスターとしてのパラサイトシングル」について。薄々感じてはいましたがしっかりした分析(の試み)を読んだのはこの本が初めてです。冒頭にあるように、この本は『搾取される若者たち』という同著者の別の本とセットです。後で私も拝読させていただきます。
この本では横軸としてヤンキー文化についても触れています。この著者は非常に肯定的に評価していますね。斎藤環のような「反知性主義」といった見方ではなく、「ヤンキー文化のようなコミュニティだって、あっていいじゃないか、最近の風潮のせいで死にかけてるけど」といった擁護です。でも、思いますねぇ。小学・中学の同窓会で、高卒で就職したり、卒業後もヤンキーみたいな感じで生きてきた人とバッタリ会うと、もう結婚して子どももいて、大学生の私より大人社会を生き抜いていて、逆に遊んでばかりでNoFutureの自分が情けなくなることって。学校、アカデミックという世界に篭ってる人程、社会性を!コミュニケーション能力を!と喚く印象があります(喚くと表現したのは、大抵前に暗黙裏で「知的な」「理性的な」がつくに決まってるから)。
ただ、ケア労働で一生懸命な女性は、そういったヤンキー文化とは縁遠いというか、毛色が違うと思うので「なぜそこでヤンキーの話?」とは思いました。彼女らはむしろ、驚く程真面目で真摯。人間、ここまで献身的になれるのかと逆に感動した程です。でもね、そこまで献身的だと疲れるでしょう?という意味で懐の深い社会、その関連でのヤンキー文化、という流れは、あまり繋がりがいい議論ではないですね。介護士の「専門性」の議論にしてもちょっと歯切れが悪い。前田さんとの対談があるからですけれど、私は前田さんに賛成したくなります。阿部さんは、ちょっと結論ありきで対談しているようで、議論がせっかちな印象を受ける。ケア労働とヤンキーとパラサイトシングルの三者の間の議論のつながりが、まるで筆者がボンドでくっつけたような印象を受けました。
たぶん、私くらいのリーマンショック以降の就職難世代にとっては、「自己実現・やりがいでケア労働してるの!?ブラックなのに!?嘘でしょう!?」って、思うからかもしれない。「個人の生きがい・自己実現・やりがい」すら、仕事では求めるべきではないし、求めたって挫けるだけだ、って思ってる(悟ってる?)私なんかは、これからどうしたもんでしょうね…… -
介護のケアワーカーについての話。
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ロスジェネは読んどいた方がいい。
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ユニットケアが必ずしも正しいのか、という主張に目からうろこ ユニットケアの負の側面は知っているけれど従来のケアへの逆行を唱えたり、そもそもケアの専門性を問うてみたりとなかなか読んでて楽しい本だった
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やりがいの搾取というテーマはかなり宗教と近接してくる。セーフティであり続けるものを宗教と呼ぶのかどうか僕にはわからないが、これからの宗教のあり方を考える上で、特に僕のような宗教を学ぶ人にとっては得られるものが多いように感じる。
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タイトルと実際の内容にはかなり差がある。少なくとも、一冊の本に内容がまとめきれていない。文章も上手くないし、無駄に図が多い。もう少し焦点を絞って、書かれてあれば面白かったのかもしれない。
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「自分らしさを大事に」「好きを仕事に」を旗印に、
バイク便ライダーという不安定就労にのめりこむ
過酷な労働に没頭していく若者たちがいた
今度は、「相手の笑顔のために」「やりがいを求めて」
自分をすり減らして働くケアワーカーの世界についての考察。
ただし、前著『バイク便・・』よりもまとまりには欠けている。
それは、以下に示す、大きく異なる3つの論点を含んでいるために、本全体を通して一つの主張になっていないためと思われる。
①バイク便ライダーと類似するケアワーカーの労働環境構造
②ケアワーカーが、「自己実現型フリーター」の若年層ワーカーと「有閑パート」の上世代女性ワーカーという異なったタイプから構成されるため、専門化が難しいという状況
③介護と相続についての視座変容の必要性
私にとっては、特に『格差社会とヤンキー文化』のコラムが
内容的に、興味深かった。
また、第3章「自分らしさ」志向は若者だけのものか?では、
統計や重回帰分析を用いて説明しているため、分りやすかった。
(これは、統計データによる論証を好む私の個人的性向のため)