数学的推論が世界を変える 金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書)
- NHK出版 (2012年12月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140883945
作品紹介・あらすじ
「数学的推論」とは何か。それは経験則でも山勘でもなく、数理論理学やゲーム理論をベースに「相手のハラを探る技術」。人間のみならずコンピューター同士の推論合戦が本格化しつつある現在、それは巨額の利益と結びつく一方で、大きなリスクをも引き起こす。人間の行動から経済情勢まで、今世紀をエキサイティングに変える数学的推論。フォン・ノイマンやゲーデルなどの成果を踏まえ、その可能性と限界に迫る。
感想・レビュー・書評
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この本は「金融とゲームとコンピューターの本質を会得し、この21世紀というエキサイティングな時代を見通すための足場が築ける本」「数学を使って金融市場で儲ける方法論が理解できるかもしれない」という売り込みではあるものの、それを目的に読めばまず本を投げ出すことになります。
純粋にタイトルにあるとおり「数学的推論」の本で、数学的推論の式が出るたびに紙と鉛筆をもって計算していたほうが面白いと思います。
確かに現在の金融取引に数学的推論が重要だというのはわかるが、ちょっと売り込みの文言は大げさすぎと感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[第1刷]2012年12月10日
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☆数理論理学入門
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金融、コンピュータという興味をそそるタイトルはありますが、8割は数理論理のお話です。
ゲーデルの不完全性定理の話は数学ガールでもあるので、そちらを読んだ方がわかるかも… -
やはり苦手なのだけれど、生まれ変わったらこういうことを考えるのが苦でない脳みそを持ちたい。
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結論の数ページだけ読めばよい。そんな内容でした。
金融の世界はもはやコンピューターによる取引に支配されている。そのコンピューターによる取引とは何なのか。それは数理的推論の世界である。それはそうだ。それでは、それがどんなものなのかというのを詳述しているわけですが、まぁなんていうかそれでどんなアルゴリズムが実践として使われているのかって話ではない。理論の話であって実践の話ではない。
本書を読もうと思った動機としては、コンピューターによる推論のアルゴリズムが具体的にどんなものなのか、ということなので、そういう意味ではちょっと物足りなかった。 -
数式中文字がローマン体で、どうしても読んでいてイライラしてしまった。
試みは野心的なのかもしれない。 -
投機的取引・ゲーム理論・コンピューターを, 数理論理によって串刺しに, というコンセプトだそうだが,金融やゲームの話は軽いトピックか導入のような感じで,本筋は論理学の重要定理の紹介になっている。なのでおもしろおかしく読めるというものではない。
ゲンツェンの自然演繹をベースにしているところが一つの特色のようだ。完全性定理,不完全性定理の証明の概要や,様相論理入門的なところまで扱っていてなかなか読み応えがある本。 -
数理論理やゲーム理論(本書では合わせて“数学的推論”)と,数学を応用した金融ビジネスを紹介する本.大雑把に,論理命題やチューリングマシンなど情報工学でいうところのアルゴリズム理論と,経済学ではよく応用されているゲーム理論の2つをベースとしている模様.
情報工学や応用数学,金融工学を合わせて1つの軸で見るのは,金融に限らずビジネスの現場で実際に起きていることなので非常に有用ではあると思う.ただ,本書ではなぜかそれらをバラバラに小出しにして進めていく.例えば論理命題の理論を紹介した後,その理論は全く使わずにチューリングマシンを紹介して,またゲーテルの不完全性定理に戻るという構成は,一度頭の中で整理しないと何が言いたいのかよく分からなかった.完全に金融リスクをカバーすることはできないことを,不完全性定理を使って説明しているのは面白いけど,バラバラに解説されてきたせいか,説得力が薄い (不完全性定理でリスクカバーを紹介する考え方は本書に限ったものではない).
アルゴリズムの暴走として,2010年5月にNYSEで起きたフラッシュクラッシュを紹介しているが,おそらくここではHFTに利用されているアルゴリズムのことが言いたいのだろうけど,これはマクロ経済に応用されるゲーム理論のアルゴリズムや,市場取引で使用されるアルゴリズム取引とは全くの別物.あくまでもアカデミック分野の人が書いた本として見るのが吉だと思う.