日本の動物絵画史 (NHK出版新書 713)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140887134

作品紹介・あらすじ

日本には、なぜ多彩な動物絵画があるのか? 「鳥獣戯画」から仏教絵画・禅画、若冲の「動植綵絵」に、応挙の子犬、将軍家光のヘタウマ画まで。日本人と動物のかかわりをたどるのみならず、「いかに描かれたか」という視点も加え、古代から近代までの数々の名作誕生の秘密へと迫っていく。フルカラーで名作90点超を収載した、決定版の通史!

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった、さまざまな日本の絵画モチーフになった動物たちについて。
    宗教画、仏教絵画、禅画、縁起物、本草学
    「鳥獣戯画」、若冲の「動植綵絵」、応挙の子犬、家光画伯作品。
    ちょっと小さくて見づらくはあるが、フルカラー90点超、
    コスパはすばらしい。

  • 日本絵画史の中で多彩に描かれた動物たち。
    古代から近代まで、描かれた背景も伴い、
    それらのカラー画像約90点超を添えて、解説する。
    ・まえがき
    I 信仰と動物、失われた美術―古代・中世 第一章~第六章
    II 平和な社会と多彩な動物絵画ー近世 第七章~第一一章
    III 動物の心と人の心ー近世~近代 第一二章~第一七章
    ・あとがき
    主要参考文献有り。

    古墳絵画に描かれた、神獣。飛鳥時代の玉虫厨子の絵。
    奈良時代の正倉院の御物。それらは海外渡来の美術の動物。
    やがて仏教画の涅槃図や禅宗での水墨画にも動物が現れる。
    「鳥獣戯画」の登場。禅の世界でのなんか可愛い動物も。
    安土桃山~江戸時代初期の土佐派や狩野派の竜虎や鳳凰。
    社会が安定し、美術が人々の身近になってきた時代、
    縁起物から生まれた動物絵画の創作。鯉・鶴と亀・兎・鹿。
    写実的でリアルな迫力。本草の高まりからの図鑑。
    西洋の銅版画や油絵からの影響。
    俳句の流行からの俳画と俳画のような可笑しな絵。
    異色の浮世絵。描き方の自由と表現方法の自由。
    そして人と動物の心を通わせる絵が登場する。子犬・雀・猿・猫。
    63歳で亡くなるまで子犬を描いた応挙。
    その弟子の蘆沢蘆雪はやんちゃな子犬を描く。
    猫を愛でた歌川国芳。徳川家光の動物画への思い。
    私の絵に法は無いと嘯いた仙厓の子犬。
    仏教が人々の心に染み渡った時代の、動物の命の重さ。
    明治時代初期の河鍋暁斎の蛙と風刺画。
    西洋と日本では動物の立ち位置が異なっているし、
    日本でも時代の変遷の中では同様。
    それでも明治以降にも素晴らしい動物画が描かれたのは
    嬉しいし、最近の“かわいい”で過去の動物作品が
    注目されたことも有難いと思いました。
    それ故に小さいながら多くの動物絵画が味わえたことに、感謝!

  • 著者は府中市美術館学芸員の金子さん。毎年春の江戸絵画展で楽しい切り口の展示を見せてくれる人です。そういえば上様(徳川家光)のぴよぴよ鳳凰を最初に見たのもここだった気が。そんな著者による江戸時代以外も含めた動物を描く絵画の通史です。
    動物を描く絵画を単に可愛いや可笑しいの視点ではなく仏性を絡めて評価しているのが斬新でした。確かに仏教絵画は動物の宝庫でしたね。
    通史としては明治以降の分量が少ない気もするので(藤田嗣治の猫とかも気になる)、何方か近代編を書いてくれないかしら?

  • 「ほとけの国の美術展」に行った時に購入。

    動物画を通じて、とっつきにくかった日本の絵画について触れることができた。
    一括りに日本の絵画は西洋と違い派手派手でなく面白みがない印象だったが、こうやって知識を得てみるとなかなか面白い文化があったのだなと感動。

  • 美術史の一部として、動物を正面から捉えており、私の関心に合っていたので本当に良かった。アジアには、あるいは少なくとも日本には、キリスト教文化圏と異なる動物への考え方があるという歴史を垣間見た気持ちになった。他方で、この分野は研究があまり進んでいないのかもしれない、と少し感じる部分もあり、他の本も進んで読みたいと思う。

  • <目次>
    第1部  信仰と動物、失われた美術~古代・中世
     第1章  海を越えて来た動物の絵
     第2章  《鳥獣戯画》のどこがすごいのか?
     第3章  失われた愉快な世界
     第4章  鹿と竜~神の使いと仏の守護神
     第5章  涅槃図に描かれた動物
     第6章  禅宗と動物の絵
    第2部  平和な社会と多彩な動物絵画~近世
     第7章  獅子と鳳凰
     第8章  縁起物から生まれる創作
     第9章  図鑑に心を遊ばせる  
     第10章  本物に迫る
     第11章  花開く自由な造形
    第3部  動物の心と人の心~近世から近代
     第12章  「禅画の虎」の遺伝子
     第13章  絵の中の動物を愛おしむ
     第14章  禅画の動物が教えてくれること
     第15章  仏の国の動物
     第16章  動物を使った風刺画
     第17章  近代の芸術家と動物

    <内容>
    江戸絵画を専門とする府中市美術館学芸員。多くの日本の動物絵画の展覧会を計画、実行してきた。文中で江戸時代までは「かわいい」の視点などないが、仏教などの考え方はあったにせよ、見る側が楽しくなる作品が多い。ところが、近代になり西洋の美術思想が流入すると、その面白さ、楽しさが消えてしまうという。従ってこの本は、近世までに重点が置かれる。図版も多く、思わず頬が緩む作品の多いこと。また円山応挙の思想とか、それを飛び越えてしまった弟子の長沢蘆雪とか、そうした話も垣間見えるのがよかった。

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著者プロフィール

金子信久(かねこ・のぶひさ)
1962年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。福島県立博物館などを経て、府中市美術館学芸員。担当展覧会に「亜欧堂田善とその系譜」(福島県立博物館、1990年)、「司馬江漢 西洋との接触、葛藤と確信」(府中市美術館、2001年)、「亜欧堂田善の時代」(府中市美術館、2006年)、「リアル 最大の奇抜」(府中市美術館、2018年)など。「亜欧堂田善の時代」展の企画と図録論文で第18回倫雅美術奨励賞受賞。主要論文に「亜欧堂田善の銅版江戸名所図群に関する絵画史的検討」(『国華』1220、1997年)、「迫真と形象化‐司馬江漢と亜欧堂田善の油彩画」(『民族藝術』22、2006年)、「司馬江漢 西洋風景人物図屛風」(『国華』1336、2007年)など。著書に『日本美術全集14 若冲・応挙、みやこの奇想』(共著、小学館、2014年)、『もっと知りたい長沢蘆雪』(東京美術、2014年)、『子犬の絵画史 たのしい日本美術』(講談社、2022年)ほか多数。

「2022年 『作って発見! 日本の美術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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