- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140911686
作品紹介・あらすじ
「南無阿弥陀仏」と声に出して称えれば誰でも極楽住生できる…。人々の心をたちどころに掴んだ念仏の教えは、平安末期、末法の世を生きる庶民の「救い」となった。「地獄の思想」が世のなかを次々と覆い尽くし、そして戦乱や天災、飢饉による死が目の前にあった時代、法然が深い思索を重ねた果てに到達した浄土とは何だったか。「死とは何か、生とは何か」を探究する死生学の視点をふまえ、法然浄土教が指し示した「救いの大地」をあらためて捉え直すとき、「昨日に縛られず今日を新たに生き直す」絶対肯定の思想が見えてくる。
感想・レビュー・書評
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法然と彼の説いた専修念仏の思想について、わかりやすいことばで解説している本です。
一般的に、親鸞にくらべて徹底性を欠くというイメージのある法然のスタンスを、同時代における庶民の救済にかかわる彼の態度にもとづいてポジティヴに解釈する試みがなされています。
著者は、ユング心理学や西田幾多郎の哲学、キリスト教における解放の神学や自然科学的な観点からの称名の効果にかんする研究など、さまざまな議論をとりまぜながら、法然の魅力を多角的に照らし出そうとしています。仏教学のなかでの法然解釈になじんだ読者にとっては、著者の無手勝流のスタイルは容認できないと感じるかもしれませんが、法然の思想にはじめて触れる読者にとってはおもしろく読める本なのではないかと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
法然が活動した時代の様子や、法然を取り巻く情勢が生き生きと描かれる。さらに、他の宗教家や弟子の親鸞などとも比較しながら、法然の独自性・革新性を説いている。また他宗教やユングなど様々な知見と照らしながら法然を多角的に捉えようとしている。ただ、筆者の法然に対する思い入れが強すぎるせいか、筆者の(小説的ともいえる)想像力でもって強引に論を進めているようなところが散見される。著者の言わんとするところにはほぼ賛同できるだけに、そこが残念ではある。
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徹底的な仏典理解を経て専修念仏へと収斂されていった浄土宗の宗祖、法然の考え方を説明した一冊。当時の時代背景はもちろんのこと、禅宗、キリスト教および心理学まで引用したうえでの解説が興味深い。
平安末期の震災や火災、政変が続くつらい時代、庶民は難しい仏教の修行もできず、現世にも来世にも望みが持てずにいた。そんな中、「念仏を称えさえすれば誰でも極楽往生できる」と説いた法然の教えは、絶望の淵に追いやられていた目の前の人々を救うための画期的な方法だったと著者は言う。
法然さんと一般の人々との間で交わされた質疑応答が残されているのだが、法然さんの答えは現実的であり、念仏以外のことはきわめてアバウトであり、なおかつ、庶民にやさしい。
私は絵画や彫刻で拝する法然さんのやさしく鷹揚なお姿に惹かれて、法然関連の本を読み始めた。あのやさしいお姿は、法然さんの心の中からにじみ出るものなのだと実感した。 -
今年読んだ中で一番良かった本。法然の思想のすさまじさを、当時の時代背景を押さえたうえで、他の宗派や、宗教・哲学(東西問わず)と比較しながら論じている。難易度は、一般人がかろうじて読めるレベルになっているのでありがたい。