- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140912010
作品紹介・あらすじ
生物は耳によって自分が置かれている環境を知り、乳児は声を獲得し、それを自分の声と認識することで、複雑な「再帰的自己」を作り上げていく…自身の作曲・演奏を通し、またケージやバーンスタインら同じ音楽人との交流を通して、著者は音楽の本質と向き合い、人間の心と音との深い結びつきに迫ってきた。物理学や生物学、脳認知科学の知見をふまえながら、「響き」にあらわれる音楽と心の謎を考える渾身の書。
感想・レビュー・書評
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/cgi-bin/opc/opaclinki.cgi?ncid=BB11464296 -
なぜ猫は鏡を見ないか?―音の鏡と再帰的自己意識
なぜ聴覚が生まれたのか?―自己定位器と聴覚の起源
なぜ魚群は一斉に翻るのか?―体の外部に開かれた感覚
なぜ音は調和して聴こえるか?―物理的音波と認知的音像
なぜ楽器で言葉を話せるのか?―二足歩行と柔軟な調声器
なぜ猫の仔とトラの区別がつくのか?―両耳で聴く差異と反復
なぜ歌は言葉よりも記憶に残るのか?―シェーンベルク=ブーレーズ・パズルの解決
なぜ異なる歌を同時に歌い始めたのか?―長短と強弱の音声リズム
なぜ理屈をこねても人の心は動かないか?―悟性が情動に遅れる理由
なぜ落語家は左右に話す向きを変えるのか?―潜水艦から空港騒音対策へ
なぜ猫はすばやくネズミを捕らえられるのか?―可聴域と超越的統覚
猫と犬の行方
著者:伊東乾(1965-、東京都) -
生物の進化論と音楽の本質を関連付けて考えようとする本。
著者のエッセイ的な印象が強く、生物学的な記述は少なめ。
ただし作曲家としての経験も豊富で挑戦的な試行も多いので時間をかければそれなりに興味を持って読める。
音楽をやっている人にはインスピレーションになるが、進化論メインの学術的な記述を期待している人には向かない。 -
伊東乾さんの研究の全体を、曰く読み物ではなくこれからともに研究しようという同志に向けて書いたという本。よってもって正直中身は分かりづらいというか、だいぶ踏み込んだ話なんだけれども、伊東さんという音楽を色んな角度から研究している大家のこれまでの仕事の表面、わなぞるだけでも、面白い。単音楽を聴くという行為が、単純ではあり得ないということを改めて教えてくれる本。
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作曲、指揮、そして物理や現代思想などなど、幅広い領域で活躍される著者の仕事の全体像を俯瞰する主著としてしたためられた書。とても深くて
十分には理解しきれなかったところも多いが、著者の精神空間の広大さを感じることができた。 -
著者の博士論文をぜひ公刊してほしい。著者本人も書いていたとおり、あまりにいろんな分野、というかテーマに手を出しまくっていて、彼の創造したい音楽というのが見えてこないから。
本書に書かれている内容はとても面白く、すごく勉強になった。
一方で、この人は作曲家というより、編曲家、あるいは批評家の方が向いているんじゃないかとも思われてきた。というのも、彼は自分以外の作曲家の良質な部分を分析・抽出するのに長けているようだから。ケージやらワーグナーやらブーレーズやら。
けれども、創造的直観が欠けているような気がしてならない。 -
うーん、これは…科学的考察メインではなく、著者の思うところつらつらに専門分野の話題と科学的考察を挟み込んだエッセイという感じ。
にもかかわらず、著者は音楽のみならず物理学や脳科学、心理学や生物学にも長けており、自分の主観や体験の中にいくつもの学術的考察が絡められ、またそれがかなり専門的でわかりにくいうえに、初心者向けの噛み砕いた説明があるわけではないので、とても難しい。
音楽に造詣が深い人や、音楽論、作曲理論など、音楽をかなり専門的に学んだ人、そして物理が得意な人でないと難しいかも。
理解できれば面白いのだろうが、難しすぎてはっきりいって非常に退屈だった。
私の能力を超えていた…。そしてちょっと期待していたのとも違っていて…残念。