カール・マルクス『資本論』 2021年12月 (NHK100分de名著)

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  • Amazon.co.jp ・本 (129ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142231348

作品紹介・あらすじ

気鋭の経済思想家が、エコロジー・脱成長の視点からマルクスを読み直す

長時間労働、格差、不安定雇用、低賃金――。資本主義の暴力性がむき出しになるなか、世界的にマルクス再評価の機運が高まっている。生産力が上がるほど人が貧しくなるのはなぜなのか。なぜ過労死するまで働き続けなければならないのか。『資本論』で構想された持続的で平等な未来社会像とは?ソ連型の社会主義とマルクスの目指した「コミュニズム」は何が違うのか。
150年前に書かれた『資本論』には、現代社会が抱える問題を考えるヒントが数多く記されている。とくに、自然との関係のなかで人間の労働のありかたを分析する「物質代謝論」は、これまでエコロジーの視点でほとんど読まれてこなかった。
マルクス研究の権威ある国際学術賞を最年少で受賞した斎藤氏はこの点に注目。難解かつ長大な『資本論』で展開される資本主義の構造的矛盾について平明に解説するいっぽう、マルクスが晩年に遺した自然科学研究、共同体研究の草稿類も参照し、『資本論』の完成を見ずに世を去った希代の社会思想家の真意を読み解いてみせる。パンデミックや気候変動といった地球規模の環境危機をふまえ、いまこそ必要な社会変革に向けた実践の書として『資本論』をとらえ直す、まったく新しいマルクス論。
※2021年1月のアンコール放送です。

感想・レビュー・書評

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  • 100分de名著
    よくお世話になる番組
    そしてこちらは興味深い内容だった

    さらに最近読んだ
    「現代経済学の直観的方法」
    「暇と退屈の倫理学」
    この辺りも資本主義がいかに我々に影響を及ぼしているか追究されていた

    しかしどう頑張っても資本論は読めないだろうし、読まない…だろう
    そこでこちらで解説された斎藤氏の「人新世の資本論」を読む予定なのだが、その前にこちらで復習しておこうと思う
    (結構前に見た上、やはりTV番組だとすぐ内容をわすれてしまう)

    資本主義がわからない人は恐らくいないだろう
    しかし理解しているようで、実は奥の奥の根本を理解できていないのかも…
    資本主義のカラクリを、そして奥底を知ることが先ずは大切

    なぜ世界の富豪トップ26人の資産総額が人口の半分の資産に匹敵するのか
    なぜ働いても働いても豊かさを享受できないのか
    なぜ世界的な環境破壊を止められないのか
    資本主義のままで良いのだろうか?
    だからと言ってほかにどんな主義があるのだ?
    世の中の仕組みにマッチし続けてきたから、今もなお世界の殆どの国が資本主義なのではないのか?
    そんなことを思いながらさらに素朴な日常の疑問が出てくる
    なぜ携帯電話をしょっちゅう変えなくてはならないのか?
    壊れてもいないのに…
    アプリのバージョンアップも然り
    なぜ人はランキングを見て人気のあるレストランへ行くのだろうか
    美味しいものを食べたいため?本当に?
    誰かに自己顕示したいから?
    なぜ就業時間が決まっているの?
    テレワークができることがわかったのに出社しなくてはいけない理由は?
    有給休暇が全日取得できないのはどうして?
    労働者の立場が弱い理由は…?

    そうすべて資本主義の仕組みによるものなのだ

    社会の「富」が、資本主義社会では次々と「商品」に姿を変えていくとマルクスは言う
    例)水道からただで飲める水がペットボトルに入った商品として定着した
    資本主義の下では「富」が囲い込まれ商品になる
    必要なモノより売れそうなモノ
    人間がモノに振り回され、支配されるのだ

    そして資本は運動だとマルクスは言う
    絶えず価値を増やしながら自己増殖していく運動だと
    市場では常に競争が行われ、儲けにこだわり儲け続けていかないと潰されてしまう
    人間の欲だけではない、資本家の手からさえ離れた自動運動なのだ
    さらに労働者は強制ではなく自由だからこそ、労働者の自発的な責任や向上心、主体性まで生まれる

    そして資本家が労働者に求めたものは生産力を上げる技術革新だけではなく、「支配」の強化だと言う
    この恐ろしいイノベーションのカラクリはこうだ
    本来人間の労働は頭で考えたもの(構想)を自身の身体を使って肉体的労働(実行)するものだった
    つまり「構想」と「実行」は統一だった
    しかし現代は生産力を高めるだけ効率化を推し進め、構想と実行が分断される
    さらに細分化が進み分業化され、作業は単純化されていく
    労働者は無気力になり、自分の代わりはいくらでもいると刷り込まれ資本家との主従関係が強化されてしまう
    そして資本の掠奪欲は労働者だけではなく自然にも及んでいる
    資本主義は価値の増殖を無限に求めるが地球は有限だと斎藤氏は警告する

    じゃあマルクスが目指したものは…
    資本主義に代わる新たな社会において大切なのは、「アソシアート」(共通の目的のために自発的に結びつき、共同する)した労働者が、人間と自然との物質代謝を合理的に、持続可能な形で制御することだと言う
    わかりやすく言えば…
    みんなでリンゴを栽培するとき
    収穫したリンゴは個人的所有となるが、畑や栽培に必要な道具、栽培方法といった知は共有財産とする
    分かち合いや助け合いの相互扶助により、富の持つ豊かさをシェアする
    脱成長型経済を目指す
    というものだ

    以上が描かれている内容である

    図書館や給食を資本主義の食い物にしてはいけないし、煽り立てられる宣伝広告、SNSによるモノが先行する市場もどうかと思う
    うんざりするほどの労働者の拘束時間、乱立するショッピングセンター
    そして環境破壊と異常気象…
    資本主義の悪の部分については非常に共感する
    そう問題提起するのは簡単だが、じゃあどうすればいいのか
    疑問や嫌悪感を覚えつつもそれなりに不自由のない生活をしているのではないか…
    しっかり資本主義の恩恵を受けているのでは?
    が、それは個人が良ければいいのだろうか?
    自分の世代にツケが来なければ良いと心のどこかで感じていないだろうか…
    そしてマルクスの理想的な資本主義に代わる社会
    そんな理想郷が現実に可能なのだろうか
    そこには権力は生まれないのか?
    誰もが平等に不満なく暮らせるのか…
    その辺りは次なる斎藤氏の書に期待したい部分だ

    当たり前に馴染んでいる資本主義に今一度立ち返る時期なのかもしれない
    多くのことを考えさせられると同時に、何を変えれば良いのか、どうすれば皆が幸せになれるのか、有限な地球環境や資源を守れるのか…
    難し過ぎる問題に直面して唸ってしまった
    答えは一つではないし、問い続けることが必要なのだろう
    そして今の不安定で何かダブついて違和感のある時代だからこそ読まれるのに相応しい本書なのだろうと感じた

    最後に
    本書は非常にわかりやすく読みやすい
    資本主義の日常で少しでも気になることがある方には是非オススメである

    • ハイジさん
      アテナイエさん コメントありがとうございます!
      そうなのです
      まずはTV番組で、さらに本書で資本論を齧ったわけですが、本当に分かりやすく驚き...
      アテナイエさん コメントありがとうございます!
      そうなのです
      まずはTV番組で、さらに本書で資本論を齧ったわけですが、本当に分かりやすく驚きました!
      そして理解しているようで理解していない資本主義を知ることに…
      これほど多くの問題があることに、実は見て見ぬ振りをしていたのでは…と感じ、改めて厳しい現実を突きつけられた気分です
      アテナイエさんのおっしゃるとおり、まずはどういう問題があることを知ることから始めたいです
      そして答えが出なくても自分の頭で考える…ことにまずは取り組んでみたいです
      偽善者ぶらず、素直に考えてみたいですね

      そして「人新世の資本論」楽しみです
      さらに深い展開が期待されます

      ★アテナイエさんの「人新世の資本論」のレビューはしっかり咀嚼、消化された内容で素晴らしかったです!
      2022/05/06
    • アテナイエさん
      ハイジさん、返信ありがとうござます。

      そうなんですよね~筆者の斎藤さんの指摘のおかげで、理解しているようで理解できていないわたしたちの...
      ハイジさん、返信ありがとうござます。

      そうなんですよね~筆者の斎藤さんの指摘のおかげで、理解しているようで理解できていないわたしたちの社会の仕組みを少しでも知ることができてわくわくします。論理的展開や理系的思考の好きな方にこそ、クールでおもしろく読めるものだと思ったりしますね。

      余談ですが、「コメントする」をポチっとすると、なぜか自分のコメントが二重掲載されてしまうホラーのような現象が起こるのですよね。決しておもしろがって2回ポチッているわけではありませんので、見にくくてすみませんがご了承くださいね~。
      2022/05/06
    • ハイジさん
      アテナイエさん
      再びありがとうございます!

      えー⁉︎
      ホラー現象なのですね‼︎
      面白過ぎます(爆笑)
      アテナイエさん
      再びありがとうございます!

      えー⁉︎
      ホラー現象なのですね‼︎
      面白過ぎます(爆笑)
      2022/05/06
  • NHK「100分 de 名著」を見て、「資本論って、こんな内容だったんだ!」

    「構想」と「労働」の関係、「資本家と労働者の関係」、「資本主義の行き詰まりの解消」「コモン」(共有)という考え方………

    マルクスの「資本論」は有名で、その存在は 社会の教科書にも載っているけど…内容はちゃんとは知らないし、読める気がしない… 敬して遠ざけていた本でしたが、番組を通して(少し)内容が理解できたので、テキストも買ってみました。
    ピラミッドの頂点と底辺の経済構造、経済格差を読み解く参考資料になりました。いつの世も「富めるもの」「貧しいもの」は存在するけれど………少しでも 辛い思いをする人が減るといいな。そのために何ができるかな?そんなことを日々考えています。

    合わせて、「ブルシットジョブズ ~くそみたいな仕事」(意味のない仕事)という本も、読みたいと思います。

  • 「人新生の資本論」のレビューで何人かの方が、この本を併せて読むとわかりやすいと教えてくださっていたので、読んでみた。
    これは、要するに、「人新生の資本論」の要約であり、より一般向けでわかりやすく噛み砕いたものと考えればよいようだ。

    「人新生の資本論」の復習としてちょうどよかった。教えてくださった方々、ありがとうございました。

    復習していく中で新たなことを思った。

    一つは、教育について。
    「人材」という言葉が嫌だなと思っていたのだ。人間がをモノ扱いするのが嫌だったのだが、なぜ、モノ扱いするのか、よくわかった。学校で商品を作り上げる発想!
    「人材」を作るという発想が蔓延っているのはまさしく資本主義社会だから。大学入試共通テストが、OECD主導の改悪が行われ、資料の読み取りだの、データの比較だのが、国語の問題に入り込むことになったったのもこのせいってわけだ。
    教育の場は、商品を作り上げる場ではない。

    もう一つ、「経営者目線」について。
    そういった目線を内在化してくれるのは、資本家にとって、とーってもありがたいわけだ。なるほど、だからそういう目線を育もうと発破をかけられる。
    そういえば、ネトウヨも為政者目線でモノを言う…。

    再読は気付きが多いし、理解が深まるだけでなく、全体の構造がみえてくるので、自分の問題意識と有機的に繋がってくる。今回は再読と同じ効果があった。

  • 私は大学は経済学科の出身だが、私が大学に在籍していた40年以上前でも、大学の講座で「マルクス経済学」を教えるものは、ほとんどなかったし、私はそういった講座をとらなかったので、「マルクス経済学」については、全く勉強したことがなかった。
    最近、資本主義の限界ということが盛んに言われるようになってきている気がする。金融危機、経済の長期停滞、貧困・格差問題やブラック企業、新型コロナウィルスのパンデミック、気候変動の影響による異常気象等、社会の繁栄を脅かすような多くの危機的な状況があり、それは資本主義の限界である、というような言われ方をすることも多い。そして、マルクスの「資本論」を読みなおそうという主張をする書籍がいくつも出てきている。例えば、「人新生の"資本論"」はベストセラーにもなった。
    ところで、「資本論」は資本、あるいは、資本主義についての批判的な研究書である。その後のマルクス・レーニン主義や、ソ連での社会主義・共産主義とは、関係がない。「関係がない」とは言い過ぎかもしれないが、少なくとも、マルクスは「資本論」の中で、社会主義や共産主義について、ほとんど何も触れていない。
    ソ連や旧東欧諸国の失敗は、マルクス・レーニン主義の失敗であり(ここまでは良いと思うが)、従って、マルクスの主張、特に「資本論」は誤った主張であるというのは、従って、変な話なのである。上記の通り、マルクスは、社会主義・共産主義国家をつくるべき、ということを一言も言っていないのだから。
    というようなことは、私自身も誤解していた部分がある。
    「資本論」自体は、読むのに難渋するが、現代社会の行き詰まりを考えるヒントになると思う。

  • 資本論のようやくじゃなくて人新世の資本論の要約だけど、ともかく読みやすい。のでよし。

  • コテンラジオの資本主義シリーズを聞いて興味が出たので読んでみた。
    資本主義により技術が発展して、食料は豊富になり、暖かくて丈夫な服が流通し、良い家に住め、病気や怪我になっても治る可能性が高まったのは事実。
    しかし、近年は特にワーキングプアや環境問題などな問題が発生しており、豊かになったはずだけどそれにより不幸が生み出されているようにも感じていた。
    この本の内容は、なぜそうなっているのか、それを解消するためにはどう考えてゆくべきか、ということのヒントになる。

  • 資本主義の暴力的構造は、冷静になると恐ろしいほどのレベルだ。

    労働では、自己を成長できない。
    生きるために働かなくてはいけない現状は、行き過ぎではないか。そもそも本当に僕たちは生きているのか?
    お金がすべての社会だ。

    本書では、労働先を選ぶ自由はある。しかし、一旦選ぶとあとは奴隷だ、と述べられている。程度はともあれ真理だ。

    このままでは危ない。その意識が感じられる。どうすべきか、探求の道はまだつづく。

  • マルクス=社会主義=民主主義に対するもの=個人の自由が制限される独裁国家
    こんな短絡的なイメージを持っていて、なんとなくマルクスや社会主義という単語を聞くだけで、それ以上は聞きたくないとシャットダウンしてきた。
    でも、マルクスが資本論の中で語りたかったのはそんなことじゃない。

    読んでみて正直なところ、「指摘されている課題はわかる。だけどそうは言ったって...じゃあどうすれば...」という迷える子羊のような心境になった。
    この本は、資本主義のもと突き進む世界を憂いて、疑い考えることの必要性、そのきっかけを与えてくれている。
    答えはまだない。
    でも、答えが見えない、わからないからと言って、考えなくて良いということではないんだ。

  • 面白かった。読みやすい。資本論自体の解説は2/3くらいで後半は著者による応用講義といった感じ。ちょうど「マルクス・エンゲルス」という映画を見て興味を持って読み始めたので、その映画のワンシーンが引用されていてイメージしやすかった。原著の引用がたまに挿入されているが、やっぱそれだけだとわからないので、引用しつつ丁寧に解説してくれるのはわかりやすく飲み込みやすい。

  • この薄さで資本論のポイントをまとめているのが驚き。富とは何か、物質代謝とは何かから説明を始めるのが秀逸。現代から見た資本論の評価にも触れており、頭いいんだなと思う。

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著者プロフィール

1987年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。Karl Marxʼs Ecosocialism:Capital, Nature, and the Unfinished Critique of Political Economy (邦訳『大洪水の前に』)によって権威ある「ドイッチャー記念賞」を日本人初歴代最年少で受賞。著書に『人新世の「資本論」 』(集英社新書)などがある。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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