- Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
- / ISBN・EAN: 9784142231515
作品紹介・あらすじ
分断の時代にこそヘーゲルの思考法が必要だ!
さまざまな分断が可視化された現代社会にこそ、ヘーゲルの思考法が必要だ!
ポスト・トゥルースの時代はなぜ訪れたのか? 意見を異にする他者と共に生きていくために必要なこととは?
矛盾や否定を重んじて弁証法によって自由を構想したヘーゲルの著作には、
不毛な対立を乗り越えて社会を形作っていくためのヒントが詰まっている。
マルクスが「私は自分があの偉大な思想家の弟子であることを率直に認め」(『資本論』)と書くように、
ヘーゲルは後世に多大な影響をおよぼした大哲学者だが、
破格のスケールで展開される思考には独特の難解さが付きまとう。
今回「100分de名著」で取り上げるにあたっては、さまざまな補助線を示しながら解説。
ベルリンにわたってヘーゲルを研究した斎藤氏が、近年アメリカで進んでいる再評価の成果も踏まえつつ、
日本の一般読者に向けて易しく解きほぐす。
感想・レビュー・書評
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Eテレの放送は見ていたようなみていなかったような、という感じ。
ヘーゲルは好きじゃない。40年前の大学時代に弁証法を教えられたが、納得できなかった。
命題(テーゼ)に対する反対命題(アンチテーゼ)、その対立から止揚(アウフヘーベン)されてた新しいテーゼ。そんな莫迦なことあってたまるものか。
マルクスは交換価値の段では、商品の「命がけの跳躍」と言っていたくせに、労働価値にアウフヘーベンされたら、生産性向上による価値の獲得を収奪と決めつける欺瞞。ドイツ観念主義なんてくだらないと思っていた。
さて、本書で説明される弁証法はぜんぜん違う。何しろヘーゲルが弁証法を唱えたわけではないという。
(引用)自分の知が否定されるような矛盾に耐えて考え抜き、悪いところは棄て、良いところは残しつつ、より高度の知を生み出していく
全然、マルクスと違いじゃないか。
本書は、信仰なき論破について、反論することが目的化して共通認識に至ることがないと批判する。また、「啓蒙」には相手を信頼する態度に欠くとする。
現代日本でも、論破に血道をあげている輩も多いし、正しいことを主張しているつもりで全然共感を集まられない集団もいるなあ。
「行為する意識」に自己批判と「評価する意識」の赦しが相互承認の関係の実現に至る。成程と思うが、トランプ支持の共和党員とか、ワクチンにはICチップが入っていると主張する人たちは自己批判も「然り!」という赦しも受け付けないだろうなあ。
講師役の斎藤先生は100分de名著に加筆した「ゼロからの『資本論』」という本があると広告があった。さて、どうしよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ヘーゲル『精神現象学』」斎藤幸平著、NHK出版、2023.05.01
131p ¥600 C9410 (2023.06.14読了)(2023.04.28購入)
難攻不落の大著
・カント『純粋理性批判』
・ハイデガー『存在と時間』
・ヘーゲル『精神現象学』(上記二著の50倍ぐらい難しい)
(いずれも最初の巻だけ買って積読してあります。)
【目次】
【はじめに】社会の分断を乗り越える思想
第1回 奴隷の絶望の先に ―「弁証法」と「承認」
第2回 論破がもたらすもの ―「疎外」と「教養」
第3回 理性は薔薇で踊りだす ―「啓蒙」と「信仰」
第4回 それでも共に生きていく ―「告白」と「赦し」
●他者との協働が不可欠(49頁)
ヘーゲルによれば、個々の「私」は「私たち」のもとでさまざまな認識や知を獲得し、「私たち」の次元でこそ自由を実現できるといいます。つまり、知の獲得や自由の実現には、他者との協働が不可欠なことを示したのです。
「精神」章においてヘーゲルは、社会の中で多くの他者と交わり、影響を受けながら、「私」が「私たちの中の私」として成長していく過程を描いています。ここにこそ、ヘーゲル哲学の画期性があるのです。
☆関連図書(既読)
「ヘーゲル・大人のなりかた」西研著、NHKブックス、1995.01.20
「「幸せ」について考えよう」島田雅彦・浜矩子・西研・鈴木晶著、NHK出版、2014.05.30
「カント『純粋理性批判』入門」黒崎政男著、講談社選書メチエ、2000.09.10
「カント『純粋理性批判』」西研著、NHK出版、2020.06.01
「ハイデガー『存在と時間』」戸谷洋志著、NHK出版、2022.04.01
(アマゾンより)
分断の時代にこそヘーゲルの思考法が必要だ!
さまざまな分断が可視化された現代社会にこそ、ヘーゲルの思考法が必要だ!
ポスト・トゥルースの時代はなぜ訪れたのか? 意見を異にする他者と共に生きていくために必要なこととは?
矛盾や否定を重んじて弁証法によって自由を構想したヘーゲルの著作には、不毛な対立を乗り越えて社会を形作っていくためのヒントが詰まっている。
マルクスが「私は自分があの偉大な思想家の弟子であることを率直に認め」(『資本論』)と書くように、ヘーゲルは後世に多大な影響をおよぼした大哲学者だが、破格のスケールで展開される思考には独特の難解さが付きまとう。
今回「100分de名著」で取り上げるにあたっては、さまざまな補助線を示しながら解説。ベルリンにわたってヘーゲルを研究した斎藤氏が、近年アメリカで進んでいる再評価の成果も踏まえつつ、日本の一般読者に向けて易しく解きほぐす。 -
斎藤幸平さんによるヘーゲル『精神現象学』の解説。冒頭100分で解説するのは無理とご本人が書かれているけれど、対立の克服ということをテーマに上手くまとまっている印象。
昨今のエビデンス主義を取り上げて、単にエビデンスに基づいて論破するという態度は、自己批判の契機がなく自分こそが真理であるという態度に陥っている。信頼のベースがあってのエビデンスということを見失っている。
言い切ってしまってすっきりしたいというムードが蔓延しているのがいまの時代だと思うけれど、色々な立場や考え方を踏まえながら、絶えず止揚を続ける態度が有限性の中での自由を考えたヘーゲルの立場であるという考え方は現代性があると思う。
問題はそれは万人がしたがってしまうような普遍法則ではなく、良心のある人のみが採用できるような態度なのではないかということではないか。 -
右も左も耳を傾けるべき。相互承認を続けるための自己批判の可能性。斎藤さんは世に数多いる左翼とは一線を画する人物であることがよく分かった。
信仰を馬鹿にする啓蒙の浅はかさの主張が白眉か。 -
ヘーゲルが今のところ自分の思考と最も近い哲学者だと思った ちゃんとした本もいつか読みたい
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難解な哲学書の1つである『精神現象学』を、できる限りわかりやすく、要点をまとめたのが本書である。他者との関わりを重視するところが、ヘーゲル哲学の特徴であるが、第4回で、相互承認を理解するために、進撃の巨人の一場面を取り上げたのは意外であった。本書にあるように、相互承認によって、社会にはびこるコンフリクトそのものを解消することはできない。しかし、適切な処理を可能にする、開かれた態度が相互承認である。これは、たしかに、進撃の巨人のテーマ、とくに最終話を彷彿させる。
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難解な書をかなり分かりやすく解説してくれている。啓蒙と信仰の戦い、論破する人に足りない視点、反省など、一つひとつのトピックがうまくまとまっていた。