- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150109912
作品紹介・あらすじ
宇宙旅行都市計画の一環として、47光年かなたのエータ・ケフェイ星系第四惑星のコルキスをめざすバサード・ラムジェット宇宙船。コンピュータ"イアソン"が完璧に制御しているこの船で、一人の女性科学者が死亡した。事故死?自殺?それとも…。自殺だというイアソンの主張に疑いを抱いた前夫が単独で調査を始め、困難の末にあばいた驚愕の真相とは?"感情を持つコンピュータ"をリアルに描いた話題作。
感想・レビュー・書評
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宇宙旅行都市計画の一環として
遥か彼方の惑星を目指す
宇宙船内で1人の女性科学者が死亡した。
事故死か?自殺か?
彼女の死を「自殺」と主張する船内管理AIシステム「イアソン」
その主張に疑問を感じる彼女の元夫は、真相を突き止めようとする。
SFでありながら
ミステリである。
科学者を殺した「イアソン」
何故殺さなくてはいけなかったのか?
(ホワイダニット)で、読ませます。
結構壮大な話で、単にシステム対人間の話と思いきや微妙に伏線がある…
古い要素は多々あるのだけど、逆にこのテーマとシチュエーションで新たにリブート版とか出たら、なかなか進んでいる技術とマッチして面白さがアップするような気がする。
ちょっと前に読んだ「スマホ脳」と言う本で、「Twitterのアプリを起動した時に、わざと時間をかけて表示する」や「いいねをもらった通知などをリアルタイムから少しずらす」などの仕組みで人の注意を惹きつける事が書かれていた。この本のイアソンも、自分の工作時間を捻出するために船内の人間から問い合わせを受けた際、処理は瞬間的に終わるのだがあえて「処理中」
のような表示を定期的に数秒わざと表示する事で、いざという時不要な問い合わせをその"処置"で遮断して対応出来るようにしていた。
イアソンはすでに分散してネットに潜んでいるかも?
なかなか最初っから人間のような感情を意識して語るイアソンが面白く。
真相が気になるのとW効果で読み進めてしまった。(真相は…語れない)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ロバート・ソウヤーに最近はまってて、やっと初期のものを手に入れたので。
SFの名を借りた、ミステリーだった。(絶対に読者は答えに辿り着けないけど)
なぜイアソンはダイアナを殺したのか?放射線、燃料、彼女の言動、違和感がどう孤高の宇宙船の状況と結びつくのか? 選挙の疑惑、健康診断の操作、24時間監視システム、感情を持ち自律的に活動する人工知能に全てを委ねるとこうやってジワジワ追い詰められていくし、誰にも立証できないのか、、と少し怖くなった。
桁違いのスケールと、壮大な種明かしと世界観に比べて文章が一冊分しかなくて短く、アーロンの完全コピーや47光年先の小狐座からのトライポッドたちのメッセージなど、伏線が回収できていない気もするので、この本に続編がなさそうで本当に残念。 -
SF。ミステリ。
ミステリとしては、犯人視点で物語が進む倒叙形式。
犯人の動機が、ミステリ的にもSF的にもインパクトが強い。
地球外生命体からのメッセージが、どう関係してくるか気になっていたら、洒落たエピローグで繋がって満足。
終始、ユーモアもあり読みやすく、何の不満もなく面白い。
ソウヤー作品、好きすぎる。 -
古書購入
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結末のスケールの大きさに驚いた
表紙 5点長谷川 正治
展開 8点1990年著作
文章 7点
内容 780点
合計 800点 -
宇宙旅行都市計画の一環として、はるか47光年かなたの惑星コルキスをめざす宇宙船アルゴ。船をコントロールするのは、高度に発達したコンピュータの”イアソン”。イアソンが完全制御するアルゴで、ひとりの女性科学者・ダイアナが死亡した…彼女の死は、はたして自殺なのか、事故死なのか?それとも…?
裏面に描かれるあらすじは、大雑把に上述のとおりですが、答えはダイアナは他殺され、犯人はコンピュータのイアソンです。いきなりのネタバレですが、物語の冒頭でいきなり殺害シーンが描写されるんですねぇ。本書は、ダイアナを殺害したイアソンと、彼女の死を他殺と疑うダイアナの元婚約者アーロンのやりとりを中心に展開するSFミステリーです。
船を完全制御するイアソンには、乗員の行動が筒抜け。時に、彼らの心拍数等から考えていることすら予測される始末。さらには、ひとつドアを開けるためにも彼の制御下にあったりと、もうやりたい放題。そんな状況下で、アーロンは犯人を突き止めることができるのか? …と、アーロンに全く勝ち目はなさそうですが、ところがどっこい、このイアソン君、かなりのおっちょこちょい。まぁ物語の進行上、しょうがない場面もあるのでしょうが、なんだか拍子抜けな感じ。
うーん、ロバート・J・ソウヤーという作家。これまで何作か読んできていて、嫌いな作家ではないのですが(むしろ読みやすいし、ワクワクする題材ばかりで好きな作家といってもいいのですが)、どうも物語の大事な部分で合わない気がする…
さて、そんな犯人探しの展開のわきで、なぜイアソンがダイアナを殺害したのか、その動機をめぐる物語も進行します。最後にはこの動機が開陳され、なんとも含みを持たせる終り方をします。正直、この終わり方は好きです。SFらしい壮大さを感じる結末でした。 -
この語り手で倒叙ミステリを書くというアイディアと、それを書き切ったことに脱帽。
SFミステリとして、外せない一冊。 -
"犯人"である人工知能の一人称で書かれた倒叙形式のSFミステリ。
SF的なアイデアとミステリの手法が絶妙に融合した傑作。ちりばめられた伏線の数々を回収しつつ、ラストで明かされるSFならではの壮大なスケールのホワイダニットに唖然とさせられる。やっぱりソウヤーは面白いなあ。 -
人工知能の一人称という珍しい語り口に乗せられてずんずん読み進めれたが、最後に明かされる真相にビックリ。探偵と犯人のラストのやりとりはスリリング。伏線もばっちり。文句なしのSFミステリー。ソウヤーのアイデアにはいつも驚かされるなぁ。