セドナ、鎮まりてあれかし (ハヤカワ文庫 JA イ 8-1)

著者 :
  • 早川書房
3.58
  • (11)
  • (18)
  • (19)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 137
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310189

作品紹介・あらすじ

先の大戦の激戦地だった太陽系辺境の小惑星セドナには、今も膨大な数の遺骨が眠る。ゴロこと尾野碁呂空曹は、任務中の事故で脳に障害を負い、この星に赴任した。穏和な老人イーイーさん、旧型アンドロイドのクイミクと、たった3人でセドナに暮らし遺骨を収集する日々。ナノマシンの嵐で独自進化した生態系を持つこの星と、3人の鎮魂の祈りが深く共鳴するとき、ささやかな奇蹟が結晶する-俊英作家の癒しと再生の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 太陽系の外れにセドナという小惑星があるのを初めて知りました。
    戦争で脳に損傷を負ったゴロ空曹は、セドナに赴任する。そこでの任務はこれまでの戦争で死亡した戦士の遺骨を掘り起こし鎮魂することであった。任務に当たるのは、ゴロ空曹と井伊神田(すごい名字‼︎)空少将とアンドロイドのクイミクの3名。セドナにいるのはこの3名だけのはずだが...
    優しい味わいのSF、発売時から気にはなっていたけれどようやく読みました。
    いい小説!

  • 辺境の星セドナで、遺骨収集する三人の姿が、読んでいて心休まる。やけに登場人物に日本人が多い事に違和感があったけれど、設定の上で現在の日本を下敷きにして書かれているようで、納得。
    ゴロとイーイーの関係はちょっと出来すぎていると感じた。ただしその設定があるからこそ、作者が伝えたい事はよくわかる。

  • 小説第4作。これまでの恋愛小説とはうってかわったSFファンタジー。
    戦争で破壊された星で、遺骨を収集し英霊たちを鎮める主人公たちの心の交流を描いた、優しい再生の物語。

    戦争で傷を負い幼児退行したゴロ、老人イーイー、旧式アンドロイドのクイミクの家族のような絆や、家族のために命を賭した先祖のメッセージに心が温まる。
    文章が拙く展開も平坦だが、作者に書きたいものがあり、それが読み手にきちんと伝わる作品だと思う。

  • SF。戦後を描いた戦争SF。
    セドナ独自の生態系の描写が好み。
    オールディス『地球の長い午後』ほど綿密に練られてはいないか。
    芝村裕吏『セルフ・クラフト・ワールド』に似てる印象。
    SF的には平凡だが、純粋な登場人物たちと、静かに心に響くストーリーが良い。
    終盤はなかなか感動しました。
    SFを読まない人でも普通に楽しめそう。
    隠れた名作では?

  • >しごとは、ほねを ほります。
    >むかしの せんそうのときに しんだ へいたいさんの ほねです。

    全編が物語のエピローグのようなステキSF。
    全太陽系規模の戦いのあと、戦場となっていた準惑星セドナを舞台に、戦争で知能に障害を負った青年ゴロと、彼に取り憑いた幽霊、老少将と、彼の秘書アンドロイドが大地に埋まる大戦の遺骨を少しずつ収拾していくお話。
    SFはタイトルだよなーと常々思うわけで、タイトルがかっこいいので読みたいと思っていたのです。

    まず舞台がセドナですよ。
    太陽系最外縁の準惑星、1年が10000地球年の星に人工太陽を浮かべて人が暮らしている。
    セドナの軌道(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Oort_cloud_Sedna_orbit.svg#/media/File:Oort_cloud_Sedna_orbit.svg)を思うとこの設定めちゃくちゃエモくないですか!?
    そんな孤独な場所で人類が生活していてセドナ語があったり、宇宙戦争していたり、誰もいなくなった後たった2人(とアンドロイドと幽霊)が遺骨集めてたりするんですよ。

    そしてテラフォーミングされた大地には、空を漂う蛇のような「火の尻尾」とか、「赤バッタ」とか、光を発する「蛍草」とか不思議で魅力的な独自生物が生きている。
    このセドナ生物が地上を覆う戦術ナノマシンの影響を受けてたりしてまた独特で味がある・・・。

    表紙イラストの大石まさるもノスタルSFには良くあっていてすごくいい。

    惑星間(恒星間かも?)戦争のわりに、戦争描写はまんま太平洋戦争なところはちょっと説明欲しい感じ。
    でもSF作家じゃないのか。その辺は雰囲気かな。


    >そらは、いつも あおく、はれています。
    >ときどき くもが ういています。
    >あおい そらの したを、あかい だいちが どこまでも つづいています。

  • セドナの生態系に心惹かれた。
    セドナの過去や碁呂達の行為から連想することもあり、 蛍の光が目に沁みる…。
    ほんわかした良い話なのにそこから抱くのは真面目な思い。 世代を継いで遺していきたい文化と今の日本人について考えさせられる。

  • 主人公のキャラクタというか、色というか、もう少し何とからなかったのか?という気がする。

    戦争によって精神に障害を負った主人公は、子供の純粋さをその色として持っていてるのだが、この点が物語を安くしていると思う。

    戦後の遺骨収集作業という物語のメインなのだけれども、前述のとおり主人公のあり方によってどうにもシャキッとしない。

    暗い物語に子供を配することで、バランスをとったり、よりコントラストを明確にしたりすることがあるけど、この場合はどうにも暗いほうが弱いせいで全体的にぼんやりしている。

  • ジュブナイルなのかなぁ。少々緩めの語り口や展開、ど直球なキャラと展開ではあるのですが、居心地の良い物語でした。戦争によって荒廃した辺境の惑星で、遺骨を丁寧に収集する元軍人とアンドロイドのもとへ戦争の後遺症を持つ青年が、後継者として赴任してきます。この3人がともに過ごした数ヶ月の物語です。かなり旧日本軍的な用語や思想が出てくるので気になる方には勧めません。

  • 短編連作とかにすればよかったかも。
    途中までの話者謎でひっぱる方が愉しかった。
    最後いらない、遺書でおわりがよかった。

  • 一文で表すなら、近未来的世界観で淡々と進むちょっといい話。
    さらっと読めるがズドンとこない。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

小説家。1976年生まれ。
2007年に『エレGY』(星海社文庫)で講談社BOX新人賞を受賞し、デビューする。小説家として活躍するかたわら、ボカロPである“ジェバンニP”としても活動している。小説の代表作に『私のおわり』『ジスカルド・デッドエンド』『猫の彼女のESP』(星海社FICTIONS)などがあり、ボカロPとしての代表作に『すすすす、すき、だあいすき』『恋ノート////』『リンカーネーション』などがある。

「2014年 『ボカロ界のヒミツの事件譜 3 名探偵エレGYちゃん様の謎解きごっこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

泉和良の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×