高天原探題 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.21
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本棚登録 : 79
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311278

作品紹介・あらすじ

『ダイナミックフィギュア』に続く、人類の認識を超えた存在と戦うアクション伝奇SF

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めたときはワクワクしながらだったのに、読み終わってみたら、何も残らなかった…という感じ

  • 訳のわからないまま状況にぶち込まれて、何を考えているかわからない主人公の行動を読み続けるという、割と厳しい内容の本。(^^;
    一応、終盤に説明があるとはいえ、この内容が評価されるってのが今ひとつわからないなぁ。
    設定はわからないでもないんだけど、説明不足感がどうしても。

  •  古風なタイトルだが、舞台は現代。
     京都を中心に突然土が人の上に被さり生き埋めになるという怪異な現象が起こる。この土盛りは墳墓と呼ばれ、生き埋めになった人は玄主と呼ばれる。玄主は自力で墳墓から抜け出すこともあれば、救出されることもある。他方、同様に土盛りが生じ、そこから不定形の生物のようなもの、シノバズも現れるようになった。シノバズは人間の動機を殺す。動機を殺されると、まずシノバズを認識することができなくなり、さらに重篤になるとまるで意欲を失ってしまう。人間の動機を殺す作用は墳墓からも玄主からも発せられる。

     なぜシノバズが現れるようになったかというと、最初の玄主、一号玄主である皆土清美が土に埋もれたとき、たまたま近くを通りがかった高校生の寺沢俊樹がそれを掘り出したからだとされている。そのとき、他の人は生き埋めになった少女を救出しようという動機を殺され、墳墓が出現したことすら認識できなかったのに、寺沢だけがそれに気づいて、救助に向かったのだ。
     京都周辺に出現するようになったシノバズを討伐する組織、高天原探題が結成される。隊員のことは被官と呼ばれる。上司は執権、連署など、律令制の名称を用いて、一種異様な雰囲気を作っているが、和風の術語は三島浩司のトレードマークである。
     動機を殺すシノバズと対峙することは困難なので、被官は5人でチームをつくり、次々に出会い頭をねらってシノバズに襲いかかるという戦術をとる。先鋒、次鋒、中堅、副将、大将とこれは武道の団体戦の名称。シノバズは警棒で殴られ続けると死んでしまう。銃も使われたことがあったが、シノバズに動機を殺され呆然状態になった被官が一般人を誤射してしまった事件があり、このような原始的な方法が定着した。

     基本的な設定はまあこんなとこ。容易に近寄りがたい奇妙な生物を討伐する組織と個性的な登場人物の人間模様が絡むあたりは『ダイナミックフィギュア』、異様を失った人間が大量発生してしまうところや、主人公が自分と関わる因果の輪を閉じようとするあたりは『シオンシステム』のヴァリエーションなのが、ちょっと気になる。最新作なのに。

     一号玄主の出現から数年後、寺沢は隔離状態にある清美に会うことを目的に高天原探題にはいっている。他方、高天原探題は不祥事を起こしたことから改組され、禁傾と呼ばれる謎の組織のメンバーは排除され、さらに監査役が活動を監視する体制になっている。
     清美は人間の動機を殺してしまい、たいがいの人間には見ることもできなくなってしまうので、ひとり隔離された状態で動物の世話をする仕事をしているのだ。
     寺沢は清美を助け得たように、元来、動機を殺されにくい特徴を持っている。生物は他の生物に危害を加えないようでいても、最後の最後に自身が危険に陥れば殺意を持つに至る。殺さずなどの誓いを立てた者を持戒者といい、持戒者はシノバズや玄主を見ることができる。寺沢は、必ずしも持戒者ではないが、殺すという覚悟があれば殺すし、殺さないと決めたら殺さないという矛盾のない人間、隠された動機がない人物なのだ。シノバズが及ぼす力は受戒であり、他の生命体からの危険を排除する力である。墳墓からは玄主とともに銅剣が出土するが、銅剣は動機を増幅し、シノバズを前にしても、動機を殺されずに向かっていくことができる破戒の剣である。よって銅剣を持った者は暴走もしやすい。持戒・受戒・破戒、これが本書の生物学的アイディア。

     寺沢と清美の純愛は重要な縦糸。また、敢えて東京を舞台にしないというのも、三島作品の特徴。はからずも評者は京都への行き帰りに本作を読んだ。ちょっと短くて、もう少し展開して欲しい気もするが、そうすると『ダイナミックフィギュア』になるだけか。

  • 知っている場所が随所に出てきたのは楽しかった。でも、この人の話って、シオンシステムほどじゃないけど、ほんのり気持ち悪いというか、気分が悪くなるのはなんでなんでしょ。終わりはハッピーエンドで良かったですけど。

  • 時間の無駄でした。

  • いまひとつ、物語に入り込めなかった。

  • 魅力的なところが散見される設定。ワクワクするんだけど、こなれてないなという感じ。もうすこし膨らませてから、無駄を削ぎ落としていけば良いんじゃないかなという気がするので、もったいない。
    伝奇というわりには、世に伝わる不思議みたいなものとの接点が、一部の人の「そんなこともあるんじゃないかな?」みたいな考え方くらいにしかないように思えるので、特に、その辺をうまく掘り下げるとかですかね。あとは、主人公補正だろそれじゃ!と、言われてしまいそうなあたりの描写をどうするかとか。古からのどうしようもないような状況に対して、そこを超越できる存在であったり、あるいは、予てからそういう状況への対抗措置として用意されていたりとか、いろんな構造がありうるとは思いますけれど。

  • 単純なつくりではあった。ただし、なかなか難しい内容。ひとの心で感じることを文章にしていたからだと思う。ひとがひとを認識するということがどういうことなのか。目が見ているだけではない。心で感じることってめちゃめちゃ大切にしないといけない。改めて、思う。内容は題名通りです。

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著者プロフィール

1969年生まれ。関西大学工学部電子工学科卒業。『ルナOrphan'sTrouble』で第4回日本SF新人賞を受賞し、2003年にデビュー。その他の著書に、『ダイナミックフィギュア』『シオンシステム[完全版]』『ガーメント』『ウルトラマンデュアル』などがある。

「2021年 『クレインファクトリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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