日本SF短篇50 V: 日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫 JA ニ 3-5)
- 早川書房 (2013年10月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (539ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150311315
作品紹介・あらすじ
冲方丁、上田早夕里、伊藤計劃らゼロ年代の作品を中心に精選。オールスター傑作選完結
感想・レビュー・書評
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2003年〜2012年の間の作品のアンソロジー。ハードなSFから歴史小説のようなものまでバリエーション豊かで、日本SFは再度面白くなってきていると実感。冒頭林譲治氏の「重力の使命」から、すごいのかすごくないのかわからい微妙な表現の物理学的記述があって、おお?何だと思わせておいてそれがまた落ちに繋がっていってやられた感満載!冲方氏の「日本改暦事情」、小川氏の「白鳥熱の朝に」、飛氏「自生の夢」(最高!)、宮内氏「人間の王」などどれも素晴らしかった。もう一度日本SF読むかな。
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日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー第5弾は、2003年から2012年に発表された作品を収録。この巻にて、この一連のアンソロジーは終わりとなります。
日本SFをほとんど知らなかった身にとって、色んな作家や多様な作品、そして時代の流れを感じることができ、とても楽しむことのできたアンソロジーでした。
それはそうと、書店に足を運んだら、「SFマガジン700」なるアンソロジーが本棚に並んでいました。国内篇と海外篇の2冊あり、控えの本を読み終えたら手に取ってみようかと。最近SFにはまった身としては、過去に膨大なSF作品があるなかで、こういった形式で昔の良作を一読できるのはとても助かることです。
さて、本書ですが、読後の素直な感想は、とにかく「読みやすい」こと。これは「内容が単純だ」、はたまた「文章が稚拙だ」と述べたいわけではなく、単に想像しやすかったから。第1弾や第2弾辺りでよく見られた(…と思う)宇宙(あるいは空想の世界)が舞台の作品は、とにかく無い頭を使って想像することが楽しむ術でしたが、本書の収録作の多くは、どれも現実の地続きに作品の舞台があって、その世界観や背景はさほど想像するに難くはなかったのです。そういう意味で、本書はつまらなかったわけではないのですが、少し物足りなかったかな。しかし、一方で、SFというジャンルが一辺倒ではなく、多様な領域に進出、吸収していることがわかる作品群でもありまして、これからのSF小説がどのように展開していくのか期待溢れるところでもありました。
▼以下、収録作
2003年:重力の使命 林譲治
2004年:日本改暦事情 冲方丁
2005年:ヴェネツィアの恋人 高野史緒
2006年:魚舟・獣舟 上田早夕里
2007年:The Indefference Engine 伊藤計劃
2008年:白鳥熱の朝に 小川一水
2009年:自生の夢 飛浩隆
2010年:オルダーセンの世界 山本弘
2011年:人間の王 Most Beautiful Program 宮内悠介
2012年:きみに読む物語 瀬名秀明 -
日本SFの50年間の短編をセレクトしたシリーズの最終巻。この50年間で日本SFは様変わりしたようだ。バラ色の未来がつづられた作品が目立つ50年前に比べると退廃的なSF作品が目立つ現代。人間の想像力と技術革新との差が縮まって来たようにも感じる。
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SF。短編集。2003年~2012年。
好き嫌いはあるけど、良作が揃っていることは間違いなし。
既読の作品も多いが、再読で良さを再認識した作品も多く、なかなか楽しめた。
再読の上田早夕里「魚舟・獣舟」がベスト。素晴らしかった。これは『華竜の宮』も読まなければ!
林譲治「重力の使命」ハードSF。宇宙。難しいが、この短さなら読める!
高野史緒「ヴェネツィアの恋人」はじめての作家。パラレルワールド?ループ?少し苦手な雰囲気。
上田早夕里「魚舟・獣舟」再読。バイオ海洋SF。グロ美しい。初読時よりもずっと心に響いた。
小川一水「白鳥熱の朝に」再読。パンデミック。リアル。読みやすさは一番。
飛浩隆「自生の夢」再読。言語SF。相変わらず分からない。雰囲気はすごく好き。
山本弘「オルダーセンの世界」再読。ディストピア。亜夢界。アイディアが好み。
宮内悠介「人間の王」ボードゲームSF。新鮮。あまりSFぽくない。
瀬名秀明「きみに読む物語」ふわっとしてる。抽象的。よくわからない。
他2作品。伊藤計劃さんのは読めなかった。ごめんなさい。 -
SF のジャンルは難しい。
昔に比べると身近な題材が増えているように思う。段々と分かりそうでわからないことが減っているからなのか?そこの境目にリアリティがあったと思うのだが、、、
この本の中では、冲方丁の日本改暦事情が同氏の『天地明察』の原型とも言えるもので、それと重ね合わせて読んだが、やはり小説としての面白みを知っているので、物足りない。あらすじとしては楽しめた。
ヴェネツィアの恋人は何かひきつけらる面白さがある。少し設定が複雑だと思うのは、私だけか?
伊藤計劃のThe IndI fference Engineは読んでいて何となく悲しくなる物語。『虐殺器官』を読んでいたら、もっと楽しめたのだろうか?
小川一水の白鳥熱の朝にはこの本の中で一番入り込めた作品。主人公と少女の癒されない心の傷とそれらを乗り越えていく様がなんか嬉しい。
山本弘のオルダーセンの世界も現実なのか?夢なのか?短編としてはまとまっていて読みやすい。
瀬名秀明のきみに読む物語も主人公の語りで淡々と進んでいく作品だが、それなりに読めた。 -
日本SF作家クラブ50周年を記念して刊行された全50編の短編集、1963年〜2012年の年ごとに各1編、作家のダブり無し。全て読み終えました。
まさに「日本SFの50年」を肌で体感できる、良いアンソロジーでした。第5集の収録作は、以下のとおり。
「重力の使命」林 譲治
「日本改暦事情」冲方 丁
「ヴェネツィアの恋人」高野 史緒
「魚舟・獣舟」上田 早夕里
「The Indefference Engine」伊藤 計劃
「白鳥熱の朝に」小川 一水
「自生の夢」飛 浩隆
「オルダーセンの世界」山本 弘
「人間の王 Most Beautiful Program」宮内 悠介
「きみに読む物語」瀬名 秀明
SFという文学ジャンルは、既に消滅しているのかもしれない。そんな風に思わせてしまうラインナップです。鴨的には、ここに大江健三郎が入っていても全く違和感無いです。
どの作品にも、旧来のSFでよく使われていたファクター、進化であったり平行宇宙であったり人工知能であったりといったものが登場し、物語において重要な背景を形成しています。が、それはあくまでも背景であって、それ自体が物語の中心にはなり得ないのですね。アイディア噴出・百花繚乱状態だったかつてのジャンルSFと比較すると、文学として非常に成熟した印象を受けます。SFがスリップストリームと見なされていた頃とは、隔世の感ですね。
でも、今回収録されている作品で、心にガツン!と響くものは、鴨には残念ながらありませんでした。
鴨はやっぱり、古いSFの溢れる熱気(裏を返せば未成熟であるとも言えますが)が好きだなぁー。
要するに、SFは今でも進化し続けている!ということですね。あとは好みの問題かと。 -
伊藤計劃の「The Indifference Engine」と飛浩隆の「自生の夢」は既読だが、この二篇は改めて面白いと思う。特に、伊藤計劃の方は「虐殺器官」を読み返したくなった。高野史緒の「ヴェネツィアの恋人」は幻想的な内容で良かったが、この本で一番読めて良かったと思ったのは小川一水の「白鳥熱の朝に」だ。パンデミック後を扱った世界として現実を想起させるものがあるが、希望のある終わり方でとても良かった。小川一水のパンデミックものの「天冥の標Ⅱ 救世群」とは違った印象を受ける内容だった。
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日本SF短篇50 V: 日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫 JA ニ 3-5)