オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫 JA フ 4-2)

著者 :
  • 早川書房
4.01
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本棚登録 : 535
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312282

作品紹介・あらすじ

2020年、〈メテオ・ニュース〉の木村和海が衛星軌道上で発見したデブリの不審な動きは前代未聞のスペース・テロの始まりだった。

感想・レビュー・書評

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  • あまりの面白さと、スケールの大きさに息をするのを忘れてしまうくらい夢中になった。
    何度、本を伏せて深呼吸しただろう。
    とにかく展開のはやさが半端ない。
    前半こそ、IT用語や衛星や打ち上げロケットの知識などに多少もたついたけれど、ストーリーが進むうちにだんだんと理解できる(っぽい)ところまでいける。そしてキーパーソンが出揃った中盤以降、ぐっと物語は速度を上げて盛り上がっていくのだが、よし、これから仕掛けるぞという段階で上巻が終わってしまうからたまらない。

    《2020年、流れ星の発生を予測するWebサイト〈メテオ・ニュース〉を運営する木村和海は、イランが打ち上げたロケットブースターの2段目〈サフィール3〉が、大気圏内に落下することなく、逆に高度を上げていることに気づく。シェアオフィス仲間であるITエンジニア沼田明利の協力を得て、謎を解明しようとする和海は、世界を揺るがす宇宙テロ計画へと巻き込まれ……》

    舞台はセーシェル諸島のちいさな島から、東京、シアトル、テヘラン、そして宇宙の軌道ホテルまで広がり、視点が次々と切り替わる。その流れに取り残されないように、わたしも懸命に走るのだが、それが全く苦にもならず、まるでランナーズハイとでもいうような高揚感に包まれる。
    その視点となる登場人物たちは、“儀式”によって軌道上の物体をイメージできる和海を主役とし、天才ハッカーでもある明利、軌道ホテルに滞在中の大富豪父娘、JAXA、CIA、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)、北朝鮮の契約工作員などなど、誰もが主役を張れそうなほどのインパクトを与えてくれる。
    テロを起こそうとするもの、阻止しようとするもの、ひとり残らず魅力的で優秀であるので、物語を失速させることはない。とにかく主役が日本のごくふつうの青年(優秀だし性格も良いけれど)。彼が世界の危機になくてはならない存在となっていくのだから、難しそうに思える宇宙SFをエンターテイメントとしても楽しむことができるのだ。

  • イランが打ち上げたロケットの2段目の残骸(地球を周回する宇宙デブリ)が、減速(落下)せず、逆に加速している。このあり得ない現象を発見したフリーランスの "Web屋" 和海・明利は、次第に北朝鮮工作員が絡んだ国家的な策謀に巻き込まれていく、というお話。

    なかなか全容が掴めず、作品の世界に入り込むのにちょっと時間がかかった。Webやネット技術に馴染みがないと、読むのが少し辛いかも。電気で推進する夢の宇宙機技術だという "スペース・テザー" も、小難しくてよくイメージできなかった(テザー=紐、地球の磁力の下で紐状の導電体に電気を流した時に作用するローレンツ力を使う、という原理のようだったが…)。

    人工衛星の動きを頭の中でシミュレートできる和海、凄腕のIT技術者の明利、そして1を聞いて10を知るスーパー官僚関口の活躍が小気味良い。展開もやたら早い。下巻での展開に期待だな。

  • おもしろい!
    日本SF大賞受賞の傑作長篇、と裏表紙には書いてあって期待を持たせられたのですが、上巻を読み終わって思ったのは、SFのジャンルを飛び越えて面白い!ということ。
    ※念のため、SFは大好きだし、低く見ているということも無いです。歴史小説だろうがビジネス書だろうが、なんかもう普遍的に面白いな!的な驚きと興奮がある本だと言いたい…

    最初は別々の出来事に見えていたそれぞれの情景が、物語が進むにつれて徐々にリンクしていき、ジェイソン・ボーン的なスピード感や緊張感が生まれてきて…の途中で上巻は終わります(笑
    登場人物も今のところ非常に魅力的で(ちょっと全員スペック高すぎ感はあるのですが)、カッコいい。上巻だけで2箇所ほど「うおー」ってなったシーンが。。
    理論やIT、諜報関係等々の考証は私には検証不能ですが、よくぞここまで贅沢に盛り込んでくれた、という印象です。かつ、決してこれらの要素にストーリーが振り回されることなく、上手く調和しているのが素晴らしいところ。

    下巻が楽しみですが、同時に上巻を読み終わった時点で自分の中でのハードルが上がりすぎてしまっているのでそこが心配。。

  • ――

     スペクタクル。もうほんと、そんだけ。

     純粋なSF、であると同時に科学ミステリ。サスペンス大作でもあり、冒険小説でスパイ小説でお仕事小説でもある。むしろ含まれてない要素はなんだ。ラブコメ? ちょっとある。

     物語のスケールが地球規模なので、沢山の立場の沢山のひとたちが出てくるわけだけれど、皆がみなそれぞれの場所でそれぞれの肩書きの上でしっかりとキャラクタしているからとてもとても魅力的。こんなに登場人物の顔と名前が一発で入ってくることあんまりない。真っ黒な悪人が居ないというのも好み。
     にしても宇宙のふたり(笑)は本当に魅力的かつ、最後に美味しいところを持っていくキーパーソンにもなっていてズルいなぁ。特にトニー・スターク――もといロニー・スマークはこれはもう、モデリングが秀逸。物語のデトネータとしての役割を完璧にこなしている。
    けれど何より、そういったキャラクタの中心にいる主人公が、登場人物の中で最もスーパーヒーローから遠いように見える主人公が、少しずつ大胆に“チーム”を構築していく。
     けれど彼の中にあるのは、正義感や使命感とはまた違うもので。
     これはなんというか、憧憬? に近いような。
     技術や発想に対するリスペクトと、そして、だからこその意地、というか。
     その力の素晴らしさを知っているからこそ、もっと何かあるだろう、っていう歯痒さが、誤った力の使い方に対して食らいついていく動機になっていく。それはひとつの、可能性の獣なのかもしれない。こうあるべきだ、っていうのではなくて。少しでも佳い方へ。

     それはでも、個人の持つ発信力が本当に大きくなっているいま、ひとりひとりが抱えている問題であり、同時に秘めている可能性でもあるわけですね。

     お見事。☆4.4

  • SFといえばSFなんだけど、宇宙を背景にしたサスペンスというかテロ事件に立ち向かう1人の民間人、という感じ。最初は登場人物がたくさん出てきてどういう状況なのかよく分からなかった。読み始めるといっきに進む。

  • IT詳しい人が書いた感じはするけども、なんかワクワクしない。
    2022からだと8年前、単行本だともっと前かもしれないけどさほど陳腐化した感じもしない。

  • 藤井作品には今でも実現できそうな技術が登場し、それを扱うエンジニア達の活躍は爽快です。本作品の要となる宇宙技術も実験されてると解説にありました。

  • 複数の視点から語られてて、面白いです。

    ただ、理系?の言葉が多く出てくるため、理解するのに時間がかかりました。

  • 前半はもう何度も読むのを止めようかと思ったほど、何が何だかさっぱりわからず。(前半でのめり込めない本は、自分との相性が悪いと判断して、本を閉じてしまうことが多い)IT系と理系の内容が多く、かつ登場人物に外人が多く、複雑なのがその原因だと思われる。

    しかし、この本、約2年も待ってやっと当たった「一万円選書」で選んでもらった本なので、そう易々と諦めきれない。また、他の方のレビューも非常に好評だったので、絶対これから面白くなるはずと思って、がまんして読み進めた。

    面白くなってきたのは、本の半ばをすぎた頃。ゆうに100ページ以上は前振りだ。もうちょっと初心者でもわかりやすく、話の展開も早いとよかったのだが・・・。

    そんなわけで、下巻に期待しながらも、上巻は★2つとさせていただいた。

  • "近未来の宇宙で起きる国家規模の陰謀を描くSF小説。
    だんだんと物語に引き込まれていく。
    下巻が楽しみだ。
    ローレンツ力という言葉を覚えた。フレミングの左手の法則で向きを確認できるもの。
    説明できるほど理解をしていない。量子力学とともに理解を深めたいと思った。"

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著者プロフィール

藤井大洋:1971年鹿児島県奄美大島生まれ。小説家、SF作家。国際基督教大学中退。第18代日本SF作家クラブ会長。同クラブの社団法人化を牽引、SF振興に役立つ事業の実現に燃える。処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングし、注目を集める。その後、早川書房より代表作『Gene Mapper -full build-』『オービタル・クラウド』(日本SF大賞受賞)等を出版。

「2019年 『AIが書いた小説は面白い?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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