誰も死なないミステリーを君に (ハヤカワ文庫 JA イ 13-1)

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150313197

作品紹介・あらすじ

災厄で死ぬ人がわかってしまい、死を見続けてきた少女・志緒。ぼくは、死が予期される人を「密室状態」の孤島に閉じ込めて救う!

感想・レビュー・書評

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  • 回避可能な死の予兆〈死線〉が見える、遠見志緒。
    佐藤は彼女とともに、死の要因をひそかに取り除く活動をしていたが……。

    緊急度の高さもわかるからこそ、彼らの行ったことが、死を遠ざけたかどうかわかる。
    推理と実践が、おもしろかった。

    同時に〈死線〉が見えた、佐藤の母校の文芸部出身の4人組を、無人島に連れて行って、死を回避させる。

    やや強引だが、意図的に、しかも安全なクローズド・サークルを作り出す。
    いかにもミステリだけれど、普通と違った設定も、新鮮。

    青春らしい伏線もちょこちょこ回収。
    おもしろいミステリ。

  •  志緒は人の死期がわかる(死線が見える)。ただし、自然死(寿命)ではない災害、自殺、殺人等の回避可能な「死」。佐藤は彼女の理解者で推理力を駆使し、死の回避に奔走する。誰も死なない、いや死なせない青春ミステリー。

     ツッコミどころは多々あるが、読者を上手く(?)ミスリードしている。伏線の回収も上手いと思う。前のほうを読み返してしまうこと必須。

     読後感はさわやかというか、じんわりと心に染みてくる。シリーズであと2巻出ているので、そちらも読んでみたい。

  • 「僕たちはこれから、誰も殺されていない連続殺人を止めなくてはならないのだ」
    寿命以外の死の予兆が見える志緒と、死を回避させる僕こと佐藤。ある時、志緒が大学で4人同時に予兆を見て──。

    秀桜高校文芸部の卒業生4人に浮かぶ死の予兆。“そして誰もいなくならない”ため、佐藤たちは4人を無人島に招待し、安全なクローズド・サークルを作った。しかし、発端は高校時代に発生した不可解な墜死事件に続いていた。真相を紐解いて、誰も殺されず、犯人でさえも救う未来を掴めるか?!

    危険なクローズド・サークルは数あれど、安全な無人島だって?!本当に?となるアイデアが面白い。ライトな語り口に、主人公たちのかけ合いも軽快。すらすらと読めると油断していたら、やられた!と声を上げていた。このタイトルの意味に気づいた時、海より深く蒼い青春の塩辛さが沁みてくる。謎が解けると、もつれていた人の縁もまた自然とほどけていくのが素敵だった。これは最初から読み直したくなるやつ!

    無人島のクローズド・サークルということで、『そして誰もいなくなった』のオマージュもあり。罪と罰をテーマの一つにしていて、それを含めて読み解くと対照的な作品になっているように感じた。現代の処罰感情や厳罰化を求める声の高まりがある中で、この作中で示された一つの見方は納得感があって好き。

    p.46
    「誰でも恋をしている時は、それが運命の恋だって思うんだよ。恋をする度にみんなそう思うの。運命の恋だと思わずに、恋愛する人なんていない。毎回が運命の恋なの。だから──」
    少女はまっすぐに青年の横顔を見つめる。
    「その恋が終わっても、また、次がある」

    p.146,147
    「そうだね。この国には死刑制度があるけれど、一人の人間を殺しても死刑に処されない人がいる。むしろ、死刑にされない人の方が多い。それはなぜか?」
    フードの少女は少し黙ってから続ける。
    「私たちが他人を許せる生物だからだよ」
    僕はその言葉の意味を考える。
    「この国の法律は、天秤の片方に罪、もう片方に罰と“許し”をのせて釣り合わせるんだ。だから、罪と罰だけを比べても釣り合っていないように見える。“許し”とは何か。それは“人を信じること”だよ。罪を犯した人が、反省して、更生して、社会復帰をして、前よりも良い社会の一員となる。誰かの目を潰したその人の目を奪わずに、もっと人の役にたってもらう。それができると信じて許すんだ」
    「そんなのは、ただの理想だ。反省も更生も社会復帰もせず、同じ罪を繰り返す人だっている。そんな人を信じたばかりに、より悪い結果になることだってある」
    脳裏に父の姿が蘇る。
    「でも、夢や理想のない未来に、希望はないんだよ。信じてくれる人がいれば、反省や更生や社会復帰できる可能性がある。でも、誰も信じなければ、そんな可能性は皆無だ」

  • 人の顔に“死”の兆しが見えてしまう少女・志緒と出会ったぼくは、ふたりでその運命に少しだけ干渉し、死を回避させることを続けている。

    ぼくの出身高校の文芸部に属していた4人の男女に“死線”が見えたことで、彼らを同時に救うために皆で無人島に滞在する計画を立てたのだが…


    井上悠宇さん、初読。
    ハヤカワだし、ただの日常ミステリじゃないだろうし!と思って手に取った。

    …むむ、なんというか…普通だった。
    死が見える少女と孤独な少年の大奮闘…でもないし、二人の恋…でもなく、一歩=チホ、フードの少女≠志緒とか、細かい引っかけがあったものの、薄味…

    志緒のお父さんが魅力的だったので、『遠見一族』の物語だったら良かったのかも。

  • 高校唯一の居場所の屋上で佐藤はお嬢さま学校の制服を着た、志緒に出会う。
    志緒は人と視線を合わせると、相手の顔に死線が見えた。死線の現れた人間は間もなく死ぬ。
    大学生になった佐藤と志緒。彼らは、これまで、たくさんの人から死線を消してきた。
    そんな中、大学で見かけた死線の出た人々。
    2人は彼らの死を回避するために動き出す。

    クリスティの名作をなぞる様に進むお話。
    話があちこち飛ぶ様で落ち着かなく、2人の思わせぶりな会話も深読みすべきなのかモゾモゾしてしまう。
    ミステリ部分はともかく、最後に明かされる佐藤の恩人「ノンシュガー」と志緒の仕掛けにはニヤリとした。

  • 登場人物の名前やちょっとしたエピソードが謎を解く鍵になる。
    物語の構成、小話など読んでて面白いところはたくさんあった。
    しかも話がトントン拍子に進んでいくのも読んでて楽しい。
    途中で結末が読めてしまうのがミステリーとしてどうかなって感じのところはある

  • タイトルとあらすじで衝動買い。

    人の死線(死の兆候)が見える女の子と、
    一緒にそれを回避して死線を消す男の子の話。

    短編かと思いきや、2人のバックグラウンドが繋がる『過去の事件』が全体を通してのメインになっていて、先が読めそうで読めない展開が読んでいて面白かった。
    落ち着いた主人公の語り口の中でも冷静な『コミカル要素』があるのも読んでいて心地いい。こういう主人公視点の小説は読みやすい。

    名前に関するアレコレもこういうのすごく好きです。
    結末をわかったうえで、後で時間を置いて再読したい。

    ところで佐藤くんの名前はなんだろう
    玄光(くろみつ)とかどうだろう



    【22.12.09】
    再読。
    メルカリに出品して、買い手がつくまで最後にもっかい読もうかと思ったらなかなか面白かった。
    内容(というかオチ)をすっかり忘れていたので楽しく読めた。
    そしてミスリードにまた引っかかる(笑)

    レビュー書いたのも忘れていて、いいレビューだと思ったら自分のだったのは恥ずかしいのでこっそりと。ほぼ同じ感想だけど、昔の自分の感想の方が言いたいことをしっかり言えている(笑)

    今回再レビューして、続刊が出ていたことを知ったので購入したい。出品を取りやめたくなってきた。

  • こういうライトなミステリーを時々読んでみるんですが、読後、いつも同じように暖簾に腕押し感をモヤモヤと抱えてしまうのです。むう。【2023年3月24日読了】

  • 面白かったー。連作短編集みたいなのかな?と想像してたのだけれど、(セルフ)クローズドサークルのミステリーだった。散りばめられた出来事が繋がっていく。後半予想がついたところもあるけれど、それでもびっくりすることがあったり。とても読みやすく、面白かった。
    もっとふたりの話が読みたいなーと思ったら今月続刊出るのね楽しみ!

  • タイトルにある"誰も死なないミステリー"が好きなのでタイトル買いしてしまった本。

    人の"死の運命"が見える遠見志緒と佐藤くんが死の運命を回避しようとする物語。字面で見ると壮大だが、あくまでミステリーの延長線。"死の運命"が見えてしまい、ミステリーであれば、殺人事件などに発展するような話をいかに人を死なせずにするか、という感じ。

    大きく二部構成となっており、1部はプロローグとして、遠見志緒の能力とそれをどのように解決に導くかを短くまとめた話。
    2部がメインで、同時に死の運命が見えた4人と共に無人島にいくという話。
    2部はアガサクリスティのそして誰もいなくったをオマージュしており、本書の中でもそのような話が登場する。

    能力はいいとして、さらっと無人島が用意出来たり、終盤の推理パートでは全員がおとなしく全員の話を聞くような不自然な状況だったり、よくよく考えると違和感を覚える箇所があるが、全体を通しては読みやすく面白かった。

    罪と罰がテーマとなっていて、意外と考えさせられる。
    登場人物それぞれがそれぞれに自身の罪と罰について考えていて、どうすれば償えるのか、もしくは償えないのかということを葛藤している。
    誰も死なないミステリーとして誰も殺さず殺されず、全員が救われるというのが一つの答えなのだろう。

    武藤一歩の正体は最後まで分からなかった。わかりやすく伏線が張ってあったのに気づかなかったので、判明した時には一定のカタルシスが得られて心地よかった。
    また、エピローグには武藤一歩のシーンや、遠見志緒と佐藤くんの出会いのシーンが記載されていてわだかまりもなくすっきり終えていることも高評価。

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著者プロフィール

2011年「思春期サイコパス」でスニーカー大賞優秀賞を受賞し、翌年『煌帝のバトルスローネ!』でデビュー。著書に「城下町は今日も魔法事件であふれている」シリーズ、『きみの分解パラドックス』『さよならのための七日間』『やさしい魔女の救い方』「誰も死なないミステリーを君に」シリーズがある。

「2023年 『不実在探偵の推理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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