2010年代SF傑作選1 (ハヤカワ文庫JA)

制作 : 大森 望  伴名 練 
  • 早川書房
3.71
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150314156

作品紹介・あらすじ

2010年代の日本SFを代表する短篇20作を、大森望&伴名練が選出! 全篇解説を加えてこの10年の豊穣を集成した傑作アンソロジー

感想・レビュー・書評

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  • 名作揃いで笑ってしまうわけですが、個人的にはアリスマ王が好みです。

  • 素晴らしい作品ばかりでした。日本のSF作品はほとんど読んだことがなかったので好きな作家さんが増えてしまった。この当時のSFだとファンタジーやラノベやゲームなどと重なる要素が多いのかと思ったが、そんなことはなくてしっかりとした作品ばかりです。

  • アンソロジーでは、いろいろなことがある。

    読んで嫌な気分になったのは久しぶり。
    受け付けないものは受け付けない。
    ダメなものはダメだった。

    ただ、“読んでみないとわからない”という点では、読んだことによって確認できた。

    どれとは言わない。

  • 2010年代SF傑作選2部作の「1」は若手編とのこと。正直、ちょっと期待してたのと違って、なかなか読む速度が上がらない収録作品が多かったけど、多様な作品が読めて、気になる作家さんが見つけられれば丸儲けかなと。

  • やべえくらい文字通り傑作選。

    小川一水「アリスマ王の愛した魔物」 ★★★★★
    • 似たような設定の小説を読んだことがないと言う意味でもすごい。物語は「むかしむかし…」で始まるが、いつの時代のどこの話かは不明。
    • 数学に魅せられた小国ディメのアリスマ王は、従者の助言に従い、算廠(さんしょう)という大規模な計算機関を建て、あらゆる可能性を計算し、他国をどんどん征服していく。

    上田早夕里「滑車の地」 ★★★★★
    • 地上が冥海という泥海に覆われている時代。地下には地下帝国があり、人類はそこで繁栄している。地上で暮らす人間は貧しく、また泥に潜む人食い生物に怯えながら暮らす。泥海から突き出した塔に人類は住まい、塔から塔に渡されたロープを滑車で移動する。地上暮らしの人類は新たな大地を求め、飛行機を創る。
    • 奇怪でありつつ、どこか美しさのある描写が上田早夕里らしい。

    田中啓文「怪獣惑星キンゴジ」 ★★★★★
    • 怪獣が暮らす惑星でジュラシック・パークの如く、怪獣を呼び物とするテーマパークがある。一番人気のガッドジラに人の脳を移植したヒューマジラが何者かに殺害された。探偵グレーが自らヒューマジラとなってその謎を追う。
    • おバカなSFかと思いきや、結構なシリアスミステリー展開で、最後まで飽きない。

    仁木稔「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち 」★★★★☆
    • 妖精と呼ばれる人工生物が街中で仕事をしている。妖精に対する反応は人それぞれあり、妖精容認派(推進派と保護派)や撲滅派などがいる。残虐な撲滅派ケイシーが主人公。感情移入できない(共感できない)キャラクターを主人公とするのはなかなか珍しい。

    北野勇作「大卒ポンプ」 ★★☆☆☆
    • 軍の秘密実験によって人間ポンプにされた人が地下で排水を吐き出し続けていたが、その人が脱走した。みたいな話なんだが、その発想はなかなかイカれているが、結局「なんの話やねん」感は拭えない。

    神林長平「鮮やかな賭け」 ★★★☆☆
    • 地球外知的生命体ならぬ、超世界的生命体がこの世界を仮想的に作り、すべての人類も仮想である、というような設定の中で、その生命体の化身であるオバアとの賭けで勝負をすることになる私。
    • 設定は面白げなんだけど、どうも展開が今ひとつだったような。

    津原泰水「テルミン嬢」 ★★★☆☆
    • 能動的音楽治療を受けた眞理子は、体内にミジンコと呼ばれる超小型機器を組み込んでいるが、由利夫から発せられる波動らしきものにだけ共鳴らしき反応をしてしまい、アリアを歌い出してしまうという。この謎を解明するべく、学者共々研究をして…みたいな話。
    • SFらしい謎理論をしっかりと組み立てつつ、ロマンチックな展開もありつつ、結局のところこれはなんだったのか感で終わる。(「五色の舟」が強烈だっただけに期待しすぎてしまったか)

    円城塔「文字渦」 
    • またもや理解を超えてきた…ちょっとこれは評価を保留して再読しよう。
    • 世界遺産でもある始皇帝の墓陵と数千体の俑(よう)。あの世界史の資料集で見たやつだ。俑作りの天才(そのまま俑と呼ばれていた)と、始皇帝・嬴政の物語。

    飛浩隆「海の指」 ★★★★★
    • 21世紀に存在した世界はことごとく、消滅しており、いま世界は灰洋(うみ)で覆われている。世界には1000万人ほど人類が生存してるらしい。
    • 「海の指」が発生すると海から様々な物語が押し寄せてくる。海に音を当てることで海に沈んだものを引き寄せられる。ある時、大きな海の指が発生し、町を飲み込む。かつて死んだ昭吾が灰洋から現れ、志津子を狙う。

    長谷敏司「Allo, toi, toi」★★★★★
    • 小児愛者チャップマンにITPを埋め込み、更生しようとする。「好き嫌い」という感情の本質について

  • 大森望氏による序文を初めに読んだから、という先入観も多少あるかもしれないが、もちろんすべてがここ10年以内に書かれた作品であるにも拘らず、全編を通してどっしりした、どこか懐かしささえ覚えるようなヴェテラン感に満ちたアンソロジーだった。
    上田早夕里氏の「滑車の地」には、椎名誠氏の古典的名作「水域」の系譜に連なっている様が見られたし(さらに辿ればオールディスの「地球の長い午後」だが)、あるいは飛浩隆氏の「海の指」も深層の出発地はその辺りにあるのかもしれない。
    仁木稔氏「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」は、未読の連作集に手を伸ばす動機に大いになり得る魅力がある。
    掉尾を飾る長谷敏司氏の「allo, toi, toi」については、SFの括りに留まりながら古今問わずに普遍的かつ根源的な命題に迫っており、その意気も含めて読み応えは充分だが、如何せんその言語化が著者のみに深い理解が可能であるような書かれ方に見え、不特定多数の幅広い読者が共感できる語彙を選択すればなお良かったのに、とちょっと残念。
    設定そのものからしてイロモノ的な田中啓文氏「怪獣惑星キンゴジ」も面白く読んだが、「星間旅行や移住が可能な時代に、監視カメラが暗闇では映像を撮れないっておかしいいやろ!」と真面目にツッコんでしまったのは無粋か(笑)?

  • 再読が多い。
    『滑車の地』上田早夕合、『アリスマ王の愛した魔物』小川一水 は安心して読めるな。
    『allo,toi,toi』長谷敬司 はやっぱり衝撃的。

  • 2010年代SF傑作選1(ハヤカワ文庫JA)
    著作者:大森望
    早川書房
    2010年代ベストセラーSFアンソロジー第1弾
    タイムライン
    https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • ――

     1のレヴューしてねぇじゃん。

     表紙の名前を見れば満足、と云えるくらいのベスト・オブ・ベスト。1巻はベテラン勢揃いということもあって、質実剛健。現代の日本SFのメインストリームを感じることができる格好のガイドブックになっていると思います。
     SF何読めばいいかなぁ? というひとは取り敢えずこれを読みましょう。そして気に入った作家の短編集へ、長編へ、誘われていくとよいですよ。さぁさぁ。


     やはり一番のお気に入りは小川一水「アリスマ王の愛した魔物」。SFでありながらどこか御伽噺のような、けれど仄暗い怪しさも持っている千一夜的な、あらゆる物語の要素を持った傑作のひとつだと思っている。
     上田早夕里「滑車の地」も鮮烈で、飽和しそうなくらいの世界観の中に現代と変わらぬ、変わりたくない生命を描く良作。
     神林長平「鮮やかな賭け」。スピーディに入れ替わり、落着したようで展開する、まるで空戦をみているかのような筆致は神林節、と云えるのでしょう。雪風のイメージ強すぎィ。
     円城塔「文字渦」は、個人的には文字“禍”の表記のほうが合っていると思っているのだけれど、ともかく表題とする短編集をレヴュしているので気になる方はそちらをどうぞ。
     飛浩隆「海の指」も、モチーフこそあまりにはっきりとしているけれど、その中にこそある残した者、残された者の情感をSF的技術に依ることで繊細に書き出していて名作。これぞSFの役割、と思う部分もある。

     流石さすが、と何度云っても足りないけれど、一番の流石、はこれらを一冊にまとめてくれたことだと思います。
     ひとに本を貸すのが苦手なわたしのような人間には必携。何冊か持っていてもいい。

     ☆4.2

  • それぞれの感想です。
    ●アリスマ王の愛した魔物(小川一水):人が行う計算機という発想が面白く、興味深く読ませていただきました。計算機はどんどん大型で複雑になっていきます(ここは実際の計算機と違って)。

    ●滑車の地(上田早夕里):人が追い詰められている世界。人間が破壊した環境を泥棲生物が浄化していたり、冥海をさけて人が生活していたり、空飛んだり、少し風の谷のナウシカっぽい。読後感も◎。

    ●怪獣惑星キンゴジ(田中啓文):いやーなかなか斬新なストーリーです。主人公が怪獣になっちゃうし。しかし、果たして知性が高いのはどの種族なのか。ラストは、そうなるか!と思いました。面白かったです。

    ●ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち(仁木稔):環境破壊が齎す格差社会。他人ごとではありませんね。しかし、裁判を絡めて展開される、論破が面白い!です。

    ●大卒ポンプ(北野勇作):う~む。これは社会の歯車になってしまっている人の反乱のお話なのだろうか。不思議な感覚です。

    ●鮮やかな賭け(神林長平):今、生きている世界がリアルではなくバーチャルだったら。。。 わりとよく聞くストーリ展開ですが。長~い宇宙の旅は、やっぱりリアルでは無理かな。。最後は個人よりも集合体が優先されるんだろうか。今、生きている世界も怪しいかも!?

    ●テルミン嬢(津原泰水):普通と違う体質というか、世間と馴染めなくても、生きていくことに苦労しても、いや、だからこそ人を好きになる(なった気になる)のだと思いました。

    ●文字渦(円城塔):これはよくわかりませんでした。

    ●海の指(飛浩隆):ああ、「廃園の天使」の世界だなあと思いました。なんていうか、人との思い(人ではなくとも思考するモノの思い)というのが一番強いのかもしれません。

    ●allo, toi, toi(長谷敏司)この話は、ある意味、新鮮でした。言葉って曖昧ですね。そして、人は自身の世界でその曖昧な言葉を紡いで世界を作っている。。。 こりゃ、お互いに理解しあえない筈です。

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