君の話 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2021年11月3日発売)
4.22
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784150315054

作品紹介・あらすじ

映画化作品『恋する寄生虫』
著者の最新作、待望の文庫化
架空の青春の記憶を植えつけられた青年は、その夏、実在しないはずの幼馴染と出会う。これは、始まる前に終わっていた恋の物語。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

記憶を改変する技術をテーマにしたこの作品は、架空の幼馴染との出会いを通じて描かれる切ない恋物語です。主人公は、真実と虚構が交錯する中で、愛情がどのように生まれるのかを探求します。読者は、登場人物たちの...

感想・レビュー・書評

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  •  一本の映画を観終え、観客席で吐息をもらして立ち上がるのが緩慢になるような読後感でした。
     エターナルサンシャインのような雰囲気を感じて余計にそう思えてしまったのかもしれません。
     今作も他の三秋さんの作品同様に落とし穴の中で安寧を見出してしまう退廃的な人間に刺さる内容でした。
     最近物語ばかり読んでる自分に対して「こんなことしてて意味あるのか?」と疑問を感じていました。そんな疑問のなか本作を読んで自分の人生で欠落しているものを補うために読んでいることに気付き、さらに物語の終わりに疑問へのひとつの解答を得たように感じました。本当に三秋さんの作品は自分にとって劇薬であり、定期的に接種しないと現実をもがけないんですよね。それが毒であるとはわかってるんですけど。

  • 記憶改変技術によって作られた架空の記憶。その中に登場する幼馴染が目の前に現れた。幼馴染との記憶は本物か疑いながらも主人公は恋に落ちていく。後半では女の子目線での恋が描かれる。

    「一度も会ったことのない幼馴染がいる。」そんな一文から始まる存在しない幼馴染の話。記憶を弄る薬を服用したから何が真実で何が嘘かは分からない。複雑で切ない恋。

  • 偽りの記憶、義憶。そんなものがあるSF恋愛小説。そんな植え付けられた記憶によって巡り合う二人なんだからドラマチックなわけが無いと、思っていたんだが不思議と惹きつけられた。
    運命の人を作為的に用意する、という状況から愛情が生まれるのか、そんなわけが無いと思う自分も否定された感覚に陥る。あり得た。

    このまま死にたくない。
    誰かに必要とされたいという思いは、やはり死ぬ間際に強くなるのだろう。それが全くの関わりのない赤の他人であっても。

    もしもでも義憶を作って欲しいと思う自分はやはり寂しいのかも、もしくは現実逃避。でもそんな青い気持ちをも呼び起こしてくれた。

  • 読んでいて、人の頭の中って現実とフィクションの違いをどこまで正確に認識しているんだろう…と考えてしまいました。
    自分にとって都合のいい記憶だけを覚えている場合だってありますよね。
    本人たちが幸せなら、嘘でもなんでもいいんじゃないかな…と思える物語でした。

  • 三秋縋の小説は、甚だしく虚構なのだけど、偽りのない人の想いがあって、読みたくなる。

    記憶を消したり、加えたり、思い出したり。
    そんなことを薬一つで、誰にでも叶えられてしまう世界なんて、人が人の原型を保てなくしてしまうようなものだ。

    主人公の家族はそうやって、主人公の存在を抹消し、自分だけが主役の世界を楽しんでいる。

    自分の記憶が、本物なのか、偽物なのか、真剣に疑わなければならない中で、どうしてヒーローになり、ヒロインになれるんだろう。
    そこに、人間を感じる。

    正直、いつまで経っても先に進まない主人公の疑心暗鬼にはイライラするし、ひっくり返ったかと思いきや献身的すぎる姿勢にだって納得出来ない。

    でも、自分の記憶の、たった一点を幸せに染めてくれたそのことのためなら、人間がコロッと変わったっていいじゃないか、となんだか分かったような気もしてしまう。

    他者がいて、私は存在する。
    記憶は、そのための縁なのかもしれない。

  • 「始まる前から終わっていて、終わる前から始まっていた」とはどういうことだろうと思いながら読んでいたが、読み進めているうちにその意味がわかっていった。 
    僕側の話までは感情移入しながら読めたのだが、君側の話になってからSF感が無理やりすぎてすこし引いて読んでしまった。
    だがこの作品で綴られていたように、人は皆運命の人を探していて、その人に会えないで生涯を終わる人もいるが、会えた時に見逃さないようにすることが大切だということには納得できた。
    僕的には自分の恋人や大切な人を運命の人だと思えるくらい好きになることができれば、外からどう思われてもその人が運命の人だと思う。

  • 夏の終わりに読み返そうと決めていた一冊です。
    〈百パーセントの相手と出会えていないなら、その相手をつくってしまえばいい〉
    ということで、孤独な少女と孤独な少年の、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた、恋の話。

    すべてを読み終えてから冒頭の引用に戻ると、すごくしっくりくる。若き天才義憶技工士の灯花による、どこまでも切実で独りよがりで愛おしい最初で最後のたくらみに胸が苦しくなった。
    最後から二つの章がそれぞれ「君の話」「僕の話」と題されているのだけど、ここで物語がひっくりかえる感じは、悲しくもあり救いでもある。
    真相を明かさずに閉じてしまったとしても、それはそれでメリーバッドエンドの余韻があって良かったとは思う。それでも、灯花の闘病記でもある「君の話」と、彼女の死後を描く「僕の話」まで書かれているのは、ひと夏のボーイミーツガールを完璧に閉じ込めるための結末として完璧だったように思う。

    単行本で読んだ際のレビューを読み返してみたら、あまりに感動してなんにも言語化できない、と白旗をあげていて笑った。
    それがほぼぴったり七年前。現実にはヒーローもヒロインもいるわけない、と、ほぼ諦めかけているし、そもそもそんな特別な相手とぶじに出会えたとて、私はまたどこかちがう場所にいる夢幻の恋人を求めだしてしまう気がする。
    でも、ほんとうにそれが運命の相手だったら、そんなことないのかな。百パーセントの誰かだったら、こうした欠乏感、渇望感を満たしてくれるのかな。わからない。
    わりと青春ゾンビ側の人間ではあるけれど、当時は実らなかったものを大人になってから収穫してしまった、ということがいくつかある。あれらはぜったいにもっと早くに起こる"べき"だった。
    過去に戻ってやり直したい、というありふれた願望は、義憶を手に入れられる世界になればすべて解決すると思うし、むしろそれ以外にいくつでも新たに摂取できるなんて最高のディストピアだと思う。
    「ここにいてもいい」「ここが自分の居場所だ」と思えない自己肯定感の低さおよび青春エピソードの少なさは、都合よく捏造された義憶に埋もれることでしか満たされないなんて、千尋くんの両親に共感してしまうね。

  • 偽の記憶…それはこうやって物語を読んでいることに近いのかも。想像する。妄想する。
    この二人はそれを現実にしていったのね~
    寂しい二人が築き上げた素晴らしい虚構
    せつないなぁ
    7歳の時に本当に出会えてたらよかったね

  • ちょっと違うかも知れませんが、自分の青春時代に流行ったセカイ系作品を読み終わった後と同じ、なんとも言えない読後感を味わえました。主人公とヒロインにとっては世界以上に大切な出来事があったのに、世界は何も知らないし変わらないというこのモヤモヤ感が心地良いんですよね。SFガジェットの活かし方も素晴らしいですし、この作品大好きです。

    キャラもセリフも、設定も、ストーリーもめちゃくちゃ刺さったんですが、特に好きなところは、死の恐怖に直面した際に灯花が放った「私の死後、その死を嘆き悲しみ、一生消えない傷として心に刻みつけて欲しかった」という嘆き。その後、彼女のしたことを含めてあまりにも自己中心的な想いだと思うんですが、その気持ちも痛いほどわかってしまうこの独白に非常に胸を打たれ、一番惹き込まれたかもしれません。こういうキャラクターにとても弱いんですよね。


  • 君の話/三秋縋

    初めて読んだ三秋縋さんの小説です。

    設定が変わっていて、義憶技工士によって
    作られて義憶という嘘の記憶を買い求めて
    自分の本当の記憶にする時代。

    人は心の拠り所として、望む記憶を捏ったり、
    記憶を消したりすることも選べて、
    人は自分が望む記憶を手に入れれるように
    なっていた。

    そんななか、主人公は記憶の中の幼馴染に
    現実世界で出会って戸惑う。
    義憶だと分かるので接触を拒むが、そうと
    知りながらもどうしようもなく彼女に惹かれて
    しまう。

    義憶の中の幼馴染が現実に現れてしまった理由。

    僅かな関わりから始まって、深く繋がってゆく、
    あまりにも優しい優しい嘘の物語。

  • 途中までは近い将来こういう世の中になるんだろうか?とかこんな仕事が出来るのか?とかワクワクと想像したり、その一方早川書房だし薄ら寒いようなちょっと怖い話なのか?と思って読み進めていったら、孤独を抱えた似た者同士の男女のくすぐったい恋物語でした。
    理想の青春、家族を持ち合わせてる人はどれくらいいるんだろう?そこを埋めようと悪あがきしたり、妄想するのも自分らしさと思っていたけど、それさえも他人に委ねてお金で買える世の中になったら個性ってなんだろうなって考えてしまいました。

  • ☆8つくらい。とても良い作品だった。
    SFとしての設定自体は、それほど突飛ではなく、他にも似たような小説はあるのかもしれない。
    でも、その世界観の説明が自然で、スルスルと頭に入ってくる。物語の世界に入り込める。
    前半は、都合の良い記憶による仮初の幸福を、一種の虚しさを片隅に覚えながらも、自分ごとのように、主人公と同じ目線で愉しめた。
    後半は、謎が少しずつ明らかになり、複雑な紐が解けていくように、ミステリのように読んだ。新型ADの設定とかはちょっと都合が良い気もしたが、最終的に、得られる中で最も幸せな形を選べた2人を見守るような気持ちでいた。
    幸せな空想という、SFが与えるものの一つの名作だと思う。もっと著者の本を読みたい。

  • ・三秋縋さんらしい悲しく優しい話だった。
    ・他の作品同様、物語の前半で恋愛が進みつつ、いくつか謎が深まってゆき、後半でそれの解明とともに、恋愛心情が掘り下げられていく構成で、とても面白い。
    ・今まで読んだ三秋さんの作品と異なったのは、他は"悲しいハッピーエンド"という印象だったが、この作品は"幸せなバットエンド"という印象を受けた。

    • 中東 幸智さん
      ''幸せなバッドエンド''
      この言葉はこの物語にピッタリだと思いました。
      ''幸せなバッドエンド''
      この言葉はこの物語にピッタリだと思いました。
      2025/05/21
  • 夏凪灯花とは一体、何者なのか。違和感を抱えて読み進めるうちに、次第に不器用な二人のやり取りから目が離せなくなった。
    どこまでも切なく、穏やかな結末。
    心に優しく灯るような、温かく愛おしい読後感だった。

  • 三秋さんの本は(悪く言えば)どれも同じように、社会不適合な主人公とヒロインをめぐるお話で、本書も例に漏れず切なく悲しい(そしてより暗い)雰囲気をまとった物語である。ただ、何故かそこに引き込まれるのも事実で、本書のキーワードでもある「優しい嘘」が三秋さんの書く物語に共通する思想・魅力として読者の胸に訴えるのかもしれない。「義憶」という発想も面白い。(現実になったら中毒とか負の面が問題になりそうだが…)

  • 義憶のある世界に生きた、ひとりぼっちの二人の話。
    丁寧な言葉を使うなーって印象。
    レーテ、グリーングリーン、ヒロインとかの義憶のネーミングセンスが素敵。

  • 灯花の人生と千尋人生はものすごく孤独の匂いがして少し胸が締め付けられた
    でも孤独だったからこそ2人は出会い恋をしたのではないかなもしどちらが幸せだったら出会わなかったかもしれない
    そう思うと運命ってあるんだなと思わせてくれた

  • 偽りであっても本物であってもここまで想える相手がいるのは幸せなんだと思う。
    二人とも救われたとても優しい嘘に心温かくさせられました。
    僕はハッピーエンドだとおもっているけど三秋さんの作品は辛いのに最後には登場人物がとても幸せそうでいつも気持ちがぐちゃぐちゃにされる。「君の話」も心に刻まれた大切な作品になりました!

  • 会社の先輩からお借りした。
    夏に読めて良かった。恋がしたくなった。

  • 読み進める手が止まらなくて、ワクワクしてページをめくった。
    B面からは最後までずっと切なくて、読後もしばらくは忘れられない切なさだった。心が温かくなるけど、痛さもあった。

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著者プロフィール

WEBで小説を発表していた作家

「2015年 『僕が電話をかけていた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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