僕が君の名前を呼ぶから (ハヤカワ文庫JA JAオ 12-5)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 703
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150315252

作品紹介・あらすじ

10月7日、劇場アニメ2作同日公開『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』待望のスピンオフ長篇。別の並行世界を生きた、もう一つの栞の物語

感想・レビュー・書評

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  • 『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』に続く待望のスピンオフ長編……とあらすじにも書いてあるのですが、違います
    完結編です、これ

    オカルトの要素もあり、それを作中の理論によって解決するところは推理小説のようでもあり、でもその理論はSFで、そして恋愛小説としても素晴らしい

    この幸福な読後感と言ったらありません
    いい年して思わずうるうるぽろぽろしてしまいました
    そして本棚から『僕が~』をとりだして、パラパラと読み返してはニヤニヤとしてしまいました

    マジで面白かったです、おすすめ
    『僕が~』『君を~』を読んだ人ならこの作品も読むべきです!絶対に!
    読んでない人は……どうなんだろう、どこまで楽しめるのかな?
    それはそれで読書体験だけど(そもそも『僕が~』と『君を~』は読む順番で作品の印象が変わるという触れ込みでしたし)でも、どうなんだろうね実際

  • 僕愛と君愛の映画に合わせたのかはわかりませんが、本編とは別の並行世界を描くスピンオフ小説です。栞を主人公として幼年期から老年期までの長いお話です。この本はこの本でまとまっているので、多分本編を知らなくても大丈夫です。

  • スピンオフだそうだが、これでやっと完結したような、しっくりする読了感だ。

  • 本編を映画で2本とも見たので、スピンオフ版を読んだ。

    本編の内容は、ざっくり言うと並行世界の存在が公認されている世界で、パラレルシフト(並行世界の移動)の事故により交差点の幽霊になってしまった栞を助けるべく主人公の暦が奔走するという物語だ。結局、暦が出した結論は「栞と自分が会わない世界線に行くこと」だった。
    この小説は暦と出会わなかった世界線の栞の物語だ。タイムシフト(時間の移動)をしてまで栞を助けようとしたことが、正しかったのかどうか映画では分からなかったが、この小説では暦も栞も自信を持って「今、私は幸せです」と答えていて、本当に良かったと思った。

  • 別の世界に生きた栞の物語。栞と暦が出会わなかった世界で、ラストが繋がって、それを書きたかったのね。

  • 『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』を読んでから読むべき物語。どちらの状況も読んでいるからこの物語で感じた幸せが尊いもので、途中から涙が止まらなかった。
    所々に前作と繋がる要素も散りばめられているので、考察が好きな方にはもってこい。
    素敵な物語に出会ってしまったと思った。

  • ★死ぬまで君の名前を呼び続けます。(p.231)

    3つの魅力(1)並行世界というもののありよう、虚質と世界をどう考察するかへの好奇心。(2)二時間で読めます。メモしながらなので実際にはもっと短時間でラクに読めるでしょう。(3)虚質との結びつきが弱く頻繁に小さなパラレル・シフトを繰り返し存在感の薄い栞の存在を確立させる方法は?

    【一行目】久しぶりに、この日記を書きます。

    ■世界観■
    世界には揺らぎがあり人は気づかないうちに並行世界との間を行ったり来たりしていることが実証されている。遠い世界への移行はそう多くは発生しないが近隣の世界には日常的にちょいちょい行ってすぐ戻ってくるようだ。ちょっとした記憶違いや勘違いの多くはこのせいである可能性もある。この並行世界は自然にあるものなのか、誰かが何か選択したときのみに発生するものかどうかは作品の記述だけではよくわからない。

    ■並行世界についての簡単なメモ■
    【IEPPカウンター】自分が生まれた世界をゼロとし、現在相対的にどれくらい離れた世界にいるかわかるカウンター。あくまでも目安。生まれたときにつけさせられるウェアラブル端末にインストールされる。便宜上1、2と区切られているが実際はグラデーションのような気もする。誰かの選択によって並行世界が生まれるならその場合は1、2と区切られるのでかまわない。
    【アインズヴァッハの門】その門を通るだけで誰でも殺人鬼になってしまう門。
    【アインズヴァッハの揺り籠】通称IPカプセル。他の並行世界に移動できる。犯罪に使えそうな危険な装置でもある。命名は佐藤絃子所長だが虚質科学研究所の所員たちはIPカプセルと呼んでいる。
    【命】佐藤栞《温かさと冷たさ。あなたの言う通り、きっとその温度差が、命の尊さなんだよ》君をp.42。《あなたが感じたのは、可能性の温度なんだよ》君をp.43
    【今留栞】『僕が君の名前を呼ぶから』の栞。佐藤絃子の娘。父親から見返りを求めないで他人を助けられるような人になりなさいと教えを受け困っている人を探すというどこか間違っている行為をするタイプ。自転車好きで旅行に「マイサドル」を持って行くほど。中学生のとき大学生の内海進矢と知り合う。高校や大学では存在感が薄くなりそこにいるのに気づかれないことが多かった。
    【内海進矢】大学生。科学として、民族史における超常現象(伝奇やオカルト)の研究をしている。中学生の今留栞と知り合う。敬語でしゃべるのが楽だというタイプ。
    【SIP】→シュヴァルツシルト半径
    【女の子】老人になった暦がある場所で出会った。即消えた。一瞬、「たんぽぼ娘」? とか思ったが。
    【科学】《お母さんは、鬼の話を否定するわけじゃないんだ。それが正しい科学の姿勢というものなのかもしれない。》僕が君のp.102。科学は否定も肯定もしないことかと
    【和音/かずね】→瀧川和音。
    【ギネス・カスケード】ギネスビールを勢いよく注いだとき泡が液体の中を沈む現象が見られることがある。
    【虚質科学研究所】祖父が亡くなったとき十歳の高崎暦がいきなりジャンプした研究所。父が勤めている。並行世界の存在を実証した佐藤絃子が所長となって設立した研究所。高崎暦や瀧川和音の親が所員であり、彼ら自身も後に所員となった。
    【虚質素子核分裂症】人間も含む、物体を構成する「虚質」が物体を離れてしまった状態。人間の場合には精神が肉体と離れているという状態で症状となる。
    【困った人を助けたい】佐藤栞がいきなり言い出したこと。助けるために困っている人を作り出しかねない勢い。
    【暦】→高崎暦/→日高暦
    【暦の父】研究者。虚質科学研究所の副所長。
    【暦の母】実家が資産家。
    【佐藤絃子/さとう・いとこ】虚質科学研究所所長。虚質の概念を九州大学理学部在学中に提唱した。昔のアニメ、ゲーム、ラノベが好きでそこに出てきた名詞を使いたがるので話がわかりにくくなる。
    【佐藤栞/さとう・しおり】『君を愛したひとりの僕へ』の栞。佐藤絃子の娘。心優しく、好奇心旺盛で、謎の行動力が発揮されることがある。
    【栞】→佐藤栞/→今留栞
    【シュヴァルツシルトIP】通称SIP。簡単に言うとある事象が発生した一定の半径内ではかならず同じ事象が発生するという範囲。たとえばSIPの相対値が22プラスマイナス10となっているとき自分の世界が0なので相対値が22離れている世界で事象が発生し、それと同じ事象が起きているのはプラスマイナス10、おおむね12~32の世界で同じ事象が起こっているというような目安。
    【修馬/しゅうま】今留栞と内海進矢の息子。
    【世界】内海進矢《世界は差違でできている》《世界は、あるものと、それでないものの差違からできている。その差違を形作るのが「虚質」であり、それを言い換えたのが「八百万の鬼」ということなのではないかと僕は考えています》僕が君のp.155
    【高崎暦/たかさき・こよみ】「僕が」の主人公。母に引き取られた暦。祖父の家で暮らしていた。地元は大分。両親は離婚したが離婚してからの方が関係は良好になった。並行世界に移行した十歳のときわりと早く理解したのでなかなか柔軟ではある。賢すぎて他者を見下しているところがあるので友人ができない。
    【宝箱】祖父が暦にくれた鍵のない宝箱。
    【瀧川和音/たきがわ・かずね】「僕が」のヒロイン。高崎暦の高校の同級生。暦が辞退した生徒総代をつとめた。成績優秀なAクラスでも常に首位の成績を取る。これまで話したこともなかったのにいきなり「暦」と下の名で呼ばれ驚いたがどうやらIP端末のカウンターで85離れている世界から来たと言う。そのくらい離れているともう異世界レベルらしいが? 「君を」では研究所に配属され暦が室長をつとめる研究室の部下になった新人研究者。その後ずっと共同研究者となった。
    【名前】内海進矢《存在を確立させる方法なんて、誰かが名前を呼ぶだけでいいんです。》僕が君のp.230
    【廃病院】穂尾付町の廃病院。鬼灯蓮が管理している。かつて子ども(どうやら鬼灯蓮の弟で鬼灯太郎というらしい)が神隠しにあった。中に祠がありその扉を開けることは禁じられている。佐藤絲子に調査が依頼されたが、虚質科学はそういうのに向いていないツールだと気が進まない。たまたま居合わせた娘の栞、内海進矢もともに調査についていったが栞の感覚ではヘンな場所で、同じ時間がリピートしていた。祠の周辺は虚質が不安定になっているらしい。警察が調査したとき祠を開けたらしいが中には果てしない闇があったとか。
    【パラレル・シフト】佐藤絃子が提唱したときは賛否両論、議論を巻き起こし世界中で研究され、わずか三年で並行世界の存在は認められた。人は日常的に無自覚に(比較的近い)並行世界間を移動している。その場合肉体は移動せず意識(虚質素子)のみが移動している。近い世界では移動期間は短い。この移動のことを「パラレルシフト」と呼ぶ。エンピツなどの物体もシフトしているが意識があるわけではないのでほぼ何事も起こらない。そのものが失われた世界にはシフトできない。ときおり歩いてる最中とかに世界が少しずれたような気がすることがあるけどそんなとき、もしかしたら? 頻繁にシフトを繰り返すと「シフト酔い」を起こすことがある。
    【日高暦】「君を」の主人公。父に引き取られた暦。栞と知り合い恋愛関係となるがとあるできごとで彼女を喪いなんとか取り戻そうと研究に没頭する。
    【並行世界の自分】他の世界の自分は自分と同一人物なのかという命題。それは自分でしょう。パラレルワールドはグラデーション的であっておそらく1とか2とかデジタル的に区切られているわけではないと思います。すべての自分はずっと繋がっている。重なっているのではなく繋がっている(と思う)。まず入れ代わることもない遠い自分もまとめて自分という存在をかたちづくっているのだ(と思う)。自分がいない世界に至るまでは。違って見えても一人の人間の手の形と足の形が違っているというようなもので。なんてことを考えてみてもパラレルワールドは所詮SF的想像に過ぎないけど、まあ思考としてはおもしろい。と、まだ半分読んだか読んでないかの時点で考えてみましたが暦君はどういう思考に落ち着くでしょう?
    【鬼灯蓮/ほおずき・れん】穂尾付町の廃病院の管理を任されている若い美女。弟の太郎が廃病院で鬼隠し(神隠し)に遭った。鬼灯家は輝智(かがち)の九名家を束ねる。
    【美智子】今留栞に大学でできた友人。
    【ユノ】暦が十歳の頃、母の実家で飼っていたゴールデンレトリバー。
    【レオタードの女】とある交差点にある銅像。

  • とても面白かったです!
    「僕が愛したすべての君へ」「君を愛したひとりの僕へ」と繋がっていて、他の並行世界の幸せになった栞が書かれており、暦とは会わないけれど、最後に暦と再開して「会ったことがあるような気がする」と二人が思っていてお互い相手が幸せなのが嬉しく感じているところが好きです!
    「君を愛したひとりの僕へ」は幸せになれなかった2人の話だけど、「僕が愛したすべての君へ」は暦が幸せになった世界、「僕が君の名前を呼ぶから」が栞が幸せになった世界、この2作は暦と栞は他人だけど、最後会話するのが個人的に好きです!
    「僕が愛したすべての君へ」「君を愛したひとりの僕へ」「僕が君の名前を呼ぶから」すべての物語が繋がっていて、「凄いなぁー!」と、感動しました!!

  • 僕愛、君愛のスピンオフが出たということで読んでみた。
    実に良かった。
    タイトルに込められた意味。歳を重ねても甘々なセリフが言える夫婦関係。なんて良いんだろう。
    そして過去作とリンクしてるシーンが来た時には『あぁ~』と掘り出される記憶。
    栞も幸せで満足な一冊。

  • 『君を愛したひとりの僕へ』のヒロイン・栞を主人公にした物語。公式にはスピンオフ作品とありますが、前二作の内容に密接に関連しており、本作を含めて”三部作”として完成したと言っても過言ではないと思いました。『君愛』の暦は『僕愛』の暦に、『君愛』の栞は本作の栞になり、それぞれ幸せを手にすることができた。『君愛』での暦の大願は成就されたのだ!そう信じています。三作目にしてついに幸せな栞の姿を見ることができて本当に良かった。

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著者プロフィール

1981年大分県生まれ。2012年、第18回電撃小説大賞選考委員奨励賞を受賞した『ミニッツ ~一分間の絶対時間~』(電撃文庫)でデビュー。初の一般文芸作品『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』(ともにハヤカワ文庫JA)を同時刊行して、大きなヒット作となる。ほかに『ラテラル ~水平思考推理の天使~』(電撃文庫)、『正解するマド』(ハヤカワ文庫JA)など、トリッキーなアイデアを武器とした作品を得意とする。

「2021年 『アイの歌声を聴かせて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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