バイオスフィア不動産 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 110
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150315399

作品紹介・あらすじ

全てが内部で自己完結するコロニー、バイオスフィア3。そのクレーム対応を描く連作。電撃小説大賞金賞作家による未来の住宅SF

感想・レビュー・書評

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  •  ミステリ仕立てのSF。バイオスフィアⅢ型建築とは、内部で資源とエネルギーの全てが完結し、そこ住む人に恒久的な生活と幸福を約束する、未来の住居。言い換えると、死ぬまで外に出なくてもすむ完全引きこもりを可能とする住宅である。元ネタはバイオスフィア2実験だろう。

     主人公であるアレイとユキオイはバイオスフィアⅢ型建築の管理を担う後香不動産でサービスコーディネーターとして働く社員である。まあユキオは正確に言うと備品(デバイス)扱いだ。彼は人間ではなく「機械」なのだ(ちょっと訳あり)。その姿は表紙カバーのイラストにあるとおりで、あたかも黒いマネキンにセーラー服を着せたよう。
     彼らは要するにクレーム対応係である。住人に満ち足りた生活と「幸福」を提供するはずのバイオスフィアⅢ型建築で、なぜかクレームが来る? 

     この時代、社会のあり方が根底から変わってきている。「社会」とは、そもそも政府とか企業とは一体どうなっているのか? 旧時代との比較で、触れられている部分もあるが、全体像はつかめない。
     そして人間のあり方、意識とかも変わってきている。果たしてユートピアとみるか、それともディストピアとみるか。ポストコロナの時代に読むべき作品だろう。

  • 「ポスト・ステイホームの極北を描いた新世代のエンタメSF」という大々的な触れ込みだが、内容はそれほど派手ではない作品だった。表向きには永久機関の様に全て建築物内で完結する住宅、住宅内の人々は特に不満もなく生活できる。数少ない不満が発生したとしても、問題解決人(サービスコーディネーター)の主人公2人が全て解決してくれる。心の失調はアンドロイドがサポートする。つまり、この未来社会は一種のデストピアでしょう。何人の人間が生き残っているのか、人口が増える要素があるのか、精神疾患の拡大を止める術は、等々の疑問を拭い去れない。何とか最後まで読み切ったけど、続編を読みたいと言う積極的な気持ちは湧かなかった。アイディアは悪くないのだから、あとはもっともっとエンタメ要素をつぎ込む必要がある。

    第23回電撃小説大賞《金賞》作家とのことだが、そもそも電撃小説大賞って初めて聞いた賞だった。KADOKAWA主催の新人文学賞とのこと。受賞者で知っているのは、上遠野浩平(第4回)、斜線堂有紀(第23回)の2名のみだった。まあ、単に私が無知故の話だが。

  • 家の中で全てが完結する家ができ、ほぼ全ての人類がそこで暮らすようになった世界でその家のクレーム対応を仕事とする1人少年とサイボーグの話。人間すらもバイオスフィアⅢは作ることができるため、家族やペットすらも再現され、人間は1人ずつ一つの家に住んでいる。全ての欲求は代替可能である、という言葉が印象的だった。

  • こんな家に住みたい!

  • 生存に必要なあらゆるものが生成され、住民の望む形にその内部を変化させる住宅が発明された未来が舞台のSF。
    バイオスフィアⅢ型建築という存在やサイボーグなどが出てくるものの、その技術的背景などが掘り下げられることは少ないので、そこに物足りなさを感じる人はいるかも知れない。

    すべてが自己完結する空間が実現してしまったが故に起きた他者との断絶や、社会の崩壊をバックグラウンドにしながらも、全く異なる様相を見せる個々の住宅がロードトリップのような感覚にさせる。
    それぞれの論理や壁を持ちながらも前に進んでいくアレイ・ユキオの存在が強く物語を牽引していた。

    ストーリーとしてはもっと広げられる余地があるし続きを読みたいな、と思いつつも、きれいにまとまった結末だった。

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著者プロフィール

第23回電撃小説大賞《金賞》受賞作『賭博師は祈らない』でデビュー。

「2022年 『明日の罪人と無人島の教室2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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