国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ文庫 NF 464)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504649

作品紹介・あらすじ

豊かな国と貧しい国の違いとは? 国家盛衰のメカニズムに迫る研究。解説/稲葉振一郎

感想・レビュー・書評

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  • amazon 2018.8.18 972円

  • なぜ世界には繁栄する国とそうでない国があるのか。繁栄が続かないのはなぜか。立場の逆転は何が原因か。
    本書では、それらは制度によるものだとして考察している。
    ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』が面白かった人には一読の価値がある内容かと思う。



    ラテンアメリカは現在も貧しい国が多く、それらはスペインの収奪的制度の影響によるとしている。その中でも先住民がほとんどおらず、鉱物資源の乏しいアルゼンチン、チリは他の大半の国よりうまくやってきた。一方でアステカ、マヤ、インカの各文明に領有されていた土地には金を持つ王がおり、スペイン人の支配が及んだ。
    また、アフリカの多くの地域では奴隷売買から相当な利益が得られ、その為アフリカの王やエリート層により奴隷の輸出が一層盛んになった。

    日本もかつては金銀が豊富に取れた。石見銀山は最盛期には世界の三分の一の銀を産出していたともされる。ほぼ同時期にスペインが支配したボリビアのポトシ銀山と共に二大銀山と呼ばれていた。
    またアフリカ諸国と同様、戦国時代にスペインとポルトガルの宣教師が布教にくると共に、それらの国の商船が日本人を奴隷として海外に売り飛ばしていたことがある。
    つまり当時の日本はアフリカやラテンアメリカの国々と非常に近い状況にあったといえる。これらの国々と日本の違いはどこだろうか。

    本書で取り上げられているコンゴを例にみると、
    コンゴの王が自分の利益のため積極的に奴隷貿易を行ったのに対し、日本では豊臣秀吉がキリスト教の布教と日本人の奴隷の売買を厳しく取り締まっている。
    またコンゴも日本も銃を買い入れたが、この使い道が両国では異なる。コンゴでは絶対的な権力をもつ王によって、奴隷を捕らえて輸出し、また反乱を抑えるために使われた。一方日本では戦国の国どうしの戦のために取り入れられた。一時は世界最大の銃保有国となり改良も急速に行われ、これがスペインやポルトガルの脅威ともなった。
    こうしてみると、日本植民地化の危機は幕末より先に戦国にあったともいえる。また、戦国時代という一見不安定で不利にみえる時代も、海外からの侵略を討ち払うのにうまくハマった側面があるかも知れない。
    スペインはラテンアメリカの支配において、中央集権的な強い政治権力を持たない先住民の抵抗に遭い、より支配しやすい地を求めて撤退している。
    仮に日本が中央集権のもとキリスト教を受容し、一部の権力者だけが利益を得られるような日本人奴隷の輸出や銀と武器の取引が定着していた場合、今日のアフリカやラテンアメリカのような収奪的な政治や経済のスパイラルにとらわれていた可能性は充分にある。


    また中国は急成長している国であるが、収奪的政治制度をとる国であり、かつてソ連も収奪的制度のもと冷戦時代に成長しそして崩壊したように、中国も同じ道筋を辿ることを危惧している。
    なかなか興味深い。

  • 包括的な政治制度が経済成長を産む。産業革命を産んだイギリスとフランスは何が違うのか、歴史的な背景含めて面白かった。下巻も楽しみ

  • 集団や組織が繁栄していく法則は、制度にある。
    それは本書が示している包括的制度である。
    包括的制度とは、中央集権的でありながらあらゆる連合によって政治が保たれているものである。包括的制度の逆にあたる、収奪的制度は、一党独裁である。また政治は1つの手段によって組織されている。
    それにより1部のエリートは利益を得るようになっている。こう考えると、今なぜ日本が不況に陥っているかがよくわかる。政治はほぼ一党独占状態にあり、税金によって国民から利益を巻き上げる仕組みになっている。日本が不況から出るためには、包括的制度に移行しなければない。

  • 感想
    世界史学習者が一度は抱く疑問。なぜ隆盛を極めた国が現在発展途上国として認識されているのか。発展の速度と大きさの間に逆相関があるのだろう。

  • Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty
    https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/112578.html

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50006412

    なぜ世界には豊かな国と貧しい国が生まれるのか――ノーベル経済学賞にもっとも近いと目される経済学者がこの人類史上最大の謎に挑み、大論争を巻き起こした新しい国家論。 (生命融合科学分野 大塚正人先生推薦)

  • 様々な国の歴史を通して国家はなぜ発展し繁栄するのか、もしくは衰退するのかの原因を歴史を通して克明に詳細に考察し描いている。いろいろな書籍の中で国の経済が発展する理由と政治との関連性などが詳細に克明に描かれていてなかなか面白い本です。

    どのような組織体系、国の成り立ちや在り方が繁栄へと導かれていくのか大変勉強になり事業経営者など組織のリーダーにとっては現実の複雑な社会の中で応用できるものと思う。

  • 開発目標10:人や国の不平等をなくそう
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50006412

  •  内容的には興味深いのだが、訳が直訳っぽくて読みづらい。下巻に行こうかどうか悩む

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著者プロフィール

ダロン・アセモグル
マサチューセッツ工科大学(MIT)エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念経済学教授
マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念教授。T・W・シュルツ賞、シャーウィン・ローゼン賞、ジョン・フォン・ノイマン賞、ジョン・ベイツ・クラーク賞、アーウィン・プレイン・ネンマーズ経済学賞などを受賞。専門は政治経済学、経済発展と成長、人的資本理論、成長理論、イノベーション、サーチ理論、ネットワーク経済学、ラーニングなど。主著に、『ニューヨーク・タイムズ』紙ベストセラーに選出された『国家はなぜ衰退するのか』(ジェイムズ・ロビンソンとの共著)などがある。

「2020年 『アセモグル/レイブソン/リスト 入門経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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