あなたに似た人〔新訳版〕 II 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 1-10)
- 早川書房 (2013年5月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150712600
感想・レビュー・書評
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作者であるロアルド・ダールは、「チャーリーとチョコレート工場」など児童文学の作家だと思っていた。
表紙にイラストの描かれたこの本を読み始めた時、シニカルな笑い(正直笑えないのだが)に驚いた。
確かに映画の「チャーリー・・・」は、子供じみてエキセントリックな感じのするオーナーのワンカさんが強烈に印象に残ってはいるけれど、小説自体もおもしろく、子ども達にずいぶん人気のようだ。
それと比較すると、辛口。
こずるい人や嫉妬深い人。儲け話に躍起になる人。
他人を疑うあまり、その感情に絡め取られ、自滅の道を突き進む人。
それらが乾いた調子で描かれている。
ざらついた後味が残る短編集。
読んでいるときから、眉をひそめてしまうような出来事があれこれ起こる。
訳の妙味というか、どこか外国の生活感が漂っていて、第三者の目線で読んでいけるのがありがたいとすら思う。
ドッグレースでひと稼ぎしようと企む男たちが仕組んだ悪巧みとその周りにいる抜け目のない男たちとの駆け引きとその顛末を描いた、第4話『クロードの犬』。日々の生活の中で出くわす悪意に気づいても、ふたをすることへのためらいのなさ。
植物と話す術を身につけたと信じる男が周りの人たちとの間に巻き起こす出来事を書いた、第1話『サウンドマシン』
今、ちょうど読んでいる梨木香歩さんの『家守奇譚』の善良な登場人物とはずいぶん造詣が違っている。
日本の風土や歴史など、思考の土台となっているものからすると、『家守』の方がなじみやすい。そう思うのは私だけではないと思うけど。
ちょっと困った人たちに対するストーリーは、落語のように、「おまえらほんとに困ったヤツだね。おれもその一人だけどさ」というのが、聴き手も含めて根底にあり、その困ったところを笑いながらも、滋味のある語りで全部まとめてOKを出してくれるから、じんわりしたり元気になったり。そういうどちらかというと、救いのあるオチを求めてしまうのかも。
一見「うわー、ヒドイ!」と思いながらも、いや待て、この毒がもう少し薄まったら、似たようなこと、あるんじゃない?。
私から見たあなたとばかり思って読んだが、『あなたに似た人』とは、あなたから見た私のことなのではないか?はたと気づいて、自分の中のブラックな一面の存在に、ドキッとした。 -
少し前に「Ⅰ」も読んでるので、こちらも。
「満たされた人生に最後の別れを」はわかりやすかったけど、最後がジワリ。嫌いじゃない。
他の2編も複雑すぎる内容。
「クロードの犬」は1回読むだけじゃわからない。
海外の短編は高難度だわ。 -
あなたに似た人Ⅱです。短編6つを収録。最初の3つは面白かった。どんなオチなんだ?という好奇心でワクワクしながらどんどんページをめくっていった。残りの4つは同じシリーズ的なものでびっくりするくらい面白くなかった笑 読み進めるスピードの遅いこと、遅いこと笑 まあ、好みもあります。
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香草をそのまま食べる感じ、かな?
パクチーとかルッコラとかバジル?
料理とあわせるのがいいんだけど、
はまるとそのままいけちゃうやつ笑
「満たされた人生に最後の別れを」は、原題が「Nunc dimittis」、シメオンのカンティクムですね。内容はとても世俗的なのにタイトルが終課の聖歌。ラストで流れてたらと思うと…苦いですね。
有名な「おとなしい凶器」(Iに収録)の原題、Lamb to the Slaughterも旧約聖書にあるみたいですし、何かしら寓意がありそうです。知ったら知ったでさらに苦くなりそうですが…やっぱり香草。 -
1に続きブラックな短編集。
前半3作品と最後のショートショートが面白く感じた -
作品紹介・あらすじ
植物の「声」を聞く機械を発明した男が耳にしたものは? 小説自動作製機は何を成し遂げるのか?教養ある男が企んだ甘美な復讐のお味は?……短篇の名手が、人生という道路に、時にぽっかりと口を開ける非日常という落とし穴を描いて見せる非情でブラックな短篇の数々。従来未収録だった短篇2作を新たに加えた新訳決定版 【収録作品】 サウンドマシン/満たされた人生に最後の別れを/偉大なる自動文章製造機/クロードの犬/ 〔特別収録〕ああ生命の妙なる神秘よ/廃墟にて
第1集を読んだ時の感想で「ダークで毒の強い作品は好きな方なのだけれど、この人の毒は僕の体には合わなかった。第2集も手元にあるので、とりあえずそちらも読んでみようかと思う。もしかしたらそちらの毒は体に合うかも」と書いたのだけれど、結局この第2集も体には合わなかった。僕の好きな作家ではない。ただ最後の「廃墟にて」だけは別。たった2頁だけの短い作品なのだけれど、悲惨な情景がくっきりと瞼に浮かんでくるような、ダークなディストピア作品だった。願わくば現実にならないことを祈って。 -
「あなたに似た人I」に引き続きブラックな短編集。
自分の中にもあるよなぁ〜と、自分の小ささを確認させられる 笑 -
星新一的な作品かなと思って手に取ったが、そんなことはなかった。イギリスらしいブラックコメディだった。
イギリスの片田舎の風景が目に浮かんで良い。
女に復讐する回が一番好き。
人間のどうしようもなさ。 -
人間の言語を介さないコミュニケーションやプレッシャーの掛け合いのままならなさと抗い難い魅力、思い込みと自意識によって失敗する人間が表現されている。
登場人物たちの多くは常識人で突然、極限状態に放り込まれるが、彼らの思考や動揺はタイトル通り、私たちに似ているのが面白い。
「極限状態でその人の本性が現れる」というが、ダールは人間の本性というものが、案外似通っているということに気がついていたのかもしれない。
私の中の、ワタシなのかも?
私の中の、ワタシなのかも?
>私の中の、ワタシなのかも?
確かに!
私は、個人に対して基本、性善説だと思っているんです。
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>私の中の、ワタシなのかも?
確かに!
私は、個人に対して基本、性善説だと思っているんです。
実は、そこが弱いところで、『清濁を認める懐の深さ』がなかなか持てないんです。
自分のブラックな面を認められないせいなのかも・・・。