二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

  • 早川書房
3.22
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感想 : 163
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  • Amazon.co.jp ・本 (562ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151795015

感想・レビュー・書評

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  • なんか色々な賞を取ったというので読んでみたのですが……。
    まあクライマックスまでに何度もどんでん返しを仕掛けてくるところはいいんですけど、さほど驚きがあったわけでもなく、「へーそうだったんだ」みたいな感想でした。
     ラストの一文になにか意味があるのかと思って調べてみたけど、どうやらそんなこともない……?

    作中作は個人的にはわりと好きで、それが主人公に密かにファンが多い理由にもなっていたので個人的には高評価。

    なんとなくサイコパスの例の芸術を思い浮かべました。こっちのほうが猟奇的ですけど。

  •  なぜこの小説がこれほどの栄誉に輝いているのかを考えることの方に集中させられてしまった、というのが正直なところだ。ある権威の高みにまで到達する作品の品位のようなものが欠けているように思えたのは、欧米の文化というものに対するぼくの尺度が勝手に高貴なる側に傾いていたからなのかもしれない。世にスラップスティックなるものが存在し、ブラックユーモアなるものがヴェトナム戦争の時代に世界中を席巻したことを考えれば、何もかしこまった作品ばかりがミステリの王道をゆくわけではないと承知していながら、自分の中にある頑固な硬さが露見させられてしまった思いのあるいささか渋い味覚のようなものが、この本一冊(もしくはコイツに対するの世間の評価)によって少なからず生じたものである。

     さほど、最初の感触としてこの本は軽く見えた。軽薄で安易で饒舌でトリッキーで(この部分はまあこの作家のおそらく一番の魅力なのだが)、けれん味たっぷりで、日本の読書界でウケる要素がたっぷりまぶされ、練り込まれているものらしいこの一冊が。

     この本がミステリだという仮定に基づかなければ、ぼくはもしかしたらこの小説がミステリだったかどうかという自問に対し答えを持ち得なかったかもしれない。もちろんハヤカワ・ポケミスでお目見えしているにせよ、読んで、まずは読んで、100ページ読んだ時点でも何らかの事件に遭遇することなく、主人公の独白に、主人公の小説感に、主人公の表現のけれんに付き合わされる小説なんである。いささかオタッキーに過ぎ、トリビアに過ぎ、少し引きたくなるような主人公を見ていると、どのジャンルの世界に自分が足を踏み込んでしまったのかが定かではなくなる。確実に足元がふらつくのである。

     そうした多くの贅肉に囲まれた中で、脂肪を削ぎ落とすように小説のなかの時間が過ぎ行き、事件の骨組みが緩やかにではあるが、次第に明らかに見えてくる。やっと視野に入ってくるというか。それほどに密林のような濃い藪を掻き分けないと、開いた風景に巡り合うことができないおぞましさ、がこの小説には確実にある。

     さてそういう忍耐と努力と脇道に入って袋小路であることを認識し、改めて本筋に戻るという恐るべき遠回りな作業の末に、ミステリの骨組みが登場し、そこで改めてこの主人公と読者とを騙していた獄中の依頼人(死刑囚)の狙いがわかる。でも巻の途中でこの物語がなぜ終わってしまうのだろうか? 真実は明かされた。謎は解けた。なのに、指をはさんだその場所は巻末ではなく本の真ん中を過ぎたあたりなのだ。この先に何が残されているのか、またあの濃密な皮下脂肪的贅肉みたいなエピソードの藪こぎという苦行が読者に課せられているのだろうか?

     どこよりも早く日本で映画化されてしまう海外ミステリというのも実に珍しいのだが、その広告が載せられた文庫版コシマキには、「観るもの全てを欺く驚愕のラスト!!」とある。巻半ばにして結末を知った気分であるぼくはこれに期待した。なるほどさらに紛れ込んだ真実の切れ端のようなものがあった。しかし、これらを映画がどう表現してゆくのかわからない。女子高生でありマネージャーであるクレアと、被害者の双子の妹でストリッパーのダニエラとのトリオという構成も人を食っている。

     優れた作品というのは、人を食っている、という。そのくらいあざとくないと芸術としては駄目なのかもしれない。だからと言ってこの小説に対するぼくの思いが整理できたわけでもない。ミステリとしての謎解き部分は面白いかもしれないが、とりわけすごいというほどでもなかったのにはがっかりした。ただ主人公が小説を職業として得意分野とし、娯楽小説のどのジャンルにも手を出さねば食べてゆけない環境その他、現実の作家像のリアルな面がおこがましくも覗いているというのなら、そのふてぶてしさに音を立てず小さく喝采を送ってあげるのはやむなき、とせざるを得ないような気がしたのは、確かな事実であるとだけ記してペンを置こう。

  • 「このミステリがすごい!」などの日本の各社ミステリ賞の1位を受賞したデイヴィッド・ゴードンの処女作。テレビドラマ「相棒」シリーズを手掛けた経験のある猪崎宣昭が映画化したことで話題になった。

    フリーランス作家のハリー・ブロックは、作品のジャンルごとに複数のペンネームを使い分けるゴーストライター。それぞれのシリーズに固定ファンはいるものの、売れない作家としての日々を送っていた。ある日彼のもとに、収監中の死刑囚ダリアン・クレイから告白本執筆依頼の手紙が届く。売れるかもしれないという期待と死刑囚に会うという不安の中、ハリーはダリアンと対面する。しかし告白本執筆の条件としてダリアンが出した条件によって、ハリーは事件に巻き込まれていく…という話。

    数々のミステリ賞を総なめしているだけあって、読みやすい。短い文章でテンポよく進んでいく物語と、後半から終盤にかけての展開の早さとどんでん返しには引き込まれていく印象を受けた。しかし受賞作として評価される作品なのかは、疑問に感じた。

    理由は大きく分けて2点。1点目は主人公にあまり魅力が感じられなかったこと。物語は確かにテンポよく進んでいくが、前半は主人公の「二流さ」をアピールすることにページが割かれている。元恋人に未練たらたら、女子高生にいいように使われる、作中に出てくるハリーの作品…等。後半は事件解決に奔走するも、前半の「作品も生活も二流の中年作家」としてのインパクトが拭いきれず。他の登場人物が普通なため(むしろどちらかというとタフな人物が多い)、一際主人公の駄目さが目立ち、「謎を解く探偵」としての魅力があまり感じられなかった。

    2点目はアメリカらしさが前面に押し出されすぎていること。猟奇的殺人者やサド・マゾ、色情狂、犯罪者に傾倒する一般人等…日本の作品ではあまり目に出来ない世界が描かれている。アメリカの作家が書いたため当然ではあり、アメリカの現実としてこのような世界があることも事実ではあると思う。アメリカで受けがいいのは分かるが、日本で数々の賞を受賞し、多くの読者に読まれる作品として、この極端な描写はどうなのか…という印象を受けた。

    映画化されているようだが、個人的には本作をどのように日本人向けにアレンジしたのかが気になる。そんな作品。

  • おもしろかった。作者なりの小説に対する考え方も書かれていて参考になった。

  • 後半ようやくテンポが上がりおもしろくなってくるが、それまでは少しだらだらしすぎかなと。評価が高くて期待も高かった分、ちょっとがっかりした。

  • ハリー・ブロックは売れない小説家。名義を換えてポルノやヴァンパイア小説を書いて、自分の名前で本を出したことがない。暮らしに困り、女子高生の家庭教師を副業にし、その生徒クレアがビジネスパートナー。
     ある日、手紙が転送されてくる。それは刑務所に死刑囚として服役している連続殺人犯、ダリアン・クレイからの面会要請だった。ダリアンは彼の本の執筆をハリーに条件付きで許可すると持ちかける。その条件とはダリアンの信奉者の女性とダリアン自身が出てくるポルノ小説を書くこと。紆余曲折の上引きうけたハリーは、選ばれた3人の女性の元に取材に向かう。

     これは面白いです! これがデビュー作だなんて。
     実は先に上川隆也主演の映画を観ていたのですが、本を読んでさらに楽しめました。ミステリー何だけれど、何となく犯人はよめてしまったかな。ちょっと、どうしてかな?と思うところもなきにしもあらずだけれど。
     でもぐっとくる。ハリーの人生、ダリアンの人生が交錯し、またこの事件に関わってしまった女性たちの行く先など、決して読後感が良いとは言えないけれど(結構寂しい)
     これは歪んだ愛の話なのかな。ヴァンパイアの話もセクサロイドの話もやはり常ではない愛の形なのかな……
     
     愛の前に人は愚かだけれど、どこかに希望が有り。ダリアンですら決定的な悪
    人だとも思えない。

     作者の次回作はハリーのお話ではないようだけれども、これだけの実力派の作家さんならきっと面白いハズ!と思って待っています。ほんといい!!
     
     

  • うーん、読みにくかった。
    訳が悪いのか??
    ページにびっしりと書かれているのは、主人公の考えだったり、風景を細かに表していたり、と色々なんだけど、まぁ何にしても冗長。
    読んでてだるくなりました。
    結構斜め読みで進めてしまった・・・。

    帯につられて買ったんだけど、中身も期待はずれ。
    まぁ最後の方は畳みかけるように話が二転三転するけど、
    「必ず騙される!」の推し方されてるとこれじゃ弱いわ。
    普通のミステリーとして読みたかった。

    最後の思わせぶりな記述が、いくら考えても意味わかんないし。

  • 主人公が愛すべきダメオトコで、途中に出てくる主人公が書いたジャンル小説も笑えて、楽しく読めた。

  • 海外作品は久々過ぎてちょっと読みづらかったけどそれなりに楽しめた。グロい感じはあったけどまぁ、楽しかったとおもう。映画を観るために読んだけど結局観にいけなかったな。

  • 面白かった。
    「ミステリガール」より、こっちの方が好きかな。

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