厳冬之棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMソ 5-1)

  • 早川書房
3.80
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本棚登録 : 236
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151857515

作品紹介・あらすじ

上海郊外の湖畔に建つ陸家の館で殺人事件が起こる。現場は大雨で水没した地下室で完全な密室だった! 天才漫画家探偵・安縝(あんしん)登場

感想・レビュー・書評

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  • 湖畔に建つ洋館で密室殺人… 華文ミステリ界「密室の王」が書記す、ど真ん中の本格ミステリ #厳冬之棺

    ■あらすじ
    中国上海の郊外、湖畔のほとりに建つ洋館には、陸家の一家が住んでいた。ある大雨が続いた翌日、半地下のため水没していた小屋の中から、主人が死体となって発見される。警察が捜査するも犯人捜しは難航し、さらなる事件が発生してしまい…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    中国の人気ミステリー作家先生のデビュー作とのことで、いやー力作ですね。作品を見れば、明らかに本格ミステリーをこよなく愛しているのがわかります。人に読んで欲しいというより、むしろ自分が楽しんで書いてるのが伝わってきますね。

    また日本の文化にも影響を受けているのも嬉しくなります。中国とは政治体制も文化も経済も生活環境も、我が国とは違うところも多いですが、本格ミステリーを愛する共通点があることは、とても喜ばしいことですね。

    本作、まず驚かされるのは、ジャンル本格ミステリーとして、しっかり形を成している点。館、密室殺人、見立て殺人、家督争い、探偵役、衝撃的な犯人、信じられない動機、バラエティに富んだキャラクターたち。これらが全て揃っていて、しかもバランスもとれている。読者を惹きつける構成も上手で、もう序盤から読むのをやめさせてくれないんです。

    なによりメインの密室トリックの問題提示と、その解法が素敵でいいですね。これぞ本格ミステリーです。発想の角度としては一般的かもしれませんが、読んでると素直に作られた密室トリックが愛おしてしょうがないんですよ。

    またキャラクターもポップで愛着があってイイ!本格ミステリーでは登場人物が古臭くなりがちですが、しっかり魅力付けができてる。職業や文化や価値観など、今風にしっかりアレンジができて、親しみをもって作品に没頭できました。

    本格ミステリーを素直に楽しめる良作だと思います、続編も期待しちゃう!

    ■ぜっさん推しポイント
    本作の魅力は、絶妙な古臭さと陰湿さの中に、軽快さが光っているところ。動機なんて鬼のようにエグイですし、最序盤の導入とラストの世界観の違いは、なかなか他の作品では見られない。作家先生のミステリーへの情熱を感じてほしい作品です。

  • 孫沁文の長編デビュー作。日本には同人誌に一度短編の掲載があったのみ。漫画家探偵の安縝シリーズ第一弾。

    湖一帯の土地を持つ名家、陸家で通路が水没した地下から他殺体が発見される。地下室と死体は全く濡れておらず、死亡推定時刻より前に、地下までの道は水没したことがわかっている。振り回される警察を嘲笑うかのように、第二の密室殺人が発生し。。。

    中国ミステリは久しく読んでいなかったが、雰囲気、トリック共に良かった。名家と古い一族を舞台とした密室殺人、横溝正史+ディクスン・カー的な。密室の実現性が低いというか、所謂、バカミスに紙一重なトリックもあるが、トリックだけに終わらず、軽いどんでん返しも用意されている。

    サラッと読める厚さだが、非常に面白く、翻訳が続いてほしいシリーズの一つになった。

    • 家計法廷さん
      目次の後に家系図が示されてて、そこにも横溝感が笑
      氏名が非常に覚えづらいですが、結構頻繁にルビを振ってくれる親切設計でした。
      目次の後に家系図が示されてて、そこにも横溝感が笑
      氏名が非常に覚えづらいですが、結構頻繁にルビを振ってくれる親切設計でした。
      2023/11/04
  • 華文ミステリ界の密室の王降臨!!

    最後まで心踊り続けた傑作!新本格を読んだ興奮がまたこの時代に味わえるとは!世界はせまくて、ひろい!!
    続編を期待してます!死のクロッキー画家事件が気になる〜!

    ぜひ〜

  •  「中国の密室の王」と呼ばれる作者の初読み作品だったが、最初は「華文ミステリーって読みにくいイメージがあるんだよなぁ。」と思っていたが全くそんなことはなく、読みやすい上に三つの連続殺人、それも水密室や首切り死体といったカーを彷彿とさせる本格ミステリーの面白さがこれでもかというくらい詰まっていて最後まで面白く読めた。また探偵の職業が漫画家(非常勤似顔絵師)であったりヒロインが声優だったりといったところが新鮮だったし、『織田裕二』『踊る大捜査線』『涼宮ハルヒ』『ウルトラマン』といった日本ほエンタメの記述が出てきて「作者は日本のエンタメが好きなのかな?」というところも読みやすい要因の一つだった。

  • 密室ものでストーリーも密室トリックも素晴らしくてあっと言う間に読んだ。アンジェンとジャンクゥとのコンビでの続編が読めるのか、ラスト一文が気ががり。伏線そのものはかつて読んだミステリー作品で使われた様なデジャブ感が強くて☆3つ。

  • 初めての華文ミステリーでしたが大満足でした!

    密室トリックのオンパレードでしたが、バカミスギリギリな設定でしたが・・・。

    翻訳が優れていたのですんなり読めました!
    是非とも初めて華文ミステリー読み方こそ読んで頂きたいです!

  • 自分的初中華ミステリ。
    館モノとか一族の揉め事系が割とすきなので面白かった。ひとつのトリックが結構重くてそれが複数組み込まれてるから重厚な作品になっていると思う。伏線がドバーッと張られているのも最初は気づかないから面白い。最後の一文が自分的には読み返しても全く理解できなかったので続編で明かされるということなのか??続編ある模様なので次作が楽しみ。

  • 舞台は現代の上海で、探偵役は売れっ子漫画家。対象的に密室殺人事件が起こったのは、人里離れた洋館。何か訳ありの陸一族は、まるで横溝正史か、サスペンスドラマの世界のようで、読んでいてどこか懐かしく感じた。もともと、本格ミステリと言われる手のこんだ殺人トリックは好みではないので評価は低めだけど、意外と日本文化が浸透しているんだなあ、と上海の今を知ることができて面白かった。作者は織田裕二が好きなのか、踊る捜査線などの単語が見られたのも楽しい。

  • 華文ミステリ界で「密室の王」と呼ばれる作家さんの長編デビュー作とか。稚気溢れるというか、何のてらいもない感じで、ミステリファンが好きそうなネタ(人里離れた不気味な館に住む、おぞましき伝承に彩られた、奇矯な富豪一族を襲う、呪いとしか思えない連続不可能殺人! に挑む天才探偵)がてんこ盛りである。メインはやっぱり三つの見立て密室殺人。そのどれもが長編を一本支えられそうな重量級のトリックで、作者さんの力の入れようが分かる。トリックの実現可能性とか、そもそもの密室にしなければならない必然性が弱いとか、いろいろ突っ込みどころはありますが、読んでるとまあいいかって気がしてくる。こういう作に対してしかめっ面で、ケチ付けて回るようなミステリファンにはなりたくねーなって感じでしょうか。

  • 湖のほとりに建つ陸家の半地下室で、当主陸仁(ルー・レン)の遺体が発見された。地下室の入り口は大雨により数日間水没していたが、内部の床は乾いており、完全な「水密室」状態だった。そして殺害現場には、なぜか嬰児のへその緒が。梁良(リャン・リャン)刑事は捜査を開始するが、陸家ではこれ以降も新たな密室殺人が起こる。どうやらこれには陸家にまつわる謎が関連しているようで…。
    怒涛の連続密室殺人、そこに現れるの天才漫画家探偵の安縝(アン・ジェン)。「密室の王」と異名をとる著者の初めての長編作品。

    初めて華文ミステリーに手を出したが、意外と読みやすかった。もう少し名前で苦戦するかと思っていた。オカルトめいた見立て連続殺人に加えて、探偵が有名漫画家というエンタメ感てんこ盛りなミステリ作品。密室のトリックは物理的にはできなくもないか?と思うものだったので、少々肩透かしを食らいました。現実的に再現できそうなのは二つ目の密室殺人。ドミノ倒しの原理は「この方法があったか!」と納得した。犯人当てはメイド2人が犯人だと思ってました。つまり、すっかり炎色反応のことも忘れて、真犯人ともども安縝先生に騙されたと言うこと。だけど、何だかなぁ。あまりこの人犯人!って言われても釈然としない感じ。伏線は色々撒いて回収しているのだが何だろう撒き方と拾い方が雑なような…(ブルーシート云々等)。このままメイド2人が犯人って言われた方が納得できたし、「犯人当てれたルンルン!」で終われたのに…(所詮負け犬の遠吠えです、忘れてください)。

    女児が生まれない家系、嬰児の呪い、癖の強い住人。このような女児を意図的に排除する風潮は、前時代的だが「実は日本でもあり得そう」なシチュエーションだなと思う。その他の海外ミステリーでは「呪い」と組み合わされた作品を見かけないので、東アジア圏特有なのかしらん。

    ただ、続編への導入や残された謎もあるので、シリーズものとしてはとても気になる終わり方だった。「死のクロッキー画家」が安縝先生の身近な人物だったのか。もし続編が出るのであれば、読みたいなぁと思う作品。期待を込めて☆3。

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